第10話 やっぱりお米美味しい……お米大好き……
そうして、合宿は合計10日間続いた。
ラジオ体操も毎晩欠かさず。
ルーシーのお通じは無い日もあったが、平均するとある日が多く、それが自信になっているのか、無い日に落ち込む事も無かった。
ストレスと言うものは腸の調子に直結する。ストレスが
合宿が終わりを迎える頃には「夕飯の後のラジオ体操後にお通じ」がリズムとして定着した様で、体操を終えるとルーシーはいそいそとお手洗いに向かっていた。
そうして訪れた最終日。夕飯から米解禁だ。
まずは米を炊いておこう。
ご飯に合う食事と考えたら、やはり少し濃い目の味付けだろうか。そんな訳で定番の品を。
まずは
肉は鶏を使おうか。一口大に切って、塩と白ワインをしっかりと揉み込んでおく。
フライパンを温め、多めのオリーブオイルを引き、まずは茄子を炒め揚げにする。茄子がしっかりとオイルを吸い、火が通ったら一旦バットに上げておく。
同じフライパンに多めのオリーブオイルを引いて弱火に落とす。にんにくと生姜を入れて、香りが出るまでじんわりと炒める。そこに玉葱を入れ、さっと混ぜてオイルが全体に回ったら塩を振って、しんなりするまで炒めて行く。
そこに鶏肉を加え、表面が白くなるまで炒める。そこにマッシュルームとエリンギ、いんげん豆を入れ、しっかりと炒めて行く。
そこに赤ワインを入れて、しっかりと煮詰めてアルコールと酸味を飛ばす。
トマトとブイヨンをひたひたに加えて混ぜ、全体が温まったら茄子を戻して混ぜたらスパイスを加える。ターメリック、コリアンダー、クミン、カエンペッパー、カルダモン、ガラムマサラ。
そうしてくつくつと煮込んで行く。
その頃にはカロムにお願いしておいた米も炊き上がっていた。
「これは確かに米に合うよな。一緒に食っても旨いし」
「うん。鉄板だよね! これは煮込みだけど、もう少し水分量増やして、最初からお米に掛けて食べるって言うのが、僕の世界には普通の料理としてあるよ」
「ああ、成る程な。そりゃあ確かに旨そうだ」
そんな会話をしながら洗い物をしている間にも、煮込みは完成に向かう。
さて、そろそろ良いだろうか。味見をして、塩と
鶏肉と茄子ときのこといんげん豆のカレー煮込みの出来上がりだ。
皿に盛り、続けてほかほかと炊き上がった米も小振りの皿に、浅葱の国で言うところの茶碗に軽く1杯分程を盛り付ける。
「お、米、結構普通の量じゃ無いか? いや、ちょっと少ないか」
「うん。やっぱりあんまり量が多いとね。だからこれぐらいで」
それらをトレイに乗せて、共有スペースに運んで行く。
「お待たせしました」
「あ、やっぱりカレー煮込みですね。良い香りがしていました」
ルーシーは嬉しそうに言うと立ち上がって
そうして全員に行き渡る。ルーシーは米の皿を見て、眼を輝かせた。
「今日からお米が食べられるんですね……! 久しぶりのお米、嬉しいです!」
「量が少なめなのでルーシーさんには物足りないかも知れないんですが、余り多いと折角落ちた分が戻っちゃうかも知れないので」
「そうですよね。大丈夫です。お料理が美味しいので、この10日間もお米無しで大丈夫でしたもん。あ、でも自分で作る様になったらどうかしら」
ルーシーが少し不安げな表情を浮かべると、ウォルトが慌てた様に「ルーシー!」と声を上げる。
「ルーシーのご飯もとても美味しいよ。自分で作っているから判りにくいのかも知れないけど、大丈夫だから!」
そう力説する。
「そうだぜ。もう「自分が作る料理最高!」ぐらいに思って良いんだって」
「そうですよ。ドレッシングを作る時にお手伝いして貰いましたけど、要領もとても良かったですし、飲み込みも早かったんですから大丈夫ですよ」
カロムと浅葱も言い、そこでルーシーは「そ、そうですか?」と表情を和らげた。
「そ、そこまで自分の料理に自信がある訳じゃ無いんですけど、でも、その考え方は良いかもですね。心掛けてみます」
「そうそう」
カロムがうんうんと頷いた。
「じゃあ冷めないうちにいただきましょう」
浅葱が言うと、アントンが「そうじゃな」と応え、そのタイミングで皆神に祈りを捧げた。浅葱たちは「いただきます」と手を合わせる。
そうしてフォークを手にしたルーシーは、まず真っ先に米に向かう。
「ああっ、ルーシーさん、まずはお野菜! お野菜!」
浅葱が慌てて言うと、ルーシーは「あ!」とフォークを引っ込めた。
「そうですよね。お米が嬉しくてつい」
ルーシーが焦っておろおろと言うと、カロムが
「ルーシー、そんなに慌てなくても誰が取る訳じゃ無いんだから」
ウォルトにやんわりと言われ、ルーシーは「そうだよねぇ」と苦笑する。
「ご飯の最初にご飯を食べるのはいけないって聞いていたのにね。止めて貰って良かったです。折角最終日まで浅葱さんに美味しくて痩せられるご飯を作って貰ったのに」
「いえいえ。でも今日からお米解禁なので、ちょっと気を付けて貰えたら。まずはお野菜。それからお肉とかお魚。それからお米とかパンです」
「そうですよね。じゃあまずお茄子から」
スプーンに持ち替え、茄子にカレーソースをたっぷりと絡ませて口へ。するとルーシーは「んん〜」と幸せそうに眼を閉じて口角を上げた。
「やっぱり美味しいです……! お茄子って特に良く味を吸うから、噛み締めたらお肉とか他のお野菜から出た旨味が
「そうだねぇ。茄子もだけども、いんげんもきのこも美味しいねぇ。きのこも旨味をしっかりと含んでるよ」
「鶏肉も柔らかくて良いのう。あまり噛まんでもほろっと崩れるのう」
「本当ですね、本当に柔らかい。お肉は長時間煮込めば柔らかくなるって知ってますけど、これはそんな時間はしていないですよね? 何かしたんですか?」
野菜を一通り食べたルーシーが鶏肉を口にし、言って首を傾げる。
「白ワインを揉み込んでます」
浅葱が言うと、ルーシーが「え?」と眼を開く。
「それだけなんですか? それでお肉が柔らかくなるんですか?」
「はい。水分も含みますし、お酒の力でお肉が柔らかくなりますよ」
「他のお肉でも柔らかくなりますか?」
「なりますよ。試してみてください」
「はい。本当にこの合宿でいろいろ勉強をさせていただきました。帰ってからもいろいろ作ったりしてみたいです」
「ドレッシングを教えて貰ったりもしたもんねぇ。僕も楽しみだよ」
ウォルトが言い、その向こうでカリーナが小さく頷いた。
「さて、お米!」
ルーシーお待ちかねの米である。眼を輝かせてフォークで掬い、口へ運ぶ。
「ああ〜やっぱりお米美味しい……お米大好き……」
そう言ってフォークを手にしたまま突っ伏してしまう。そこまで米好きだったのか。
「ルーシー、
ウォルトが笑いながら言うと、「だって久々のお米なんだもん!」とくぐもった呻きが響いた。
そうしてばっと顔を上げ。
「カレーとも食べたい。でも白いご飯も美味しい。量があまり多く無いから悩みますね……」
そう言って少し残念そうに米を見つめる。そんな事をされると
「でも今はこれ以上は増やせないので、我慢して欲しいです。ごめんなさい」
浅葱が申し訳無さげに言うと、ルーシーは慌てて首を振った。
「いえ、いいえ! こちらこそ我が儘を言ってしまってごめんなさい! 大丈夫です。ちゃんとこの量で楽しんで食べられる様にします。それが習慣になったら良いんですよね」
「そうですね。それがベストです」
「はい!」
ルーシーは頷いて、力強く返事をした。
食後のヨーグルトは
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