マウンテンゴリラ
マウントを取る。というが、私はこんな鬱陶しい奴らをみんな本当にゴリラにしてしまう薬を開発してしまった。
我ながら完璧に頭がいい。この間は小型犬みたいな耳が痛くなる話し方をする女をおっさんみたいな声にしてしまうピンクのお酒を生み出し、随分とこっそり儲けたものだ。とはいえ、3ヶ月ごとに飲まないと元に戻ってしまうのだが、そのおかげで稼げるというもの。
今回も、まずはマウントする親友とは名前だけの女を殺したいほど恨んでいる依頼人に渡してみよう。
ちなみにゴリラタイムは24時間の予定で、記憶もしっかりとゴリラとして残る予定ではある。六本木のクラブの酔っ払いに一日寝てもらって、こっそり試したが、半分くらい効かなかった上にどうも時間もバラバラだった。
まだデータも足りないけれど、とりあえず依頼人の話からして随分なマウントゴリラの素質があるようだ。これで試せばまた効果のバランスも分かるかもしれない。
早速渡したので観測しつつ記録しよう。
紅茶に混ぜる砂糖タイプ。我ながらこのタイプにしたのは、かなり良いと思う。なぜならマウント女はカフェでお茶と言う名のマウントタイムが欲しいからである。
あ、お茶しよーと言ったら最後、自分のことは棚に上げて上から目線でアドバイスしたり、挙句ズカズカと聞かれたくない事を、根掘り葉掘り聞いてきやがる。
加えて、えー普通さー、などと自分基準のどこまでも軽率でくだらない情報をベラベラと話す。
さらにはあの子はどうだ、とか、あの人はあれだからー、などと、お前は何様で、何を知ってそのように他人を貶める!と言いたくなるような事を言い、誰かが言ってたから、と他人になすりつけて我が身の真っ黒な心を白布で隠すのだ。
だから、、おっと話が脱線した。だが本当に今の会話と同様にカフェに入ったなぁ。薬を入れたいからか、依頼人が会話の中心に見える。
あ!トイレに行った隙にポットに入れた!!
だがなぁ、そのポット、依頼人も飲むんじゃないか?そのポットから2人それぞれのカップに注がれるじゃないか。まあいい、2人分のデータが取れる。それに、マウントしない方は効かないかもしれないからなぁ。
あ、両方とも?いや、ターゲットのマウント女は一瞬で治ったぞ?
依頼人がゴリラになった。
しかも暴れてる。机ひっくり返すし、これは逃げた方がいいかな?マウント女って言われてたターゲット、心配してるし、止めに入るなんて優しい方じゃない?普通マウント女って逃げるんだけどな。
んー、あ、ゴリラ逃げた。持続時間調べるためにも追いかけなきゃかなぁ。
このままだとうちの研究室行きそうだしなぁ。研究室ついたタイミングで麻酔銃で眠らすか。
実験結果
依頼人がゴリラになり、持続時間は最長の72時間になった。
後日、ターゲットの女性に接近し、脳を調べるとマウントする要素はなかった。
ただ、依頼人より自己幸福度が高く、マウントをされてもむしろマウントした側が惨めになるタイプの人間であると判明。
持続時間も、服用した時のマウントしたい気持ちが現れると分かった。
とはいえ、随分皮肉で可哀想な結果ともいえよう。
次は、自己幸福度の高い人が一時的に惨めな気持ちになる薬を頼まれてしまった。
この天才である私の服装にダメ出しをしたことで、悪いがもう一度依頼人には暫くゴリラになってもらおうと思った。
つまるよ。 藤乃まか @fujinomaka
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