帰郷
文字通り黒い顔をしたキノシタさんと出会った次の日。
なし崩し的に決まってしまった約束だが、一晩経って冷静になるとかなり奇妙なことに巻き込まれているように感じた。
私の隣で横になっていたキノシタさんを見る。
眠くはなると言っていたけど、本当に寝ているのだろうか。幽霊でも夢は見るのだろうか。真っ黒な顔を見つめていると、色々な疑問が浮かぶ。
「私の顔に何か付いてる?」
「うわっ!」
もう起きていたのか。びっくりした。
体を起こしながらキノシタさんが喋る。
「フルカワさんと一緒に家に行くと思うとあんまりよく眠れなくってさ……。」
「遠足前の小学生じゃないんだから……。」
のんきな会話を続けながら、私たちは出かける準備をした。
ここから二日間は本当に休日だったので、電車を乗り継いでのんびりとキノシタさんの実家まで向かうことにした。
電車の中でもキノシタさんとしゃべっていると不審者がられるので、行く道での会話は少なかった。
電車を降り、キノシタさんに案内されるまま歩いていく。
当たり前と言えば当たり前だが、母校の近くの道を通っていくので、街並みを見ていると私も懐かしい気分を味わえた。
「ここの角曲がったところだね。」
思ったよりも駅に近いところにキノシタさんの家はあった。
私の家も駅から同じ方向だったので、私たちの家が意外と近所同士であったことに今更気付く。
表札を見る。
「間違いないよね?」
「間違いない。」
「それじゃあ……。」
深く息を吸って吐く。
インターホンの音が響いた。
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