第2話 帰りたいと思う場所
職場にいる時は常に家に帰りたいって思うけど、自宅に帰ったら帰ったで家に帰りたいと思ってしまう。
けれど友達と遊んでいる時や一人で出かけている時は特にそう思う事なく、むしろ帰りたくないなぁなんてなる。
両親からの干渉はなんというか微妙なもので、変に突き放している時もあれば鬱陶しいくらいに干渉してくる時がある。多分ある意味では自分の思い通りにしたいのではないだろうかなんて、そう考えてしまうのだ。
「幾つになっても精神は迷子ってやつなのかなぁ」
「いい年して思春期かよと言ってやりたいけど、自分も同様だから何とも言えねぇ……」
「言ってる言ってる、口に出してる」
「……ここ奢るから勘弁してくれる?」
喫茶店の窓際の席、その向かいに座る佐藤
「別にいいよ、奢らなくったって」
「美奈、奢られるの苦手だもんな」
「うん、対等って気がしないし奢られて当たり前ーなんていうのも嫌だから」
「そういうところは好きだぜ?」
「十一って性別関係なしに言うよね、そういうの」
「良い言葉は伝えたいじゃん」
「相変わらずな事で」
そう言いながらティーカップを手にしミルクティーを飲む。普段は飲まないけれど缶とこの喫茶店のミルクティーは別だ。
「相変わらずだよ、俺は」
「変わらないよね、本当」
くっついて離れて互いに暫くの間放置し合って、その結果週一で顔を合わせて近況報告をする程度の関係。私達はそういう程度で良いのだ、その程度が丁度良い。
「……帰りたい場所って、自室なのかなぁ」
「一人の空間が欲しいってとこ?」
ぽつりと呟いた言葉に対して十一は苦笑をしてそう返す。
「そうなのかもしれない」
「若しくは家を出たいとか?」
「実家暮らしだとある意味では気が楽なんだけどねぇ」
「ま、お前ん家って結婚とか急かす事ないもんなー」
「まあね、そこが救いよ」
「だよなぁ、そこは素直に羨ましい」
「相変わらずうるさいの?」
「そ、兄貴が結婚してるから良いと思ってたのに。一人の方が気楽なんだよなぁ」
独りは嫌、でもたまに一人が良い。そういう我儘を抱えている人間は、一体どこに帰れるというのだろう。
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