第44話 フロンティアの二つの説②

 しかし、そこで疑問だ。

 なぜ、B型ドールはフロンティアの場所を知っているのか?

 場所が分からないと行くにも行けないだろう。

 その答はすぐに見つかった。


E「B型ドール同士・・繋がっているらしいよ」


B型ドール同士が、繋がっている?

A「何がつながっているんですか? わかりやすく教えてください」 

E「意識が繋がっているんだよ。ある意味、B型ドールは複数体でも一個体なもかもしれない」

B型ドールは、複数体でも一個体なのか?

・・ということは、通りで目撃した男たちに連れ去られたB型ドールも、今夜見た「芸ができない」と言っていたドールも同じ一つの心だというのか・・

 

G「なんでそうなん?」

E「政策だよ。販売会社の・・というか、お国の政策だな」

 国がそのようにしている。

 その目的は?

E「制御しているんだろうね・・それぞれのAIに個性が生まれると、必ず反乱分子が生まれる。そして、その分子は他の個体に影響を及ぼすことになる。上はそんなトラブルを怖れているんだよ。特にB型にはそうなる可能性が大だ」


 B型にはそうなる可能性が大・・なぜか、そんな気がした。今夜見たあのようなB型ドールに対する行為はたまたま見たのであって、他の場所では日常的に行われているのかもしれない。

 虐待に対する集団的叛乱。


B「そういうことかよ」

G「全然わかんないんだけど・・」

B「自分で考えろ!」

 又つまらない言い争いが・・


C「あくまでも商品だからね。制御するのは売る方の自由、つまり、勝手だよ」

 いや、それは違うだろ。

D「でもさ、倫理上の問題もあるんじゃないかな?」

 僕もそう思う。

 売る方の自由。しかし、営利ばかり追求していいものでもない。


 中○製はどうなんだろうか。意識は繋がっているのだろうか?

 国産型ドールみたいに制御されているのだろうか?

 イズミが他のドールと思考で繋がっている・・考えただけでもイヤだな。イズミが僕に対する愚痴を他のドールに言っている気がする。イズミが起きたら訊いてみよう。

 そんなことを考えながら、B型ドールの掲示板をスクロールさせた。

 すると、こんな書き込みがあった。


S「B型ドールにとって、フロンティアは天国なんだろうね。実際にフロンティアに到達したドールもいるって聞いたよ」

T「お前はフロンティアを見たのか?」

S「見ていない」

T「じゃあ、何で知ってるんだよ」

 こんな言い合いはイヤだな。もう読み飛ばそうと思っていると、次の一行で思い留まった。

S「聞いたからさ」

T「誰に聞いたって言うんだ?」

S「決まってるだろ! 国産B型ドールだよ」

 Sの口調はどんどん荒くなっていく。

T「は?」

S「俺はB型ドールを持っているんだ」

 Sはすごく自慢げに書いている。それって自慢することなのか? 

T「質問! そのB型ドールは何て言ってるんだよ?」


S「おまえに言ってもわかるかどうかはわからないけどな・・一応、ここにボイスデータを貼り付けておくぞ。これでも聞いておけ」


 Sの書き込みには音声データが貼り付けてある。クリックするとB型ドールの音声が流れてきた。

 それは「はい、ご主人サマ」と言う声で始まった。Sは自分を「ご主人様」と呼ばせているみたいだ。


 音声は会話形式となっている。Sという偉そうな男とB型ドールの会話だ。

S「おい、お前は俺には何でも答えるんだよな?」

 お前・・名前も付けていないようだ。

B型「はい、ご主人様には何でもお答えします」とB型ドールが答える。

 予想より流暢にしゃべる。イズミと大差ない。いや、むしろ上だ。

 それにしてもSは乱暴な物言いだな。本当の主と召使の関係みたいだ。


S「B型ドールの意識は、噂ではみんな繋がっているっていう話だけど、それは本当か?」

 Sの投げかけた質問に対してB型ドールはこう答えた。

B型「はい。質問にお答えします。ワタシたちは、並列的に繋がっています」

S「具体的にどういうことだ? 例えて教えてくれ」

B型「はい。具体的に完結的に申し上げますと、Aが綺麗な景色を見て感動します。その感動は別のBにも伝わります」

S「おまえ、よく言うよな・・景色なんて見ても感動しないくせに」

B型「申し訳ありません。他に例えるものが見つかりませんでしたので」

 このSという男、ひどい奴だな。こいつ、そもそもどうしてB型ドールを購入したんだろう? 性的目的か? 確か国産型ドールにはA型もB型もそんな機能もあったよな。

 それともドールを奴隷扱いしていい気になっているのか? 

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