第23話 妖魔襲来

 さて、お昼ごはんタイム。

 俺はおにぎりとおかず。ナディア(大)は特に食事をする必要がないみたいだけど、食べることで養分を摂ることが出来るので、リンゴを食べる事にする。

 ナディア(小)の時にはフルーツをもぐもぐ食べていたけど、この身体では初めての食事だそうだ。


 俺自身がリンゴは皮を剥く派なので、レナートさんから借りたナイフを初使用じゃ!

 バッグからナイフを取り出し、鞘から抜いてリンゴをむきむき。すげぇ綺麗にするする剥ける。ちょっと楽しい。

 はい、あっという間にできました!剥いた皮と芯の部分は、持って帰ろうね。


 …ナディアさんや、そんな目で何を見てるのかな?


『そのナイフは…。』


「あぁ、コレ?レナートさんって覚えてる?観測所で会った赤い髪色の人。あの方にいただいた袋の中に入ってたんだよね。」


『あの、クローゼットの中の袋ですか?』


 おお、何回か使ってるからわかってるんだな。


「そうそう。アミュさんが呪いのバッグって言ってるヤツ。豪華そうだし、さすがにもらうのは気が引けるので、少しお借りしようと思ってね。」


『とても清らかな力を感じます。見せていただいてもいいですか?』


「うん、どうぞ。」


 リンゴの香りがするナイフを、汲んだ泉の水で洗ってから鞘に納めて渡す。刃が出たまま渡すのはコワイ。


『お預かりしますね。』


 鞘から抜いてナイフを見る。刀身、鍔、柄に刻まれた模様と装飾、鞘の装飾などをじっくり見て、ややしばらく目を閉じる。


『これは魔法武器に、精霊の祝福が与えられているようです。』


 わかっちゃうんだ。

 そんなのでリンゴ剥いたの?俺。


『このナイフに付与されている魔法は≪幸福≫ですね。さらに祝福されているとなりますと、どれほどの効果があるのでしょうか…。』


「その、幸福って魔法はどんなヤツなの?」


『一言で言えば、幸せな気持ちになる、といった魔法ですね。』


 うーん、微妙。バトル要素ゼロ。


「じゃあ、さっきリンゴがキレイに剥けてニマニマしてたのも、コレで幸せになったとか?」


『もしかしたら、そうかもしれませんね。』


「使うと幸せ感マシマシな、良く切れるナイフ(本人の感想です)って感じか…まぁ使いやすいし、火の玉が出るとか雷を落とすみたいな戦闘的なヤツじゃないから、普段使いしやすくていいか。でもさ、ナイフ持ってニヤニヤしてたら、絶対通報されるよ。ヤバいヤツがいまーすって。」


『それはまぁ…。でも、私も一緒に笑っていたら、きっと大丈夫ですよ!』


「じゃあその時は、周りの人を説得してもらおうかな。ヤバいヤツじゃないよって。」


『よろこんで!』


 レナートさんが何故コレをチョイスしたのかはわからないけど、やたらと何かを傷つけるよりはいいかな。

 血を求める戦闘ジャンキーになる魔剣とかだったら、人探しどころじゃない。どこでこんなナイフを仕入れたんだろうな。


「ま、そしたらご飯を食べようかね。」


『そうですね。それでは…うまそう!うまそう!いただきます!』


「うまそう!うまそう!いただきます!」


 ご飯の呪文をしっかりマスターしたナディア。

 ナイフが無くても幸福ですよ…。




 お昼ご飯を食べ終わり、泉の縁に座ってまったりタイム。


「いい陽気だねぇ…。」


『ホントですねぇ…。』


 すっかりピクニックモードに入ってしまった。


「今日は夕方までのんびりデーにする事に決めた。依頼の仕事は明日やりまーす。」


『…いいんですか…?』


「たまには、こんな日があってもいいよね。」


『はい!!』


 笑顔で答えてくれた。良かった…。

 遊んでないで仕事しろ!って言われたらどうしようかと、実はちょっと心配した。

 さて、何をしようかな~と思案した時。


『誰か…来ます…。』


「誰か?それは…例の予言?」


『はい…これは子供…?向こうです。この子、ケガして…。』


 上の泉とは逆の方を指さしてる。何回かこういう事はあったけど、外れたことがない。


「わかった、ちょっと行ってみる。待ってて。」


 急いで靴を履いて、指をさした方向に走る。

 ホントだ、子供だな…向こうから歩いてきてるのは…トーラスくんか?


 何だそのケガ!!

 足を引きずって、全身傷だらけの痛々しい身体。


「トーラスくん!!」


 俺が大きな声で叫ぶ。ふっとこっちを見て、にこーっと笑って、倒れた。

 これはヤバい。何かヤバい事が起こってる。

 辿り着いた時に見る彼の姿は、先日見た彼の姿とはあまりにもかけ離れていた。


「トーラスくん!大丈夫か!?」


「…おにい……うちが……」


「わかった、ちょっと連れて行ってあげるからね。」


 トーラスくんを抱きかかえて、とりあえずナディアの元に戻る。


「ナディア!すぐにライナさんの所に行ってくる!」


『待って!泉の近くに寝かせてあげて!』


「これはヤバい、すぐに治療しないと――――」


『お願い。ここに。』


 真剣なまなざしと静かな迫力。


「…わかった。よし、トーラスくん、ちょっと降ろすからな。」


 泉のすぐそばにトーラスくんを寝かせてあげる。

 ナディアがそっと近づき、泉の水を傷口にやさしく振りかけている。


「消毒か?」


『ううん、この怪我を治癒します。』


「治癒って…。」


 ナディアが泉の水を掬って、そっと傷口にかけて、優しく触れる。

 トーラスくんに触れた手が、淡い光を放つ。

 みるみるうちに、全身の傷口が塞がっていく。これは…


「…うう…パパが……ようまに……ママ……エミリア……」


「もしかして、妖魔に襲われたのか?」


『この子はもう大丈夫。私に任せて。』


「わかった、俺は流音亭に伝えてくる。待ってろ。そのままこの子の家に行くかもしれない。この子を頼んだぞ。」


『うん、アキラさん、気を付けて。』


「ナディアも無理しないようにね。じゃ、また後で!」


 ダッシュでその場を離れる。

 確か、ライナさんの家にバルさんとその友達がいるはず。先にコッチに行って、状況を知らせよう。

 ジャムカさんはフォレア村にいるはずだから、果樹園の異変に気付いて先に行ってるかもしれない。

 アレクさんとセイラさんの家は分からないから、バルさんか、友達のどちらかに連絡をお願いするしかない。

 先に流音亭に一報が入っててくれたらいいんだけど―――




「ライナさん!失礼します!バルさんとスカンダさんはいらっしゃいますか!」


「は~い。あら、アキラさん―――」


「すみません、少し急いでおりまして、バルさんとスカンダさんは、こちらにいらっしゃいますか?」


「え?ええ、居ますけど…。」


「至急、お伝えしたい事があります。お話をさせていただいていいですか?」


「ん~?どなた?」


 のっそりと奥から出てきたのは、オールバックで顔に傷のある青年。


「バルさんですか?」


「そうだけど、どなた?」


「フォレア村の果樹園が、妖魔に襲われている可能性があります。」


「…詳しく。」


 目つきが変わった。いつの間にかもう一人、眼帯をつけた青年が隣にいる。


「先程森の奥で、全身傷だらけのトーラスくんを保護しました。うわ言で言っていたのは、パパが、妖魔に、ママ、エミリア。現場の状況は未確認ですが、妖魔出現の可能性は極めて高いと思われます。」


「何故そう言い切れる?」


「何事も無ければ、あんなにトーラスくんが傷つくはずがありません。仮に出現していたら時間がありません。私はすぐ流音亭へ行きます。パーシャを借りて最悪の事態に備えます。ジャムカさんは現場に近いはずですのでもしかしたら向かっているかもしれません。アレクさんとセイラさんの家は分からないので、お二方のどちらかにご連絡をお願いしたいと考えています。」


「ライナ!治療一式の準備ができたらフォレア村に来てくれ!スカンダ、アレクとセイラに連絡頼む。」


「ありがとうございます。それでは後程。」


 お店を飛び出してダッシュで流音亭へ向かう。時間は大丈夫か?




「アキラくん!」


「アミュさん!もしかして聞いてますか?フォレア村で―――」


「アキラ、すぐパーシャで飛んでくれ。ギルドから俺はここで待機するよう命令が出た。」


「わかりました。バルさんとスカンダさんに状況を伝えました。ジャムカさん、アレクさん、セイラさんにも伝わるはずです。」


「了解した。念のため持っていけ。戦闘の可能性はあるが無理はしなくていい。」


 小剣を渡される。


「ありがとうございます!すぐ出ます!」


 礼だけ言ってすぐ外にでる。

 厩舎に向かうと、既に姉さんの鞍はセット済みだ。


『ちょっと、妖魔出たんだって?』


「今日は姉さんの雄姿を見せていただくかもしれませんね…っと、コレどこ外すんですか?」


『もう…ソコよソコ。緊張感に欠けるわ~。』


「…っしょ!オッケーです。すぐ出られますか?」


『いつでもいいわ。乗って!』


「お願いしまーーーーーす!」


 少しでも関わった人の生命が脅かされているかもしれないという焦燥感。

 この日、俺は高所恐怖症を克服した。




「何だアレ!?」


 果樹園の奥にあるのは、黒い渦巻雲。


『妖魔の出入口よ。そこまで大きくないけど…出て来てるわ。ホラ。』


「うぉ、アレは…。」


『ゴブリンとコボルトと…オークも来てるのね。まずは蹴散らすから。しっかり掴まって!』


「了解!」


 一気に急降下。狙うは、後方のオークと周辺のゴブリン。


『失せなさい!』


 猛禽の嘴が、オークの胸を貫く。

 バサリと舞い上がり、ぐるりと旋回しながら鋭い爪で近場に居る獲物達の胸を抉る。

 一瞬で付近の妖魔を消滅させる。


「姉さん…強えぇ…。」


『まだまだいるわよ。次ッ!』


「姉さん!向こうの建物の方に行って欲しい!!トーラスくんの家族を確認したい!!」


『いいわ。じゃあ先にそっちから行きましょう。』


 襲い掛かってくる数体のゴブリンを、ついでに蹴り上げて高く飛び上がり、トーラスくんの家へ向かう。

 大丈夫か…!?生きててくれよ…!!


『ワン!ワン!ワン!』


「ラッキーちゃん!?」


 何と、ラッキーちゃんがコボルトに襲い掛かっていた。

 ヒット&アウェイの華麗なフットワークで、数体のコボルトを翻弄している。


『あら、あの子かなり戦慣れしてるわね。しかも加護持ちじゃない。』


「加護持ち?」


『精霊がついてるのよ。まぁ、アキラほどじゃないけどね。』


「俺が?なんで?」


『あんたはアイツら如きじゃ死なないわよ。詳しい話は後。家の前にいるあの豚を仕留めてあげるから、中を見てきなさい。』


「オッケーです!」



【ケーーーーーーーーーーーーッ!『貴様ら悉く皆殺しにしてくれるわ!』】



 物騒な事を大声で叫ぶ姉さん。

 グリフォンの大喝で、ゴブリン・コボルトが凍り付くように動かなくなった。

 予定していた通り、家のドアを破壊しようとしているあの豚を目掛けて滑空する。気づいたオークがブン回した斧をふわりと回避し、一気に掴みかかった趾で力強く握り潰す。


『さ、行ってきなさい。屋内は私は助けてあげられないから、油断したらダメよ。』


「ありがとうございます!」


 パーシャ姉さんから飛び降りて、ドアを叩く。


「トーラスくんのお父さん!お母さん!無事ですか!!!ラッキーを探した冒険者です!!!」


 中から、か細い声が聞こえる。


「きっ…君は…あの時の…?」


「はい!ご家族は、皆さんはご無事ですか?」


「トーラスが…トーラスが一人…助けを呼びに行くと森に行ってしまって…………!」


「トーラスくんは無事です。私が発見して、今治療中です。意識もあります。」


「おおおおぉぉぉ…そうかぁぁぁ…トーラス………良かった………。」


 嗚咽にも似た、安堵の叫びが聞こえる。


「ご家族は、皆さんご無事ですか?」


「あぁ、妻も、子供たちも、無事だ…。」


 良かった…。とりあえずは、大丈夫か。そしたら後は―――――


【ガウガウガウガウガウ!】


 うぉっ!


 背後から飛び掛かられ、強い力でドアに叩きつけられる。

 あまりの痛さにほんのちょっとだけブチ切れてしまって、怒鳴りながら振り返る。


「痛ッてえええなゴラァァァアアアア!!!!!」


 コボルトがよだれをダラダラと垂らしながらジリジリと近づこうとしている。

 ヅカヅカと近づいてボロボロの衣服の胸倉を捻り上げて、つい、言ってしまう。


「ブチ殺すぞコノヤロウ。」


 普段はこんな事言わないから。言えないから。

 痛すぎたので、妖魔…怖い…という気持ちよりも、怒りの方が優先しちゃっただけなんよ。


『嫌だ…。』


 は?


『嫌だ…怖い…死にたくない…。』


 コボルト泣いてる。マジか。


「何泣いてんの?」


『怖い…オークに…殺されるから…。』


「オークは死んだよ。」


『オーク…死んだ?ホント?』


「ココに居たヤツもいないし、ホラ。次々とあのグリフォンが瞬殺してるから。」


『もう嫌だ…もう…戦いたくないよ…。』


「わかったから。もう、こんな事やめろって。あんた、向いてないんだって。」


『帰りたい…。』


「…次出てきたら必ず殺すからな。俺がデカい声で叫んだら一気に走れ。二度とコッチに関わるなよ。」


 掴んだ胸倉から手を放して、小剣を抜く。


「死ねやゴラァァァアアアア!!!!!」


『ギャアアアアアアアアアアア!!!!』


 一目散に、渦巻に向かって逃げていくコボルト。


 追いかける俺。


「待てやゴラァァァアアアア!!!!!」


『ギャアアアアアアアアアアア!!!!』


 それにつられたのかはわからないけど、妖魔の集団がザワついて、一斉に渦巻目掛けて逃げ出す。

 塊になって逃げる妖魔の集団に、パーシャ姉さんが突っ込んで無双状態。


 あのコボルトは…先頭切ってダッシュしてたから、死んではいないだろう。多分。


 程なくして、黒い渦巻が霧散した。終わったのかな?


『はーい、お疲れ様ー。』


「あぁ、姉さんお疲れ様でした。」


『あんた、随分と気合い入ってたね~。始めての戦闘でしょ?よくあんな事できたわね。』


「これも≪人獣≫の特性ですか?イヤですよ。コボルトの身の上話なんて、聞きたくもない。」


『ふふふ。ネズミの事ではどうなるかと思ってたけど、案外、大丈夫そうで安心したわ。』


「でも、姉さんが居なかったらヤバかったんじゃないですか?数は、結構居ましたよね。」


『村の中に行こうとしてた奴らは、若い子らのパーティーが仕留めてたからね。私はコッチに集中出来たのが良かったわ。」


「そうだ、パーティーの人たちはどうしてました?」


「うーっす。」


 そう言いながら話しかけてきたのは、例の5人組パーティー。


「最後のアレは凄かったな、コボルト恫喝して泣かすヤツは初めて見たぞ。あんた、面白いヤツだったんだな。俺はジャムカだ。覚えてるかい?」


「ああ、もちろん。俺はアキラ。あの時は色々ありがとう。」


「気にしなくていいって。で、こいつら―――」


「このお兄ちゃん、ジャムカのお知り合い?」


「ああ、アミュさん口説いてリバルドさんにブン殴られた裸族の人だよ。」


 ちょっとジャムカさん…。

 全てが事実なだけに反論の余地ゼロっす…。


「アタシなら全然口説いてくれてもいいのよ~。セイラちゃんだよ。よ・ろ・し・く・ね。」


 金髪の美人さん…弟だったはずだけど?妹?


「アキラです。よろしくです。」


「さっきは突然でビックリしたけど、要件を端的に纏めた指示は見事だった。バルだ。改めてよろしくな。」


「アキラです。拙い説明にも関わらず、察してもらえて本当に助かりました。ありがとう。」


「何、いいって事さ。で、コイツはスカンダ。トークスキルに欠けるのが玉に瑕なんだ。いいヤツだけどな。」


「アキラです。よろしく。」


「…ああ、よろしく。」


「じゃあ皆終わったから~アタシがこれからお宝を――――」


「またそうやって遊ぶ。」


 セイラさんに脳天チョップをかまして入ってくる。赤毛の、あの人だ。


「アレクシオスだ。君がかなり早い段階で気付いてくれて、行動できたのが本当に良かった。死者が出なかった事が不幸中の幸いだと思うよ。行動が遅れていたらと思うと…ゾッとするね。ありがとう。」


「アキラです。妖魔が村に侵入する事を防ぎきったことが、被害拡大を抑えた最大の要因と思います。こちらこそ、ありがとうございます。」


 果樹園に散らばる宝石・原石は、全てトーラスくんのご家族に寄贈することで、(セイラを除く)全員の意見が一致した。

 その他にも国から災害見舞金が出るようだけど、果樹園の復興には時間がかかるとの事。

 だが、一人として家族を欠かすことがなかった事、それで満足だとお父さんが言ってくれた。


 こうして、突発的に発生した俺の初陣と妖魔の討伐、例のパーティーとの邂逅を無事に果たした。

 彼らには後日、改めて報奨金を渡しに行くことを伝えておいた。


「姉さん、お待たせしました。」


『あら、もういいの?』


「うん。俺はちょっと寄る所があるから、このメモをリバルドさんとアミュさんに渡しておいてくれます?」


 全て、無事に解決した事をメモに記載して、姉さんに託す。


『わかったわ。それじゃあ気を付けて帰ってきなさいよ。初陣、お疲れ様。』


「ありがとうございます。お疲れ様でした!」




「ただいま~。遅くなってゴメンね。トーラスくん、大丈夫?」


 泉の中でトーラスくんを胸に抱いていた。神々しいな…。


『アキラさん!ご無事で何よりです…!トーラスくんの身体は、全て治癒が終わっています。どこにも異常はありませんよ。今は、深い眠りについている所です。』


「そっか~、それは良かった…。今日はお疲れ様でした。本当にありがとう。」


『いえいえ、私は、私に出来る事をしただけですよ。』


「今日は本っっっ当に濃い一日だった…。あのまったりムードから一変しちゃったからなぁ。」


『そうですとも。コボルトをシバキ上げるアキラさんの雄姿…あれはズルイですよ~。いつもと全然違いました。ギャップですよ。』


「へ?何で知ってんの?」


「痛ッてえええなゴラァァァアアアア!!!!!」


 ビクっとした。ちょっと聞き慣れないこの声…録音した時に聞こえる気恥ずかしい自分の声…。

 そしてカバンからヒョコっと顔を出す、ナディア(小)。


「…ぶちころすぞこのやろう。」


「なんで、ちっさいナディアがカバンに入ってんの?いつの間に…。」


『だって…心配だったんですよ?』


 もう、コイツらめ!

 ナディア(大)(小)の頭をワシワシと撫でる。


『うふふ…。』


「…もっとなでれ。」


「本当に…カワイイなぁ、お前たちは!まったくもう!」

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