六 トヨタ C-HR
到着までに時間がかかってしまい夜の帳が下り始めている。
もう少し暖かい時期ならば愛車のFIATで来たのだが、郡山市からつくば市まで行くとなると道が悪い可能性がある。それに依頼主の息子も乗せるとなると安全性を重視しなければならない。
まぁ、この仕事でボクの役割はマネジメントと運転手だからな。
一番厄介なカルトに入信した家族を連れ出すのは鬼多見悠輝の仕事だ。揉めごとが起こるのもその時だから面倒はすべて彼が引き受けてくれる、いや引き受けざる得ないのだ。
半分ボランティアみたいな仕事なので収入は余り期待できないが、それでも天城は最優先でこの仕事をしている。
まぁ、親父の
彼女の父はアークソサエティから信者を脱会させる手助けをしていて殺された。そしてアークは鬼多見一家によって事実上壊滅させられた。
もう一年半か……
一昨年の事件に思いを馳せているとバックミラーの中に、薄闇を
今回の仕事も完了だ。
鬼多見が大暴れをして智羅教信者を大量に傷つけたり、教団施設を破壊し尽くしてなければだが。
予想より早く戻って来たから大して揉めてはいないはずだ。
鬼多見が後部座席のドアを開けて輔を先に中に入れる。
「うまく行ったみたいだね」
「いや、ダメだった。直ぐに出してくれ」
鬼多見は真顔のまま輔に続いて後部座席に乗り込んだ。
天城は彼に言われた通り速やかにC-HRを発進させる。
バックミラーで確認しても智羅教の信者が追ってくる気配はない。
それよりも……
林輔の様子が妙に気になる。両親に再会するのが嫌なのか、それとも教団に戻りたいのか、うつむいたままだ。ただその顔が一見無表情だが見ようによっては薄ら笑いを浮かべているような、何とも言えない不気味さを感じる。
まったく、鬼多見と付き合っていると退屈するヒマがないな。
思わず溜息が出た。
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