第11話 買い物ついでの犬探し
「お風呂ってありますか?」
帰って早速アミュさんに風呂について聞いたところ、宿屋部分に共同の風呂場があって1回銅貨3枚で入れるとの事。
さっそく支払うと、リバルドさんがお風呂の準備に取り掛かってくれた。
準備に1時間ほどかかるようなので、お風呂を待っている間、ハウスラット関連の宝石と原石の鑑定が済んでいたので報酬と一緒に受け取る。
「はい、それでは今回の報酬だよ~。」
「ありがとうございます!」
依頼達成報酬が銀貨2枚と、ハウスラット退治で銅貨5枚が上乗せ。
宝石は小粒だったけど、そこそこあったので銀貨6枚。
原石はほぼ無いに等しく、銅貨3枚分。
合計、銀貨8枚と銅貨8枚。おおお、ちょっとお金持ち気分。
手持ちが銀貨13枚と、銅貨9枚で、あとはお守りの銀貨3枚か。
お守り抜いたら14,000円くらいか…そしたら、細かい雑貨とかも買えるよな。
「リクハルドさんのお店って、書くものとか袋とか、雑貨って取り扱ってるんでしょうかね?」
「そうだね、大体売ってるかな。あの辺りには、他にもいろんなお店があるから見てみるといいよ。」
「あー、じゃあ明日ちょっと行ってこようかな…。」
「あとね、残りの依頼出してる子があの辺りに住んでるんだよね。」
おお、そう言えば依頼が増えてなければラスイチ。
捜索が使命の俺としては、何かを探すというのは大事だよね。
選んでなかったけど。
・犬探し
あの野良を最近見かけないので気になります、探してみてください。【銅貨5枚】
トーラス
あの時は、マンドラゴラを引っ張らせる犠牲のために連れて行かれたんじゃないかと思ってたけど、ライナさんの手際を見たらそんな事はしなさそうだし、単純に何処かに行っちゃったのかねぇ。
「ナルホド、ちょうどいい機会ですし、受けてきます。」
「うん、よろしくね。」
リクハルドさんのお店があるのはフォレアという村だそうだ。
一度行った場所なのに、二度目にして名前を知る。
もっと何事にも興味を持って見たり聞いたりしなきゃホントにダメだな俺。
斜め下を向いて誰とも目が合わないようにスタスタ歩くもんだから、通勤コースでも新しい店とか全然知らねえのなってバカにされてたよな…。
ちなみに依頼人のトーラスくんは6歳。お小遣いを貯めて野良犬探しに遣うとか、ちょっと考えられない…俺が6歳の頃ったらアホの子みたいに野山を駆けまわっていたよ。
依頼書は、ご両親が一緒に来て書いてもらったそうだ。ええ子やで…見つかるといいねぇ…。
「フロの準備が出来たぞ。」
「ありがとうございます!それでは、入らせていただきますね!」
「はいはい、ごゆっくり~。下着とか洗ってあげるから、カゴに入れておいていいよ~。」
「いえいえいえ!それは自分でやりますので!大丈夫です!」
それさすがに気が引ける。
下着は風呂場で洗ってしまえばいいので、謹んで遠慮しておこう。
「ヴァアアアアァァァァァ………………」
おっさんの咆哮、それは風呂に入った時に出るもの。
浴槽に水を張って沸かすタイプのお風呂で、浴槽は石づくり。
俺が足を伸ばしても少しゆとりがある浴槽サイズなので、めっちゃリラックス。めっちゃ気持ちいい。
お湯の色はやや黄緑色っぽく、銭湯に行った時に香る入浴剤のような芳香で天国かと思った。
もうそろそろ夕方になる時間帯、少し高い所に窓があって、入ってくる涼しい風が心地いい。夕方ぐらいの風の匂いがすごい好き。森の中の秘湯って感じがして天国かと思った。
「たまらんのう…。」
やや長めに湯船に浸かってたら、すっげぇ眠くなってくる。寝たらヤバいから、もうちょっとだけお風呂を満喫。
そして浴槽から上がり、パンツやらシャツやらを石鹸でゴシゴシと擦り洗い。石鹸まであるんだなぁ、とちょっと感動する。ほのかに柑橘っぽい香りがする。
その後で全身くまなくキレイに洗って…もう一回湯船に浸かって…もう天国…お風呂大好き。つい鼻歌も飛ビバノン~♪
「最高のお湯でした…ありがとうございました…。」
ややゆったり目の部屋着と大きなタオル、新しい下着を貸してもらった。
借りてばっかりで気が引ける。少なくともタオルとか下着類は多めに買わねば…。
もうちょっとしっかり稼いだら、服も借りてるのじゃなくて、自分のものを買おう。
「は~い。晩ごはんまでもうちょっとだから、お部屋で休んでてね~。」
階段を登って廊下の左右に3つずつの扉。
左側の一番奥が、ココでの俺の部屋。
全部で6室あるが、今は俺一人がこの宿に宿泊している。
部屋は10畳ほどのワンルームで、机、椅子、ベッド、ローテーブル、本棚、ランタン式照明、クローゼット、コート掛け、つっぱり棒っぽい何かが備え付けられている。
ちなみにレナートさんのマジックバッグは、クローゼットの中に入れている。
窓の外には小物の洗濯物干しスペースがあるけど、もう夕方だし、ちょっと遅い時間だから屋内のつっぱり棒にさっきの洗濯物を干しておこう。
あとは、カバンからマントを出してコート掛けにかけておいて、グローブとナイフはローテーブル。カバンをクローゼットに入れて、お片付け完了。
さて一息ついたし、明日は何を買おうかな。
鉛筆あるかな。羽ペンの携帯タイプみたいなのがあればいいなぁ…値段次第か。
あとはノートか手帳。ザラザラしてるけど紙は普及しているから、いざとなったら紙の束を買って、A5かB6サイズくらいに切って、ひもで括ってノートっぽく作ればいいか。
草とか木の根とか、材料系を入れておける袋も欲しいなぁ。依頼の都度準備するのもアレだし、ライナさんが持ってたような、麻の袋っぽいヤツか、布の袋か…これも値段次第で大小何枚か。
あと、広い口の瓶とか?ネバネバしたヤツを採ってくることがあったら、絶対要ると思うけど…その場合は依頼主が準備しているのか。念のため、確認だけ。
あとは、下着類、ハンドタオル、バスタオル。雑貨屋さんか、服屋さんか?
お金足りるかな…まぁ、足りなかったら筆記用具を優先するか。
「晩ごはんの準備できたよ~。」
「はーい!まいります!」
さて、今日のご飯は…このニオイはまさか!
「今夜はカレーライスでーす。」
「カレーがあるんですか!?」
「え?あるよ?フラムロスに受け継がれる伝統料理だよ。むしろ、アキラくんはカレーを知ってるのかい!?」
フラムロス恐るべし。てか、パンな世界と思ってたけど米もあるのか。
過去の使命者が、俺みたいな日本人だったに違いない。
で、味はどうなんだろう…カレー大好きっ子としては気になるキニナル。
「うまそう!うまそう!!いただきます!!!」
色や香りはカレーそのもの。ほんのちょっとだけ辛そうなニオイかな?
んで、味は…どうかな?
もぐもぐ…
もぐもぐ…
…これって、俺が大好きなポークカレーじゃーん!
チキンも良いし、ビーフも良い。しかし俺が一番好きなのは、ポークなのですよ。
「美味しいですね~!!ポークカレー、俺大好きなんですよ!」
「そうか、気に入ってくれたか?」
「すごく美味しいです!ちょっと辛いのかな?と思いましたけど、ちょうどいい感じのマイルドな辛味というか…何となく、どこかで食べた事のある感じなんですよね…何が入っているんだろう…。」
「ウチでは、リンゴとハチミツが味の決め手だな。」
「カンゲキ!な組み合わせじゃないですか!時空超えてますよ。すっごい美味しいです。あと肉がすごいですね。脂すぎなくって、しっかりした味だけど柔らかく煮込まれていて…。この豚肉って、野生の豚なんですか?それとも、肉のために飼ってたりするんですか?」
「豚は家畜化が進んでいるからな。今回のカレーは、普通の豚肉だ。野生の豚もいるがあまり一般的ではないな。しかし野生の豚は身と味がしっかりしていて旨い。稀に討伐オーク産が市場に出てくるが、あれは最高だぞ。」
「オークって、豚の頭の人型タイプの…。」
「妖魔だ。あれを倒すと上質な豚肉をドロップする。レアドロップの場合の肉は、超高級食材と言ってもいいな。オークも上位になればなるほど、さらに上質な肉を落とすぞ。アキラ、強くなって肉を持って来い。」
「承知いたしました!」
おうちカレーの味を思い出させてくれる今夜のカレー。
腹いっぱい喰って、気持ちが上がったり下がったりと色々な事があった今日を大満足で締めてくれた。
「やっぱりカレーは2日目ですよね!」
「…わかってるな。」
驚きの朝カレーに舌鼓を打ち、リバルドさんと、漢の絆が深まった。
さて、今日はフォレア村へ買い出し。
ついでと言っては何だけど依頼もあるし、今日はまったりオフ気分で行こう~。
「ごめんください。」
「いらっしゃいませ~。おお!冒険者さん、昨日はありがとうございました!」
リクハルドさんが店番をやっていた。
あのデカい蔵を持つ旦那さんだよね?
「ウチはしがない雑貨屋ですから、店に立って売り子もしますよ。さて、今日はどういったご用件でしたか?」
「筆記用具と、生活雑貨などを買おうかなと思いまして。」
「どうぞどうぞ、物を書きつける用具類はそちらに、用紙などもそちらにございます。試し書きもできますので、どうぞご検討ください。」
「ありがとうございます、ちょっと見させてもらいますね。」
少し固めの細いクレヨンのみたいな物が、3本で銅貨1枚。ちょっと書きにくいかな…。
かなり固めの、太い鉛筆の芯みたいな物は、1本で銅貨1枚。意外と書きやすい。でも、ちょっと折れないか不安が残る。
羽ペンが1本銀貨2枚と銅貨5枚、インクビンが1個銀貨1枚。よさげだけど家で何かを書く用だな。ちょっと大きいのと、インクビンもかさばっちゃう。
収納型の携帯用羽ペン・インク付きが1セット銀貨4枚。うわー、コレ欲しいな~。大きさがちょうどいいし、携帯ケース便利だな~!
とりあえず、大まかにはこんな感じ。鉛筆とか万年筆は無かったな。しょうがないか。
現実的に考えると、鉛筆の芯だけのヤツを買って、布を巻いてみたり折れにくい加工したら、かなり便利かもしれない。ペンケースみたいなのを探して持ち運べば、安上がりでいいかもね。でもいつかは携帯用羽ペンを買いたい!
あとは、ノートとか手帳は…意外と多いな。そうか、本みたいな装丁になってるのか。意外と製本技術がしっかりしてる。しおりの紐もちゃんとついてる。
安いヤツは、薄めで装丁が雑、銅貨2枚からあるけど、書いてるとバラバラ落ちてきそう。
銅貨5枚ぐらいのでも、しっかりした物はあるな。銀貨クラスになると、かなりしっかりしてる。家で使うのは、ここら辺からかな。
あ、コレは竹…じゃないか。ちょうど筒型になってて、さっきの芯を入れてもゆとりがあるっぽい芯入れ。ペンケースに任命する。1個銅貨2枚。
そしたら、太い鉛筆の芯が2本で銅貨2枚、A5サイズくらいのノートが銅貨6枚、ペンケース銅貨2枚。
合わせて銀貨1枚。
よし、続いてはタオル類か…バスタオルみたいなフワフワ生地は、さすがに無いか。
やや薄手で、普段使いのような手ぬぐいであれば、ハンドタオルサイズ1枚が銅貨2枚。
厚手の綿っぽい、水をよく吸う生地はあるけど少し割高。ハンドタオルサイズ1枚が銅貨5枚。バスタオルサイズだと1枚で銀貨2枚。
流音亭で使っているタオル、かなりしっかりしたヤツを使っているんだな…でも、これをケチると、わくわくお風呂ライフに影響する!
日常用には薄手の手ぬぐい。5枚で銀貨1枚。
お風呂用には厚手の生地。ハンドタオル2枚で銀貨1枚、バスタオル1枚で銀貨2枚。
合わせて銀貨4枚。
よし、今のところ銀貨5枚ちょうど…布製品が思いの他かかるな…。
「衣類とかは置いてますか?」
「それでしたら、村の西側に服屋がありますので、そちらに行かれてはいかがでしょうか?」
とりあえず雑貨屋さんで買えるものを清算して、お店を出る。
残りは銀貨8枚と、銅貨6枚。結構ギリギリだけど、下着だけでも買っておこう。
「いらっしゃいませ!ロズリーヌ服飾店へようこそ!」
「すいません、メンズの下着って置いてますか?」
一瞬間が開いたけど、いい笑顔で教えてくれたよ。
メンズのインナーシャツ1枚で銅貨7枚、パンツ1枚で銅貨3枚。
上下で銀貨1枚か…まぁ、ちょうどわかりやすい金額で良し。5セット購入で、銀貨5枚。
これで残りが銀貨3枚と銅貨6枚…初期費用がそこそこ、かかっちゃうよな…まぁしょうがない!袋と瓶はまた今度!
これで買い物も終わったし、トーラスくんの所に行って話でも聞こうか。
トーラスくんの家は、フォレア村の東側にある果物農家。
西から東に歩く道すがら、市場、酒屋、食堂、厩舎、鍛冶屋などを見ていく。
この村で暮らす人々は、主に農業と林業で生計を立てているとの事で、平日の午前中という時間帯、皆さん仕事をしているため人通りは少ない。
ややしばらく歩くと果樹園が見えてきた。
若い男性と女性が働き、子供が3人お手伝いをしている…ここかな?
「こんにちわー。冒険者ギルドから参りましたー。」
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