第3話 お互いの気持ち



もうすぐで眠りにつくかと思っていた



ファッ




お腹の上にタオルケットがかかった事に

虚ろながら分かった。












チュン チュン







「あれー……。一番最後に寝たのに

一番最初に起きたよ。」





雀の鳴き声で起きたのは紛れもなく私だった。



カーテンを開けるとそれは意味を持たぬくらい爽やかな朝だった。





他の三人はまだ熟睡しているみたいだし



皆が起きるまでもう一回寝ようかな?




モゾっ



恭が寝返りをうった




起きたかな?

上からじっと恭を覗いてみる



「ん……っ?」



「起こしちゃった?」




「いや、別に」



「良かった。」


少し安心して笑みをこぼす



「どうする?ベットの二人?」

光が上に抱き合って寝てる二人を

見上げて恭に聞く


「起こしたくねー(うるせーから)」


気だるそうな言い方に昨夜だいぶ打ち解けたので、余り悪意がある訳では無く彼のスタンスだと理解し気にする事なく光は再び疑問を返す。


「今日何するんだろーね?」


「さぁ」



横目に流し特に考える事も無く

答えなく返事をする。


「あ、ポケモン好きなん?」


机の上に一番新しいシリーズがDSと一緒に置かれているのを見つけた。


「うん、最近買ってこればっかしてる。」


「へー。あたしプリン描くの得意よ!紙なーい?」


「あ、うん。あるよ」


立て掛けられた本の間からA4サイズの再利用紙を恭が光に渡す


「ありがとう!」


鉛筆も受け取り慣れた手つきで描いていく


「ほら!」


「おー、」


「恭ちゃん何か描ける?」


「んー…」


考えながら思いつくとプリンとは

反対側の余白にキングコングを描く


「こんなん?」


「おー!似てる!!」



「よっしゃあ!私がリザードン描いたらー!」


「うわっ」


ゴンッ


「………………っうう」



プリンが描き終わった所らへんから

二人の様子を見ていた恵が勢いよく

宣言した所。ベットが天井と近いため

思いっきり頭をぶつけてしまったのだ

恵は頭を抱えてうずくもる



「大丈夫?!」

『アホだ。本物の』


心配する友の声と

呆れた男の心の声がかけられる


「私マジリザードン上手いから!」


キリッと切り替えキメ顔で

二段ベッドの階段を降りて来た。



シャシャシャシャ

「ハイ!」


プロの様な手つきで秒速で描き上げた



「うぉっ!」

「うまっ!流石!」


これには恭も一声上げて目を見開き驚いた



「じゃあ次イーブイ!」

交代するかのように光も

得意なポケモンを描く

「んじゃ私はカイリュー!」

『怪獣マニア?』

恭は横で二人の落書きに時々加わりながら

少しだけ盛り上がっていた





「……何やってんね?」



上から落ち着きのある

奥田君の声がかかった。



「らくがきー」

「おはよー」

恵が即返事して光は挨拶をした

少し夢中になった恭はギクリとする


「朝っぱらから腐ってんねー」



ニマニマと笑いながら

落書きしていた紙を手に取る



「うわー恭ちゃんヘタクソー」

「うっせー」


「てか今日はどーするの?」

「んー……」


先程光も持った疑問を奥田君も

切り出す。


「とりあえずゲーセン行く?」

光が案を投げ

「ホッケーしたい!ホッケー!」

すぐに恵が乗る



こうして商店街にあるゲームセンターに

皆で行く事になった。









───────────────



ゲーセンは2階にあって

エスカレーターを男女

二人ずつで登って行った

恭ちゃんの足元が自然に目に入って見たら


底の5cm以上はありそうな

ラバーソールだった。



「よく見たらすげー厚底」

少しぷっと笑った



ギクッ



バレたくなかったみたいだ



「身長ひきーもん」


「そうなん?いくつ?」



「……168」


恥ずかしそうに言う。


「普通じゃん!」


「そぉ?」


「うん!ぱっと見高く見えるし」



「……ありがとう。」




ゲーセンに着くなり恵はさらっと

ダンシングゲームを始めてた



「あれ?ホッケーじゃなかったっけ?」



「なんであいつダンシングレボしてんだ?」




ノーミスで次に来る所を把握仕切ったダンスを繰り広げる



「……しかもうめー。」


ダンスの上手い恵に対する感心よりもこの彼女と付き合っている奥田君に感心をする恭だった。



「あっ!ホッケーあった!」



ゲーセンの中央あたりにエアホッケーを見つけ指指す



「私ホッケー上手いけん絶対負けんよ!」


「うん、だろーね。

俺すげー久しぶりだから

勝てる気しねーわ。」




気力無く恭が素直に返す



「……もっと対抗心持とうよ」


若干寂しそうに返す



「俺そんなキャラやないに」



「ふーん。




じゃあ2対2でしよう!」




「はー!スッキリした!」




ダンレボを終えて恵が戻って来た


「あっおかえりー!うまかったね!」


「いやいや、奥田君の方がすごいから

負けられないのよ!」


「えっ!お前すんの?!」

「意外……」


アハハと穏やかな顔して彼は照れていたが、こんななりをして恵以上のダンス技術を持っている事には光も恭と共に驚かざる得なかった



「とにもかくにもホッケーしよーよ」


「そーだね!じゃあウラカしよー」



「うーらか、おーもーて!」



光、恭チームとカップルチームに

綺麗に分かれた。




「いよっしゃー私負けないから負けないよー!良かったねー!」


「すげー強気やね」


自信に溢れた光に少し圧倒される。



「スタート!」


ゲームの機会声を合図に板が流れすかさず

光が気合いの声と共に打ち出す



『とりあえず形だけ』


構えポーズで恭なりに参戦する


「させるか!」


カキン!


恭の懐に板が入りそうになるが

光が跳ね返し相手のゴールに入る




「あー!!」

恵が悔しがる

「やったー!!」

短く喜びすぐに新しく板のラリーを

繰り広げる


『パワフルだなー』


「イエーイ!」



再び点が入り万歳をして喜ぶ



『こーゆう子も、いるんだなぁ。』



今迄出会った事の無い女の子の姿を

じっと見つめた



「ぎゃー!増えたぁあ!」

「うお?!」


ラストゲームになりゴロゴロと

板が流れ出て恭もせっせと

ゴールガードとシュートをぎこちなくし

結局みんな叫びながらゲームを楽しんだ







こうしてーー



ゲーセンを終えた後はボーリングをして

初めての出会いは過ぎて行った。




恵と私は電車に乗り込み



「で、どーだった?」

「ん?何が?」


「恭ちゃんに決まってんじゃん!」

ボケっとする光に恵がバッと

身を乗り出しもう一度聞く

「あ、ああ!」


すっかりその気も忘れて遊んでいた。



「まぁ、楽しかったし。

すごくいい印象ではあったよ。」



「だよね!光と恭ちゃん仲良くなって

よかったよかった!」


「うん!思ってたより楽しかったからホンマに良かった!」


「ゴチャゴチャやったよね。本当にスマン!」


「いーよ!」



やはり最初らへんの愚たついた所を

恵は気にしていた。

彼女は明るくて行動が読めない所はあるが基本的な性格は真面目なのだ



電車で1時間程でホームに着き

そこで恵とはわかれて私は歩いて

家に帰り着いた。




「ふーっ」



遊び疲れた体をソファーに預ける



『遊んだー』



本当に……




思い返すと



恭の横顔や

ボーリングでスコアを高く出す姿が

記憶に残り、名残惜しい。もう一度会いたいなぁとか考えた。






ん。何だコレ?!




感じた事のない感情に混乱した。






____________




「おーっ、それは恋じゃ

あーりませんか」


電話越しでも分かる

うふふとした表情の声が聞こえる



「こ、恋?!」



恋愛経験豊富なはるかに電話をして、

今までの話を全部してこの感情は

なんなんだろうと質問したらこの答えだ



「イヤイヤイヤイヤ!だって一回しか会って無いんだよ!そんな好きになんて……」



「恋は突然現れるもんよー



んじゃあさー、会いたいか会いたくない

って聞かれたら」



「会いたいでしょ?」








───────────────





二人を見送って静かな自室に戻り

コンタクトからメガネに戻る。

少し寝不足だったから勝手に使われた

二段ベッドに横たわる




……女の子は怖くて


話して無かったけど





初めてかもしんない




好きになるなんて




何度もその子の向けられた笑顔を思い出し

掛けられたタオルケットにうずくもる








これが二人の




初恋の瞬間であり




始まりだった。






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Love town 水野優子 @mizunoyuko

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