第57話
ジャンヌ・ルシェリットがベイカーランを内ラチもスレスレのルートに突っ込ませていた。彼女は、4カーブから最短ルートを通って直線に突入、内を進む馬が散っていくのを尻目に、ラチ(柵)を頼って前を強襲してきたのだ。
『ハッハー!来たな、La Pucelle!』
『なんとでも呼びなさい!行きます!』
「ジャンヌちゃん!?内から突っ込んできた!?」
≪ローラン、武豊とジャンヌを引き連れてまだ余裕がある!≫
「俺が、いるぞ!」
「慶太郎、サン!?」
「佐藤くんまで・・・もう!」
ジャミトン、ベイカーラン、リキュール、クゥエル。4頭が馬体を併せようとした時がゴールだった。まず、4着クゥエルが発表された。佐藤は悔しさのあまり、頭を抱える。5着はスノーベアだった。
『どっちが勝ったと思いますか、ミスター?』
『どっちが、かい?』
『ええ』
『え、私は入れてくれないの!?』
抗議する莉里子。自分だって勝った感触はあるぞ、と訴える。
『リリコサンの馬は、確かに良かったです。けど・・・』
『ちょっと、足りなかったよな』
果たして、3着の審議が発表された。リキュールだ。
「そんなあ!?」
1,2着の審議は20分の長きにわたった。各陣営が人馬を出迎えて労ってもなお、時間があった。
「残念でしたけど、リキュール頑張りましたね!」
とは、リキュール生産者のまきなの言葉だ。あんな乱戦の中、よく前方にいて3着内に残ったものだ。
「おまはん、ワイがおらん以上は勝たんかいな!」
リキュールに一切関係ない騎手の伯父、武豊尊が叱っている。おいおい。
『ジャンヌ!素晴らしいよ!よくやった!』
ベイカーランの馬主、ギリアム卿だ。小室師もうんうん、と頷いている。
『Formateur・・・作戦通りにはしたのですが』
『ぁあ?作戦?』
小室が首をかしげていった。
『ぁー!一緒に立てたね、うん!』
小室師は、作戦のことをすっかり忘れ、直線200メートルで浮上したジャンヌを血管を浮き立たせて応援していたらしい。
『ミスター、どうでしたかな』
ウサム殿下が問いかける。日本競馬は、や結果は、など様々な意図があったが。
『素晴らしかったです』
ヴァルケ・ローランは一言で、すべてを物語った。
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