第156話
まさかの闖入者を3人迎え、宴はたけなわとなる。
『私だけ、浮いているわ』
『そんな!お姉さまはいつまでも若々しくて・・・!』
ユングフラウ・ドーベンと集まっていた同期たちでは5,6歳以上の年の差がある。小学校6年分の学齢違いがあると、話もかみ合いづらくはないだろうか?
『やっぱり、若い子の祝勝会なんだもの。私は場違いだわ・・・』
『お姉さま!まきなさん、なぜ・・・』
下の世代の若さを目の当たりにし、突然、意気消沈し始めたユングフラウをジャンヌ・ルシェリットが励まし始める。もしかしたら、ユングフラウを意気消沈させ、ジャパンカップや阪神ジュベナイルフィリーズでの活躍を阻止する魂胆では?と疑い始めている。そんな2人に、霧生かなめが近づいてきた。
「・・・ユングフラウさん、どうしたの?」
「あなた、ですか。まきなサンが、あなたのために仕組んだ、悪魔の手に、苦しんでいるのです」
「魔の手、ねえ。あのふにゃふにゃがそんなこと考えそうに見える?」
「でも!」
「ま、わかるわ。あたしもここ2年はあの子のこと、疑ってかかってたし」
「ム!」
「どうせ、
そう言われて、ドバイで戦ったまきなの様子を思い浮かべる。
「・・・ええ」
「あの子は自分のお節介で人様に迷惑かけようとするような頭の構造してないわ。まあ、お人好し過ぎて予期せぬところでやってる場合もあるけど」
「じゃあ、まきなサンは・・・」
「まあ、年の離れた、しかも外人さんを連れて来たのはちょっとね・・・でもね、純粋にあたしがファンだったから、好意で連れて来たんだよ。ユングフラウさんもジャンヌちゃんも」
「ファン、ですか」
「うん、L'Arc、だっけ?凱旋門賞はすごかったよね!」
「は、はい・・・」
つい先月、ジャンヌは凱旋門賞を自厩舎のウェンリードで制した。そのウェンリードは12月の国際GⅠ香港ヴァースへの転戦が発表され、ジャパンカップ出走馬と共に日本で調整を始めている。そのパートナーはドバイミーティングからポーの小室厩舎と提携を始めたアメリカのキング厩舎の馬で、米GⅠブリーダーズカップ・ターフをスキップしてまで送り込む6歳牡馬アスタロトだ。母国の大一番を無視してまで極東に求める勝利、日本における血統価値の上昇に向ける思いは非常に強い。8月までにヨーロッパでジャンヌを主戦にGⅠを2勝。休養を経て、本年最終目標としたジャパンカップに挑む。
「すごいなあ・・・」
若干18歳が自分で育てた馬と共にバッタバッタと強敵をなぎ倒していく力強さに、かなめは素直に憧れている。ジャンヌにもやっとその思いが届いたようで、少しづつ、照れ始めた。
「すごく、ないデス・・・」
『あら?自他共に認めた好敵手に私が慰められる展開はどこへ?』
やっと我に返ったユングフラウ。その好敵手と妹分の仲睦まじい様子に、嬉しいやらさみしいやら、複雑な気持ちになるのだった。
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