第2話

 美智留がデイサービスに就職したのは、半年前だ。

 高校卒業後は、ショップ店員だったのだが、店舗が入っているショッピングモールが閉鎖されるにあたり、店舗も営業を終了した。

 正社員ではなくパートタイマーだった美智留は、そのタイミングで退職することになった。

 デイサービスに採用してもらえたのは、偶然だった。

 介護は人手不足だと聞いていたが、本当に人手が足りないようだった。

 おじいちゃんおばあちゃんの相手はほとんど初めてに近いけれど、美智留は嫌ではなかった。

 今日は、デイサービスのランチレクの日。ご利用者様と料理をする。



「美智留ちゃん、駄目よ。お味噌を入れたら、火を止めなくちゃ」

 簡易キッチンのIHで味噌汁をつくっていると、小柄なご利用者様がひょっこり覗き込んできた。

「お味噌はね、煮詰まるとおいしくなくなるの」

「でも、溶け残りが出ちゃうんじゃないですか?」

 美智留が訊ねると、ご利用者様は首を横に振る。

「お玉の中で、お箸でまぜて溶かせば、大丈夫なの」

 そう言われて、美智留はすぐにIHをオフにした。

 ランチレクのメニューは、和風ハンバ-グ、ほうれん草のおひたし、フル-ツ、味噌汁、ご飯。

 ご利用者様は、自分達がこねたハンバ-グを「おいしい」と食べていた。

 味噌汁のことは何も言われなかったから、まずくはなかったようだ。

 ショップ店員だった頃は、好きな服や雑貨に囲まれて、モチベーションが上がった。

 今の介護職は、全然違う。介護の良いところは、じかにお礼を言ってもらえて、反応を直接見ることができる。

 つらいこともあるけれど、この仕事を続けたい。今夜、夫にまた話そうと美智留は思った。

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