第14話 危ないよ
前方でちょこまかと動き回りつつ、隙を見て根で一撃を入れていくイリアを見て適切な指示をしながらも、クロードは離れた所でへたれこんでいる少女へと駆け寄った。
「大丈夫、立てる?」
「あ……」
動けなくなるような致命的な攻撃は受けてはいないようだ。
傷だらけだったが、それらの傷からは新しい血は流れていない。
ほとんどのものが塞がっていた。
見えている負傷のほとんどは、おそらく昨夜作ったものなのだろう。
だが、それもクロード達の発見が遅れていたらどうなっていたか分からないが。
「はい、立てます」
唐突な助太刀に放心していたらしい少女は、しっかりと己の足で立ち上がって見せた。
疲労してはいるが、最低限移動するだけの体力は残されている様だ。
「君、一体なんでこんな所にいたの? というか、昨日コンサート会場にいた子だよね」
「……」
気になった事を問いかけてみるのだが、答えは返ってこない。
少女は視線をさまよわせて、俯くのみ。
話せる事がない、というよりは話しても良いのか迷っている……という感じだった。
「まあ、良いけどね。そういうのも含めてもう、慣れちゃったし」
事情を教えてもらえない程度でへこたれてなどいられない。
イリアと一緒にいたら、最後まで何に巻き込まれてるのか分からなかったなんて事もたまにあるからだ。
かなり問題だろうけれど。
「イリアには、もうちょっとだけ慎重に、かつ大人しくしていてほしいんだけどなぁ」
それができないのがイリアという人間であるし、そんな彼女だったら逆に具合を心配してしまうのがクロードだ。諦めるしかない。……と、そうすっぱり考えられると言うのなら、今そんな事を考えたりはしないだろうが。
「とにかく、戦えないならちょっと離れてて。彼女、結構荒っぽい所があるから……」
と、前方で戦っているイリアを視線で示した直後、根で叩き割った木の枝が高速で飛んできた。
土塊をまきあげて、近く地面に突き刺さる。
「ね? 迂闊にうろちょろしてると、巻き込まれるよ」
こくこくこく、と真っ青な顔になった少女が頷いて、離れていく。
離れた所で、腰丈ほどありそうな意思を蹴飛ばしたり、昆で弾き飛ばしていたりする少女の絵。
対するのはコピーとはいえ、竜だ。
「そりゃぁぁぁ! てりゃゃあああ! どっこいしょー!」
可愛らしい掛け声が一つ上がるたびに、全く代わりらしくない飛散物達がビュンビュン吹っ飛んでいく。
(慣れたとはいえ、これはちょっとね……)
初見の人間には衝撃的な光景だろう。
背後の少女が十分なほど下がっていったのを確認して、クロードはその中へと飛び込んで行く。
視線の先にあるのは、一般人から見れば、この世のものとは思えなさそうな光景だった。
(ちょっと、躊躇うでしょ)
だが圧倒されている場合ではない。
飛散物体に当たらないように気を付けながら、森の木々を上手く遮蔽物として使いつつ接近。
イリアの背後数メートルまでやってきた。
何かあってもすぐにフォローできる位置だ。そこへクロードは陣取る。
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