作品感想

象雁

ヴァイスシティ(SW2.5シナリオ型サプリ)の感想。評価4/5。

まず最初に断わりをいれます。


ヴァイスシティというSW2.5(TRPG)のシナリオ型サプリメントをプレイした個人的な感想を書いた記事です。


今作の前身にあたるSW2.0のゲームブック型キャンペーンシナリオシリーズは一通りプレイしています。


好きなタイトルはミストキャッスル(評価4~5)で、それ以外のタイトルはそれなりには楽しめた(評価3)という評価です。


基本的なプレイスタイルとしてはソロ(一人)プレイですので、一般的なTRPGプレイヤーの方の参考にはあまりならないかもしれません(いや、そもそも他人の感想など何の参考にもならないのかもしれない)。

あと若干のネタバレがあります。気になる方はご注意を。


わりと長い感想になりましたが、最後に3行でまとめてあります。


以上を踏まえて今作をクリアしたときに初めて抱いた感想を書きます。


それは”普通に楽しめた”でした。


長々と注意書きを書いた上で感想が普通かよという話ですが、今回の長い感想を自分に書かせた理由がまさにそれでした。

今作を自分は普通に楽しめましたが”普通”なので普段なら評価を4か3で悩みつつも、3とするところです。

しかし考えた結果、個人的な評価としては4としました。


何故3ではなく4にしたのか。

それはゲームブックとしてではなく、TRPGのサプリメントとして見たとき3という評価は妥当ではないと感じたからです。

今作はランダム要素も含め、豊富で濃い、ロケーション・シチュエーション・設定・システムが用意され、イベントが発生すればその次のイベントやゲームを通しての目的にしっかりと誘導されスムーズに楽しめます。


ではゲームとしてプレイを楽しめたのに自分が普通だと思ったのは何故か、それは結論から言うと僕が今作に感情を強く揺さぶられなかったからでしょう。


少し曖昧なので具体的な原因を書きますが恐らく理由として2つあります。

一つはキャラが弱いこと、そしてもう一つの理由はマイルドだから。


何故キャラが弱いと感じたのか。

今作全体としてみるとイベント数は豊富です。

しかし主要級のキャラも多く、イベントもキャラ主体でないイベントもやはり多いこともあって、結果としてキャラの掘り下げが足りていません。

だからキャラ設定自体はわりと濃いものがあってもキャラ立ちが弱いと感じるのでしょう。

個人的には「普段は他人を家畜扱いしている強面美形年齢不詳貴族エルフ但し姫に感極まりつつひれ伏す」チェザーリくらいのキャラ立ちが他のキャラにも欲しかったところです。

とくに導入で目的とされるカリン(ヒロイン枠)や同じくゲームを通じて目的となりうるラピュサリス、それからチェザーリと一緒に表紙に出ているユイニーのキャラの薄さは考えものだと思います。

そもそも舞台となる街を支配する4人(チェザーリ、ユイニー、テレサ、ナグーザーバラ)と紹介されて、設定もそれなりに濃いもの(チェザーリとユイニーの名門貴族同士の対立、新興勢力テレサ、蛮族ナグーザーバラ等々)が用意されているのに、目立つのはチェザーリくらい(次点テレサ)なのもどうなのかなと思います。

もういっそカリン、ラピュサリス、ユイニー、テレサ、ナグーザーバラは足して2で割るくらいで丁度いいのではと思ったほどです。


ですが、そこがちょっと待てよとなったところです。

確かに独立する一つの物語として見るとキャラの描写が弱いの一言なのですがこれはTRPGの拡張(サプリメント)です。

TRPG的にみれば魅力的な設定と最低限のイベントがあれば大層な描写などいらず、その隙間の話を自由に膨らませ(エピソードを自分たちが作)ることができるという意味ではむしろアリなのではないかと。

カリンやユイニーもSW2.5で追加されたシステムであるフェロー(プレイヤーが簡易に操作できるNPC)が用意されていますので、そこでプレイヤーが活躍させうる前提で用意されたキャラなのでしょう。


その調子で2つめのマイルドであるというところも必ずしも減点対象にならないのではないかと感じました。

このサプリメントはSW2.5初めてのゲームブック型サプリメントであり、3分冊されたSW2.5基本ルールブックのうちの1冊目だけでも今作のほぼ全ての要素を楽しめることからみても主な対象者としては恐らく初めてSW2.5やTRPGのキャンペーンシナリオをプレイする人間だと思います。(ちなみに前述のミストキャッスルでは基本ルールブック3冊のうち1冊だけではどうしても倒せない敵がかなりの数いました)

世界観を歪めるほどの強烈なイベントをいれたり、難易度を高くしすぎたりするのは、感情をゆさぶるかもしれないが、確実にプレイし難くなります。

だからこそ、ゲーム内で複雑にフラグが立ちつつもイベントに対する誘導も多く、また難易度的な面においても難しすぎず優しすぎずかつ救済処置的なイベントもあるというマイルドな調整になっているのかなと。


以上、すこし長くなりましたが今作の感想となります。


作品の内容とは直接関係しませんが、面白さとはいったい何なのかと個人的に久々に考えされられた作品でした。


3行にまとめると、

ゲームプレイとシステムと設定が楽しかったです。

ゲームブックとしてみると難易度・キャラ・シナリオはマイルドですが、そうであるが故にTRPGのサプリメントとして見ると程良い拡張性を感じました。

次回作も期待してます。

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作品感想 象雁 @zougan

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