#4 少女は堕ちる <Ⅰ期 眷属期>
ここは…学園の寮の自室だ。
薄暗いということは時刻は夜なのだろう。
二人部屋なのでもう一人この部屋に住人がいて、それは私の親友だ。
その親友は私を背に着替えているところで下着姿で立っている。
その体が月明かりで照らされている。
その姿に私の胸は高鳴った。
彼女の白くてきれいな首筋。そこにうっすらと浮かぶ血管。
私は衝動を抑えきれなかった。
背後から静かに近づき、肩を掴んでその首筋に牙を
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「はっ…。」ルナが目を覚ます。
視界には昨日と同じ豪華なベッドの天井。
「…また悪夢を見ちゃうなんて…。」ルナは落ち込みながら起きようとして頭を横に向ける。
すると目の前に顔があった。すごくニコニコとした笑顔を浮かべながら頬を手で支えて。
「うわぁ!」ルナはその目の前に顔があったこと、そしてその距離が異様に近かったことにびっくりした。
「えへへ~♪おはよう。ルナおねえちゃん。」
その顔の正体はリムだった。
「ふぅ…。びっくりしたー…。」
「なんでそんなにびっくりするの?」
「そりゃ起きて目の前に顔があったら誰だってびっくりするよ …。」
ルナは朝から驚いてばかりだなと思いながらそう答えた。
「いつからそこにいたの?」とルナ。
「昨日からずっとだよー。」とリム。
吸血鬼であるリムは本来夜に起きて朝に寝る。当然のことだが夜中ずっと起きていても全く不思議ではない。
「ルナおねえちゃんの寝顔ばっちり見てたよ~。すごくかわいかった!」とリムはニコニコしながら感想を述べた。
「っ~~~~~~~!///」ルナは寝顔を見られて恥ずかしいと赤面してしまった。
「あはは♪ルナおねえちゃん顔どころか耳まで真っ赤だよ?」
今日はこのように朝が始まった。
例によって朝食の時間になり、リムはワイングラスを持ってきた。
「ルナおねえちゃん。人間から直接血液を吸わない?こっちの方が新鮮だしおいしいよ?」とリムが言ってきた。
「何言ってるの?私はまだ人間なんだからそういうことするわけないでしょ!」とルナは抵抗感をあらわにする。
「(まだ…ってことは内心受け入れ始めてるのかな?)」とリムは順調にルナが変わっていることを確認しながら血液が注がれているワイングラスをルナに渡す。
ルナはそれを一気に飲み干し、朝食が終わった。
朝食が終わり、リムは直接吸血をしに行くと言って部屋を出て行った。
ルナは自分の残り時間について考えていた。
「今日で4日目…吸血されて3日かぁ…。あとどのぐらい人間でいられるんだろう?でも吸血鬼に変わるまでってかなり時間がかかると思うから変わる前にみんなが助けに来てくれるはずだよね!そろそろみんなも遠征から帰る頃だし、もうちょっと頑張っていたらきっと大丈夫なはず!」そうルナは自分に言い聞かせる。
しかし、ルナは知らない。自分の見通しが甘かったことに。ルナが決定的に変わってしまうまで、つまり人間でいられる時間がわずかしか残っていないことに。
以前リムに説明を受けていたがルナは捕まった時点での月齢を知らなかったし、気にしたことすらなかった。満月のときに魔物などが凶暴化するから注意するようにという知識はあったが、満月かどうかの確認しかしてこなかった。
昨日の時点での月齢は13。ということは残った時間は48時間を切っている。
ルナはその事実に気付くことはない。ましてや窓のないこの部屋で月を見ることすら叶わない。その時は刻一刻と迫る。
今回はなぜか時間が早く流れていくように感じる。
リムと話しているうちにすぐに昼食の時間になった。
昼食が終わり、お風呂へ行くことにして再びリムと一緒に入った。
お風呂ではやはりお互いに体を洗い、リムがルナの胸を揉むという先日と同じパターンが繰り返された。
部屋に戻ったルナ。リムは少し用事があるようで少しだけそちらを済ませるといって部屋から出て行った。
部屋に一人残されたルナ。そう言えば今日は姿見に前に立って自分の姿を確認していない。
そう思ってルナは姿見の前に立ち、自分の姿を確認する。
やはり首筋の傷以外は何も変わっていない。
そう思った時だった。姿見に映っていたルナの姿がわずかにぶれた。
その次の瞬間姿見に映っていたのは漆黒のドレスに身を包む少女の姿だった。
雰囲気はまったく違うものの、顔はルナにそっくりだった。
「!?」ルナはびっくりしてもう一度姿見を見るが映っていたのは自分の姿だった。
「(なんだったんだろう…?今の…。)」
そこにリムが現れ、思考は中断した。
「顔…怖いよ?何かあった?」とリムに聞かれるが
「いや、何にもないよ。」そう言ってルナはごまかした。
そのほかは何事もなく時間が流れる。
ほどなくして夜になり夕食の時間になる。
「はーい。ルナおねえちゃん。夕食だよー。」そう言っていつものようにワイングラスを持ってくるリム。
ルナはそのワイングラスを受け取り一気に中身を呷る。
「いい飲みっぷりだね!おかわりはいるかな?」
「いらない。」
普通ならここで夕食が終わるはずだったのだが、今回は違った。
リムは血液入りの紅茶と血液入りのクッキーをもってきていた。
「これおいしかったでしょ?だから今日食後のデザートにどうかなって持ってきたの。」
そう言って用意をするリム。
「リムはご飯食べてないでしょ。自分が食べたいだけじゃない…。」
「えへへ。ばれちゃった?でも一人で食べるより二人で食べたほうがおいしいからね。」
そうしてルナとリムは紅茶とクッキーを楽しむ。
ルナにとっては最後の晩餐となるが彼女はそんなこと知る由もない。
そうして時間が経ち、ポットの中にあったお茶とクッキーがなくなり、事実上の最後の晩餐はお開きとなった。
「さて、今日はもう寝ようかな…。お休み。ルナおねえちゃん。」
そう言って部屋を出ようとするリム。
「えっ。ちょっと待って。今日は吸血しないの?」ルナはリムを呼び止める。
「んー…。いや吸ってもいいんだけど、嫌がってたみたいだし今日はやめようかなーって思ってね。もし吸ってほしいっておねだりしてくれたら吸ってあげてもいいよ?」
そうリムは言ってきた。
「そ、そんなわけ…。」ルナは否定するが
「(なに?この寂しさというか物足りなさ…。まさか私…吸血してほしいって思ってる…?)」そんな考えが頭のなかで膨らんでいく。
「そっか~。残念…。それじゃあ、お休み。ルナおねえちゃん。」
リムが再び部屋を出ようとする。その時
「吸ってほしい…。」とルナが小さな声でお願いする。
リムはその声を聞き逃さなかった。
「ん~?いまよく聞こえなかったな~。もっとはっきり大きな声で言ってみて?」
リムは小悪魔スマイルでルナに促す。
「リム。私を吸ってぇ!吸血して欲しいのぉ!」
ついにルナは禁断の言葉を言ってしまった。
「うん!じゃあお望み通りたっぷり吸ってあげるから覚悟してね?」
リムはルナにとびかかり、容赦なく首筋に牙を突き立てた。
「んはぁぁぁ!んふぅ…。ぁん…///」恍惚に浸るルナ。
その目にはハートが浮かんでいた。
「リム様…。もっとぉ…。もっと吸ってぇ…。」ルナは懇願し、リムはそれにこたえるように吸う力を強めて音を立てて血液を吸っていく。
それにまた快感を感じて大きく喘ぎ声を上げるルナ。
そうしてルナは血液を死の寸前まで吸われ、意識を失った。
ルナは完全にリムの手に堕ちた。
ルナのクラスのみんなが学園に帰ってきたのはこの直後。ルナが堕ち、残り時間が24時間を切ったところである。
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