第2話 出会い
後日、まだ田舎くささが漂う大分駅のファミリーマートで待ち合わせをする様になった。
今はアミュができて綺麗な駅になり、その面影はすっかり消えている。
この当時は雑貨屋と小さなゲーセン。ミスド。このコンビニと薬局しかない。
全く待ち時間を持て余すホームだった。
名産のかぼすが2つに切れている椅子に私が座ってパンを食べていた時には鳩が膝の上に乗って、取ろうとしてくるくらいだった。
それでも市内の駅なのでこの日は人が結構多かった。早めに待ち合わせ場所に着いていた私は紹介される予定の男の子の顔も知らなかった為、別の人に声を掛けようとしかけてた。その後恵が来て、男の子と連絡を取り合い同じファミマに居ることがわかった。
「おーい!恭ちゃーん!!」
恵が飲み物をしゃがみながら選んでいる金髪の男の子に手を挙げて声をかけた。
華奢なその子の後ろ姿を見て、先程声をかけかけたガタイのいい人と間違えたので内心ホッとしていた。
「ん?」
短く返事をして振り返る男の子の第一印象は
『チャラ!!』
だった ……(すまない。)
先程記述した通り金髪で、少し肩にかかる長さでV系によくある髪型だ。顔は整っていたけど、格好もやんわりV系が入った黒Tシャツだったのでそんな印象だったのだ。
恵が私と恭ちゃんを軽く紹介し終わると恵の彼氏との連絡が少し詰まっている状況を私達に伝えた。
「バイトがちょっと遅くなりそうなんだって」
「うん、今日バイトだったみたい」
「どーする?」
恭が少し顔を曇らせて聞く
彼女を助けるかのように恵の携帯に彼氏から電話がかかった。
「あ、ちょっと待って!もしもーし」
恵が少し離れて、私と恭は後ろから電話をする恵を見守る。
「今日待ち合わせって、夜の8時だったんだね。」
恭が私に話かけた
「あ、うん?何で?」
事前にメールをやり取りしていた私と恭は(この頃まだLINEは無い)私から今日の待ち合わせ日時と場所を伝えていた。
「てっきり朝の8時かと思って朝に来ちゃったよ。」
「えぇ?!嘘!ごめん!」
この時まだ時間の伝え方を24時間単位で伝えていなかった為20時も8時と伝えていた。
「いや、いいよ。俺こっから家近いし」
「そーなの?どのくらい?」
「5分くらいかな」
「本当に近いな!」
答えに驚き過ぎてついいつもの通りのツッコミで答えてしまった。
「じゃあ今日恭ちゃん家で酒飲む?」
会話の途中から聞いた恵が遅れてくる彼氏の穴埋めをするかのように勢いよく言った。
「いーね!!」
基本的に私は人の案に乗っかる人だった。
「マジか?」
急な展開に恭1人が2人のテンションから置き去りにされていた。(今思うとだいぶ図々しいなと思うが)
ファミマでそれぞれの飲みたい酒とつまみを買い終わり、私がまとめて袋を受け取った。
「持つよ。」
恭は自然に声をかけて袋を持ち上げた。
「あ、ありがとう。」
思ったよりも優しい……?
「ヒュー♪やるね」
すかさず恵がいじる
「なんなんだよお前は」
お互いの距離感は何やら違いがあるような2人だった。基本的にこの子は仲良くなるのに時間を要さない子だった反面恭は慎重に人間関係を作る節がある。その為恭にはそのいじりが若干鼻につくような感じだった様子だ。
恵の冷やかしから逸らすように
「……二人は付き合い長いの?」
恭が私達に聞いた。
「いやー、高校の部活で知り合ったから短いよね?」
私が答えて恵がそうだねと相槌する
「ふーん、部活って何の?」
「え?マンガけ…うっ!」
答えてる途中に背中に強い平手が私に襲ってきた。もちろんその手は恵である。
『痛え!なぜ??!』
小声でやり取りし
『オタクって隠しているのに何故カミングアウト?!』
『いーじゃん!(私は隠すつもりなかったから)』
2人でヒソヒソしている所を不思議そうに恭は横目で見ながら気にしないように進んで行った。
尚、恵がオタクという事は既に恭は察知していた。
「このマンションが俺ン家」
本当に5分くらいの距離に茶色の細長いマンションがあって近かった。
「おおー」
意味も無く女の子2人でオーバーリアクションをする。
エントランスを入ってすぐ左の角部屋に入ると引越し仕立ての男の子の部屋が広がっていた。
6畳程の正に1人部屋の空間に二段ベッドの上に恵がすかさず登り「ひゃっほー」とはしゃいでみせる。
「おい!降りろよ!」
もう普通に友達という感じで接する恵のいい性格がどうもこの2人には合わないようだった。
「あーゆう子だから」
フォローをする様に恭に私は言う。
小さいテレビをつけると
丁度NHKの音楽番組に金爆(ゴールデンボンバー)が出ていた。
「あ、この人達知ってる」
「知ってるの?」
「うん、最近YouTubeで人気があって見た。面白いよ。」
「そーなんだ。」
まだYouTubeもあまりよく知らない私にはそれが初めて見た金爆の姿だった。
「ねぇ、私も恭ちゃんって呼んでいい?」
「あ、うん、いいよ。」
「おー!ゴクゴク。奇遇だねーゴクゴク。私もこの人達知っててゴクゴク。面白いよねー!!」
「飲むか喋るかどっちかにしろ」
お酒が進んでいたのかそれとも弱かったのかすぐに恵は寝落ちした。
「やっほーもうできあがってる感じ?」
ようやく彼氏さんの奥田君が到着した。
奥田君はこのマンションに来た事がある為、バイトが終わって直接ここに来てくれた。
「やっほー!ダーリンおかえり!」
寝起きの体で遠慮なく抱きつく
「できあがってんねー」
穏やかに笑いながら恵を受け止める。
「もぅそれどーにかしろよ。」
呆れるように奥田君に恭は言い放す。
「うちの子がお世話になったね。」
「母かお前は」
恵と奥田君の付き合いはこの頃は安定していた時期で夫婦感漂う空気を出していた。
だからできあがってる恵はもうバイト終で悪いが奥田君にパスして、テレビを見ながら何となく三人で酒を混じえて会話をしていた。
PM 25:34
「なんであの2人がベットで寝てんの?!」
家主の恭がすっかり寝落ちしたカップルを見て半ば怒り込みで言い放った。
狭い部屋には床にある机を退けて
布団を敷かないと後2人は横になれない為
おそらくベットに寝ているカップルを
そっちに寝かせたかったのだろう
「まぁまぁ、私は布団でも大丈夫だから」
なだめるように私は言った
「うん……、」
はっ!!
という事は初対面の私が一緒に寝るって事?!無理無理!!どうしよう!!
気づくのが遅い女だった。
───────────────
机を避けて布団が敷き終わり
私と恭は背中合わせで横になった。
一人分の布団の為、精一杯端っこに行って横になるのが私の精一杯の対処だった。
「狭くない?もうちょっとこっち来たら」
はたから見たら避けられてると思ったのか気を使って恭が言った。
「だ、大丈夫!!」
この状況に混乱していた私はこれ以上は休めなかった。
しばらくして、恭の寝息が聞こえた頃。後ろを振り返って『寝たのかな?』と思って確認した。
見ると暑さのせいでお腹にタオルケットがかかっていなかった。
夏でもお腹は冷やさないようにと、誰にも気づかれないようにそっとタオルケットをかけ直した
流石に1人用の布団の一番端っこで横になるのは体がきつかった為背中を少し寄せて、眠りに落ちる。
次の日の朝は何処に行くかも決めないままに
時計の音だけが流れていった。
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