第82話
≪残り50メートル!シャーピングが差し切るか!?ナッツナッツココナッツ、苦しいか!≫
とはいえ、そんなこともカルロスは織り込み済みだ。押し込んでいく手を止めようとはしない。後、30メートルで勝利なのだから。
そして、ナッツナッツココナッツがハナ差残したところがゴール板だった。ほかの馬には届かない、1800メートルぴったりを逃げ切るためのペース。カルロスのレースメイクである。しかし、
『ヘイ、ジョン。ソノウマ、ツヨカッタ』
『負けてりゃ世話ないけどな。今日は騎手の差だったな』
『ウン、ウマハチカラ、カワラナイ』
『ミス御蔵に顔向けできないなあ!』
『エ?』
その馬、御蔵の馬なの?と聞こうとする前に、ジョンは離れていった。一人残されるのは、疑問符を抱えたカルロスである。
『あ、あの!』
『ハイ?』
女性の声だ。まきなかな?と思って振り返ったカルロスの目の前には、フランス人少女が立っていた。5着敗退したジャンヌだ。
『す、すごい騎乗でした!どうやっても差せなくて・・・』
『キミ、キシュナノ?』
『ハイ!ポー・小室厩舎の見習い騎手、ジャンヌ・ルシェリットと申します!』
『ミナライ、カ・・・ナツカシイナ』
『?』
首をかしげるジャンヌに、カルロスが笑いかける。
『ボクモ、ムカシ、ミナライキシュダッタ』
ぱあっ、と顔が明るくなるジャンヌである。
『ガンバレ、キミハモット、ツヨクナレル』
ドバイシーマクラシックでも、カルロスが活躍した。リキュールで対抗したのは、日本が誇る女王・武豊莉里子であった。しかし、相手が凱旋門賞と並ぶ芝の最高峰、アメリカのブリーダーズカップ・ターフを勝ったジェネラル・リーとあれば、これに勝てるものは限られる。
カルロスは後方の10番手からレースを進めると、直線で8頭余りをごぼう抜きし、さらに直線で先頭に出たリキュールの莉里子に迫った。迫られた、と莉里子が気付いた時には、1馬身前に出られて、その時がゴール板だったのである。
≪ここもカルロスだ!カルロス・フェルナンデス!先ほどのドバイターフに続いて、GⅠ連勝!≫
この勝利で、ドバイワールドカップにおいて、鞍上が負傷交代となったインド馬のマハトマへの乗鞍を確保したカルロスであった。
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