第15話 頑張る方針



 しかし……。


(でかいなぁ)


 改めて近くみあげる竜種は、そんじょそこらにいる大型動物とは比べ物にならない体格だった。

 あんな化物と渡り合っているイリアはもう、人間止めてもいいんじゃないかと思うが、友人を気遣ってそんな化物に挑もうとしているこちらもどうにかしてる。


「イリア! どう?」

「うーん、頑張れば何とかなるよ!」


 頑張った程度で何とかなるそうだ。


「そっか、じゃあ頑張らないとね」

「オッケー」


 我ながら馬鹿みたいな会話だと思うが、クロードは一連の会話にいちいち聞き返したりしない。


 野生の勘とでもいえばいいのか、イリアには本能の部分で敵いそうな相手と敵わなさそうな相手の区別がつくからだ。


 そのおかげで、お人よしで年がら年中他人の事情に首を突っ込んでいるイリアでも、どうにか今までやってこられたというわけだ。


「背後から回り込む!」

「よろしくね!」


 スケールこそ違えども、自分達の背丈よりも大きな動物とは何度もやりあっている。

 クロードは慣れた動作で回り込み、本格的にイリアの手助けをこなしていく。


「僕の存在も忘れるなよ!」


 ドラゴニクスを銃弾で穿つ。

 改造に次ぐ改造によって貫通力を増した銃弾は、竜種の固い体表ですらやすやすと貫いていった。


 鉛玉が抉った傷口から血があふれ出していく。


「今まで格下に傷を負わされた事ないんだろ、なら僕達がその初めてになてやるよ!」


 煽りながらも、相手に連続で攻撃。

 人間の言語を理解する能力はないだろうが、生物の感情を読み取るくらいの能力は備わっている。


 こちらが舐めているのだと、余裕でいるのだと示してやれば、相手は簡単に冷静さを失った。


 もちろん迂闊な知り合いとは違うので、ドラゴニクスの攻撃がこの場から離れていった少女を巻き添えにしないように心掛けながらになるが。


 そう気にしていれば、竜がへし折った木を凶悪な形相で口にくわえ投げ飛ばそうとした。


 背後にいる少女に当たるかもと思い、その手の爪を打ち砕いた。

 人間のそれよりは大きいので狙うのが楽だ。


 もっとも狙わなくとも辺りはするが、加護に甘えたりはしない。

 割れた爪からの衝撃を受けて、一瞬後野太い生物の絶叫が上がった。


「ごめんね、でもこっちも必死でやらないと勝てないから」


 その痛みに呻く竜の姿に、一瞬だけ怯むイリア。


 だが、彼女は武器を降ろしはしなかった。


「おりゃあぁぁぁ、どんどんいっくよ!」


 ヘタしたら命を落としかねない状況だと言うのに、彼女は前に出る事を止めない。

 イリアは遺贈しようとしたドラゴ二クスの足をすくって、転倒させた。


 そして、土塊を巻き上げて巨体が倒れ込んだ隙を見逃さず、そこに猛烈な追撃を与えていく。


「ほら、ほら、ほら!」

「ノリ良いな、ほんと……」


 今日の彼女は絶好調だ。

 普段よりも調子が良いらしい。


 勢いづいた彼女を止められるのは、そうそういないだろう。

 見る間に敵をボコボコにしていくイリアの動きに会わせて、クロードは申し訳程度の援護攻撃をこなす。


 ほどなくして、ドラゴニクスはダウン。

 倒れた敵を前にして戦闘が終了した。


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