第179話
≪・・・と、有力馬の大体の状況でしたが≫
≪今年のジャパンカップはまあ、お祭りですからね。凱旋門賞馬こそ来なかったが、それと同格まであるような馬が3頭も来てくれたんですよ≫
関東でおなじみの解説は禅定神成である。競馬の新神様と呼ばれる予想家で、もう10年以上も前だが番組の企画で東京競馬場のみの1日9レース連続的中、合計1000万円を稼いだ伝説がある。なお、その放送で税務署のマークが厳しくなり、所得税の支払いが大変になったらしい。
≪海外馬の耳寄り情報は何かありますか?≫
≪海外馬はねえ、本当に3強です≫
アスタロト、プリンスオブシリア、カイザープロイセンの海外馬3頭の人気は、と言うより上位6頭まで、1ケタ台のオッズ。1番人気アスタロトと2番人気の日本馬リキュールはそれぞれ2倍台と5倍台で推移し、そこに一応の線引きがある。
≪そう見ると、アスタロトなんですか?やはり?≫
≪そうなんです。海外の陣営に聞くと、どこも彼らの1強と見られているんで、馬券的にうま味は無いかなあと・・・≫
ヴァルケ・ローランも、ユングフラウ・ドーベンも万全ならアスタロト騎乗のジャンヌ・ルシェリットには勝てないと認めている。2番人気リキュールの武豊莉里子ら日本勢も同様だ。ジャンヌが調整を間違えるとは考えていない。
≪これをかき乱す勢力はどうでしょう?≫
≪そうですねえ・・・まず1番手。武豊は武豊でも尊騎手でしょうか?≫
≪日本競馬界のレジェンドですか≫
≪ええ、彼の馬は今・・・8番人気、オッズ21倍ですか?かなり高騰してますねえ。並のGⅠレースならまず1番人気には推される馬なのですが≫
件の馬は去年のオークス馬・・・つまり、牝馬なのだが、同年にGⅠエリザベス女王杯も勝った馬だ。クイーンイザベルと呼ばれている。
≪どのあたりが良い馬なんですか?≫
≪一瞬に賭けるタイプの馬ですねえ。しかし、それが切れすぎるほどの馬です。使いどころは難しいけど、ハマればアスタロトを完封するでしょうねえ≫
≪そんなに、ですか!≫
≪あともう1頭は、去年のダービー馬ですね≫
クゥエルは今年初め、マイルなども試されていたが秋からは中距離に戻ってきていた。鞍上にダービー時の主戦・佐藤慶太郎を確保し、復権を目論む。
≪佐藤騎手は遠征先のフランスでかなり活躍しています。クラシックの一角を取ったし、凱旋門賞でも3着。日本でももう1個、大きいのを取ってもおかしくない≫
≪そうなんですねえ・・・あ、今年はインドの騎手がいるんですよね?≫
シヴァンシカ・セスは変わり種ということで一目置かれていたが、あやとりをマスターし挨拶程度なら日本語を使うなど、気さくさが報道陣に受けていた。
≪マハトマはね・・・力は及ばないだろうけど、血統が面白いですよ。サラブレッド系種ですからね!≫
五代血統表の中はサラブレッドの血を引く馬だけで埋められるが、少し遠い先祖にはばん馬までいる。ある程度の世代内で完全にサラブレッドの血で統一されていないため、サラブレッド系種と呼ばれる。
≪なんにせよ、今年のジャパンカップは多士済々です≫
≪いよいよ、本馬場入場です!≫
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