遺影

 とりあえず描くことは決まったが、肝心のキノシタさんの顔が見えない。


「まずは、写真とかの資料を何か集めないとね。」

「さっきの卒業アルバムは?私は途中で死んだから写真載ってないのかな?」

「少なくともクラスメイトの写真にはいなかったね。他の写真もハッキリ写ってるのは無いし、資料としてはちょっと……。」


 母校の方針がどうだったのかまでは分からないが、在学途中で亡くなったとなるとあまり大々的に掲載もしづらいのだろうとは思う。


「あ、じゃあ遺影は?仏壇に飾ってあった写真でもいいし。」

「そうだね……いや、でもどうやって借りるべきかな……。そもそも借りていいものなのか……?」


 流石に遺影を借りるというのは聞いたことがない。今時ならデータとして写真は残っているはずだが、それにしても遺影だし下手なことをすれば怒られるのは目に見えている。しかし、


「そのまま伝えたらどう?『絵を描きたいから写真ください』って。」

「うーん……駄目で元々か……。」


 正直に伝える以外の方法も思い浮かぶわけではなかった。ここは素直に言うしかないだろうと覚悟を決める。


「じゃあ、キノシタさん。キノシタさんの実家まで案内してくれる?」

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