テスト・テスト・テスト252

―どうやって、ここに?―


―例によってヒ・ミ・ツ♡―


 鶴聞の臨港部は京浜工業地帯にして倉庫街でもある。

 乱立した倉庫の中、ただ一棟にドンドンピシャリ。

 救助目的に来た一徹は、救助対象がいる倉庫に一発目から立ち入った。

 その方法が忠勝にはわからなかったが、一徹は悠然に笑ってそれきり。


―いって……―


―よう、トモカ。お久しカタブラ。と……それに……―


―せ、センパ……―


―うぃうぃ笑奈えみなちゃんCH。災難だったねどうも。多分ケンタ君、スゲェ心配してる―


 同じく囚えられたトモカと、二人が誘拐されたそもそもの原因たる10歳違う鶴聞高校の後輩の蝦夷笑奈えみしえみなも一徹に呼びかけるが、変わらず微笑む一徹は、そのまま人差し指を口元に当てた。


 異世界で永らく生きながらも、こちらの世界ではたった数日。

 会社の仕事ができず休職していた一徹が、バイトに出た先の結婚式場で出逢ったのは、歳下の男子バイト。笑奈は、その彼女でカップル二人ともに現役鶴聞高校生。


 若いときの一徹とトモカを想起させた。だから出来てしまった縁は、この展開を作ってしまったのだ。

 

―じゃ、拘束解いちゃおっか。まずは笑奈CH。次はトモカ。兄貴は最後だ。全員開放してから4人でこの場を……―


 柔らかな笑顔は、この異常な状況に震える蝦夷笑奈を落ち着かせ……


―一徹っ!?―


―っとぉ?―


 一人目蝦夷笑奈の後ろで手縛る戒めに手をかけようとしたところ。

 不意に少女と一徹の間に白閃が迸った。


 トモカの悲鳴に近い呼び掛け……よりも、一徹が気付くのは早かった。


 確かに力加えて自らと蝦夷笑奈とに間を作ったが、咄嗟の事にて突き飛ばすようなことはなかった。

 柔らかく、力強く押し出す。

 それは不意打ちであるはずなのに、不意打ちにもならない。

 一徹が不意打ちに意図的にさせない。


 先に気取って余裕を持って処理したところに、空を割いた軌跡生み出した何者かとは圧倒的な経験の差、ダンチに研ぎ澄まされた勘、戦闘力の開きがあることを気づく者は誰もいない。


―あぁ、うん……アンタけ? 三人を誘拐シャンハイングしてくれたのは―


 薙いだ元凶に一徹はフッと目をやった。

 だのに、変わらない。一徹は変わらず微笑のまま。


「……シャリエール、アルシオーネ、魅卯少女」


「わかってるよトリスクト」


「マズイんですよね?」


 一徹は視界に相手を収めながら、立ち位置を変える。

 攫われた三人を背に控えて立った。


 シャリエールがまずいといったのは当然だった。笑ってはいる……一方で、一徹が相手に向けるまなこは次第に濁っていく。

 静かな湖面。一見美しく透き通る水面が、水底の汚泥が巻き上がることで輝きを無くし、果ては水面が反射していた光さえ茶泥で飲んでいくような。


「……ねぇトリスクトさん。確か山本さんが初めてトリスクトさんの世界に飛ばされたのって、カラビエリさんの人違いからって話だったよね?」


「何か気づいたことが?」


 背に控えさせられているから記憶の中のトモカ、忠勝、そして笑奈は気付かないだろうが、ルーリィ初めとした一徹の大事な者達は、一徹の異変を察知した。


 魅卯も何かに気が付いた。


「この記憶が、私が10歳だった時代のものなら、既に自我を確立していた私は、確かにあの男の顔を見たことがある。そしてそれは……」


 だがアプローチルートが違った。


「あらゆる場所に貼られていた。指名手配犯として」


 そういうこと。自身の記憶に存在する指名手配犯。顔写真は指名手配書で何度だって10歳の頃の魅卯は見てきた。

 覚えている顔、覚えている名。


―……でぇ? アンタは一体、何なのかな?―


 そしてその対象は、一徹が身代わりとして異世界に跳んだ、本来は一徹の代わりに転移するはずだった事を今の魅卯は知っていた。


―ふ……フヘェ……フヘヘェ……フヘヘへェ―


 ぼぅっと、能面のような白い顔。表情。

 口角は上がらないし目尻も下がっていない……のに、新たな人影が漏らすは確かに笑い声だった。


―楽しい。楽しみ。女が二人。男も二人。楽しく、長く、遊べる―


 ポツポツ、フヘヘェ混じりに零す存在に、瞳曇らせた一徹は「へぇ?」と嘆息した。


 ボロボロの、漂流者エグザイルのような伸び放題の髪、髭。

 焦げ茶で統一されたカーゴパンツにシャツに黒いジャケット。

 ジャケットのサイズは、体系に比べ少し大きい。


 焦点の合わない逝った目は一徹を捉えないが、顔が向いているからには認識をしているはずだ。


―あらま、コーイツ……ってんねぇ―


 次第に一徹も、張り付いたような笑みを興味有りげなものに変えていく。

 

 見た目以上に一徹が惹かれたのは、猫背で直立不動の男が、だらりと下げた両手に握ったナイフ。煌めきが、異常なのだ。


―道具へのこだわりが過ぎる。殺しに特化しちゃってまぁ―

 

 外見、自身の清潔感などかなぐり捨てていた。ただただ殺しの粋を極めたい。そんな様が見て取れた。


―て、徹……逃げろ―


―あん? どったのぉ兄さん?―


―女子高生とトモカちゃんだけ連れて逃げろ! コイツはヤバい! ヤバすぎるっ!?―


―兄さんは?―


―俺のことなどどうでもいいから! 仕事柄ぁ、とっくに覚悟は出来てる!―


rightゥラァーイト(だよねぇ)―


 合わない焦点に視線を合わせるよう真っ向から相手の目を眺めながら一徹は、抑揚無しに忠勝の忠告に返した。


―何を落ち着いて……凶悪犯罪者なんだぞ! 殺した数だって、もう十人は越えてる―


―ホッホ、有名人じゃな……―


山餅魔鎖鬼やまもちまさきっ!―


―……えっ?―


 が、流石にその名を耳にしては……


「表情が崩れた」


「届いちゃった」


「想像したくありませんね。これ……荒れますよ?」


「問題はどれだけ凄惨になるか……だけどよ。トモカから聞いた感じじゃそこまででも無かったんだろトリスクト?」


「どうかな、詳細までは……話してくれなかったから」


―い、今なんて?―


―奴こそ山餅魔鎖鬼っ! 警察でも長い事追っていた快楽殺人者! 重要指名手配犯だっ!―


 恐らく、知っていたのは忠勝だけだった。

 名を聞いて一徹は唖然とした。トモカと蝦夷笑奈はまた別だ。

 絶句。悲壮。愕然。自らの死、それも凄惨で想像を絶する苦しみを与えられるのだと想像に難くない。ここで……終わるのだと。


―そっか……そうか……コイツが……山餅魔鎖鬼……―


 感情の抜けた顔で、一徹は零す。天井を見上げた。数秒間だ。やがて地面に俯いた。やはり数秒。

 

 まさか取り違えられた自身が、身代わりの元となった相手と出逢うことになるとは露とも思わなかっ……


―はっひはぁっ―


 そんな打ちのめされたような、黙り固まってしまった一徹の隙を、連続殺人鬼が見逃すはずがなく。


―ぱぎゃぁっ!?―


 ……だが……


―あ、ゴメン―


 そんな、いくら隙だらけだからと言って、これまで無防備な相手ばかりを傷つけ殺してきたような輩が……互いに認識し「殺してやる」と妄執ぶつけあった実殺し合いを数えきれないほど潜り抜けた一徹の不意を突けるはずがない。


 この場所に訪れた武器の携行ナシな一徹を、山餅魔鎖鬼は「隙だらけ」と見込み、うかつにも考えなしに突っ込んでしまった。


 果たしてそれは本当に《武器の携行ナシ無防備》だったのかどうか。


 一徹にとって、警戒するにも値しない相手ならそれは無防備ではない。《武装不要での制圧可能無手》だというに。


 あまりに一徹は実戦を繰り返しすぎた。

 意識を山餅魔鎖鬼に向けずとも、相手がどういう動きでどんな一挙手一投足で間合いを詰め凶手繰り出そうが、戦闘染みついた一徹の肉体は、無意識的にも最適解の反応をしてしまうのだ。

 

 山餅が想定していたはずの一徹とのゼロ距離のタイミング。一徹が素振りなくノーモーションで一歩前に踏み出したことでズラされる。

 想定したタイミングで同時に繰り出すはずだったはずのナイフの一刃は、繰り出される前に一徹の左手の動きで軌道を変えられていた。


 そうして、右掌底によるカウンター。


 一徹に向かって走ることによる、スピードと体重乗った対一徹ベクトルの力よ。

 そこに一徹が山餅に向け一歩動いたスピードと体重……さらに右掌底の突きのスピードと腕力が上乗せされ返された。


 推して知りたくもない。山餅が後ろに大きく弾き飛ばされるところに、顔面、鼻っ柱への衝撃力のほどを見た気がした。


―にしても山餅魔鎖鬼……山餅魔鎖鬼……ねぇ?―


 弾き飛ばされた山餅魔鎖鬼は転がった状態から身を起こし、片膝立ちの体勢で一徹を見上げた。

 驚きは表情からはあまり見えないが、何かこれまで見たことがないような釈然としない貌。


 一徹と言えばそんな山餅から意識を外す。腕を組み、右手指を顎の下に持ってユックリ歩き始めた。

 山餅への意識こそ外してはいるが、感慨深げにその名を何度もつぶやいた。

 

 そうしてほどなく、近場の作業台に放置されたレンチを見つけて・・・・・・・・取り上げる・・・・・


―フゥム……山餅……魔鎖鬼ぃ?―


 壊れた音声再生器の様に名を何度もそらんじながら、レンチを左手に握ってはキョロキョロ周囲を見回した。


「ッツ……」


 この記憶を眺める四人のうち、誰がいま声をひり上げたかは分からない。

 ただ、声を耳にした瞬間だ。

 一徹を巡って争っているはずのルーリィ、魅卯、シャリエールの三人。ここにアルシオーネを含めた計四人は、知らずの内に隣に立つ者の手をキュッと握った。


―あぁっ、あったあったぁ。コイツぁ重畳っ♪―

 

 いまの雰囲気からこの後どうなってしまうのか、彼女たちにはある程度分かってしまうから。


 対して記憶の中の登場人物たちは可哀想だ。

 一徹以外、山餅魔鎖鬼含め誘拐された3人全員、おかしすぎる空気感に困惑していた。


 すなわち、凶悪快楽殺人者を前にして、おくびも揺れない山本一徹の立ち振る舞いについて。


―この世界じゃ、この国じゃ、一見斧なんざ簡単に手に入れられないもんとも思われる。存外、こういった場所にゃあったりするもんなのよねぇ。それがね……?―


 壁に埋め込まれたタイプのガラス製箱を見つけた一徹はニヤァと歯を見せる。肘鉄一撃、ガラス箱を破ると右手を差しいれた。


防火斧・・・。火災が起きた時、避難のためにドアや窓を叩き壊す為の備えさ―


 抜いた右手には、確かな片手斧防火斧が握られているではないか。


「か、完成しちまった。山本流斧刃術モードB面、《大顎おおあぎと》……」


 呆然とアルシオーネが呟いた通りなのだ。

 大戦斧が斧刃術A面だとするなら、B面での一徹は常に左手に大ぶりのナイフ、右手には片手斧だった。


 二分だ。この装備を入手するのに約二分。愚かにも山餅魔鎖鬼はそれだけの猶予を一徹に与えてしまった。

 愚かなのか。はたまた……予想を大きく裏切る一徹の突然の反撃に呆気に取られてしまったゆえか。


「終わった。餅だか何だか知らねぇが、《鬼に金棒》ならオークにゃ戦斧なんだ。そしてこのハイエンデオークを鍛えた師匠ってことなら……」


「オークに斧。一徹にも斧・・・・・……だね?」


「だから私は、三縞校初日の《拝受ウケの儀》で一徹様の《銀色マンジュウ》に大戦斧に擬態して欲しくは無かった」


「……あっ」


 光景を見てそれぞれ宣う少女らと教官のセリフ。魅卯は思いだしてしまう。


 三縞校編入初日、一徹と銀色マンジュウの初めての出会い。

 シャリエールから手渡された一徹の《千変の神鋼銀色マンジュウ》は、最初すぐに武具に変態しなかった。


千変の神鋼マスキュリスは所有者にとって一番向いている戦闘形態に即した形態へと変態する。そういう事だったんだ」


 その前に一瞬だけ人型になった。一徹に反応して変態し始めたが、輪郭まで浮き出ることはなかったから誰に変態しようとしたのか分からなかった。


「山本君にとって一番戦闘に特化した形はそもそもが武器じゃなかった。《記憶を無くした後山本君》じゃない。《記憶を無くす前山本さん》だった。その姿を見せることで記憶を取りもどさせないようにトリスクトさん達は動いて……」


 ほどなく、《銀色マンジュウ》は大戦斧に姿を変えた。


「《一番得意な武器得手》に変わった。それが斧。そっか。あの初日の出来事は、異世界での8年間の真実が凝縮していたんだ」


―な、何やっている徹! 両手に握りこんでっ闘うヤるつもりかっ!?―


―んっ? う~ん……んふぅっ♡ うん、殺すヤるつもりだよ?―


 本来、この二分の中一徹に理解追い付かず山餅魔鎖鬼が動けずとも、せめて忠勝、トモカ、笑奈の誰か、もしくは全員殺してしまえばよかったのだ。

 いや、殺すことはせずとも人質にしてしまえば山餅魔鎖鬼にとって良かったのに。


お待たせお・ま・たぁ~?―


 両手に獲物を握りこんだ一徹は、とうとうなんの障害も妨害もなく、3人の元に戻ってきてしまった。数分前と同じく、山餅魔鎖鬼と対峙する形となった。


―徹っ、辞めろ! 考え直せ! アイツは……―


「長官、必死かよ。そりゃそうだよな。誰も実の家族が凶悪犯と対峙して心安らぐわけがねぇ」


「……違いますよグレンバルドお嬢様」


「っ、ち、違う?」


「トリスクト様?」


「私も貴女の見立ての通りだよシャリエール。恐らくお義兄様はいま、猛烈な胸騒ぎを感じているんだ」


「もちろん弟の山本さんが目の前で山餅魔鎖鬼に殺されてしまったらって怖さもあるけど。もし……最近の変貌ぶり凄まじい弟が、連続快楽殺人犯と渡り合えてしまったらってことだよね」


「そう。お義兄様は聡いお方だから。悪い虫が自分の中で鳴いているのを感じている」


 両脚、両手を拘束され、床にて身をよじるしか出来ない若き日の忠勝。体力お構いなしの大声で一徹に呼びかける。


―変な考えは捨てろっ!―


 大声というか絶叫だった。


―お前なんかが立ち向かっても相手にならない!―


 絶叫というからには喉に悪い。


―山餅魔鎖鬼は元自衛官なんだぞ!?―


―あーはは。らしいらっすぃねぇ―


 声も呼びかけ重ねるごとに枯れていった。だのに、一徹は左の耳から右の耳へだ。


―殺す相手に男も女もない! 若いも老いも関係ない! 普通じゃ考えも及ばない残酷極まりない手口っ! 奴は……お前の常識なんかじゃ測れない……サイコパスサイコ野郎なんだぞっ!?―


 だから忠勝は一徹の恐怖を煽った。無謀に立ち向かうこと無いように。サイコパスなんて強い言葉も飛ばして見せた。


 ……シャリ……ィィィンと、最大級の警告を忠勝がぶつけてすぐに落ちた静寂の中、小さく鳴った。

 その音は、どんどん大きくなっていく。


―なぁ兄さん、サイコパスイコール悪みたいなこと言っちゃあ世のサイコパス様に失礼だ。無意識的な思い込みアンコンシャスバイアスにも等しい。サイコなんざ一般人と比べ考えや行動が偏ってコミュニケーションに支障ある障害ってだけじゃないか―


 あぁ、忠勝の叫びも願いも、一徹には届かない。


―《》って漢字と同じじゃん? 白魔法や黒魔法って言葉があるなら、《》は力の一種であって《》・即・悪ってわけでもないんだぜ?―


―お前……一体何を言っているんだ―


「「一徹様/師匠……」」


―まぁでもぉ? 奴がヤバいばいやーって言いたいことだけは分かった。ただチョ~ット、試したいことがあるんだよね―


 ここまで言っても、一徹の朗らかな笑みは変わらない・・・・・

 

―サイコパスは、生まれつき先天的頭がオカシイ逝っちゃってるとかよく言うじゃない。だから悪いことや暴力、殺しに傾倒したサイコは確かにヤバいんだろ。黒は、黒だから。でもほら、○○なんちゃらパスってもう一個対比であるじゃない?―


 シャリィンとの音は、ギャインッとの金属カネ弾ける衝撃音に変わっていく。何度も何度も。


―まぁ、その黒自体が悪かどうかも微妙だが、この際は置いておこうか―


 その音は、これまで一徹に食らいつこうとする忠勝をも黙らせた。


「……始まります」


「あれは? あの動き、この記憶ではたまに見るけど」


「師匠のルーティンだよ。斧刃術B面時の戦闘モードへのスイッチコンバットルーティン。本来はレンチじゃなく大ぶりのナイフでやるのさ」


大ぶりのナイフと片手斧痛そうな形で、痛そうな音で。そしてその動きは図らずとも……」


 ルーティン。レンチと片手斧を互いに強くこすりつけ合う。


「ご馳走を前にナイフとフォークを研ぎ合わせて舌なめずりする様にも見えるだろう?」


―……一徹?―


―試してみたいじゃないのよぉ。だったらそんなサイコパスに、《今の俺》がどこまでれるかとかさぁ―


―一徹……―


 もう、忠勝の呼びかけは声にもならない。

 カッと見開いた目。クワカァっと笑みのまま大きく開かれた口からは、ダラァリと舌が出ていた。ポタ……ポタと、舌先から透明な粘液がしたり落ちる。


 その凄み、気持ちの悪さと得体の知れなさに忠勝は圧倒されていた。恐らくだが、実の弟に……山餅魔鎖鬼以上の恐怖を覚えているだろう。


―《境遇から学び倫理を捨て逝ったソシオパス》。《善良》が……《罪に塗れた》だっ!―


 サイコパスが先天的なら、ソシオパスは後天的。


 28歳で異世界に飛んでからの数年。

 自分の利益、ストレス発散や快楽のためなら人を騙した。

 人を傷つけ殺した。

 拷問だって辞さない。

 無謀な策を用いては周囲を巻き込み、果ては社会に混乱すら蔓延させた。それでいて良心の呵責を感じないことさえある。


 そう思うと、ただサイコパスであることより、ソシオパスの方が酷いかもしれない。


 パーソナル障害であるサイコパスとて、犯罪や悪に傾倒しなければそれまでだ。

 だが身に降りかかった出来事によって堕ちた悪の道というなら、自らの決断と覚悟をもって外道を自らの足で邁進するということ。


 悪としての貫目が違う。


「一徹の前では、山餅魔鎖鬼も所詮は獲物。自分をソシオパスに墜としたのも、山餅魔鎖鬼の人違いで私たちの世界に送られたゆえ。ここからは、一徹が山餅魔鎖鬼を喰い散らかす」


 そうやって生きてきた。

 生きるためなら他人を尊重し踏みとどまるべき所も自らの利益、望みを優先する。法すら破った。


 そんな一徹は、対峙する山餅魔鎖鬼に向かって……走らない。

 ニタニタ笑ったまま、ゆっくりと、確かな足取りで、歩を進めていった。

















 皆さま、一か月ぶりのお久しぶりです。

 何をトチ狂ったか、私、勤め先の労働組合の本部役員になっちゃって、春闘で会社に噛みつく役回りとなり、なかなか執筆に時間が取れてません。

 

 毎日お腹がグルグル言ってます。


 皆さんはお給金増えますか?


 私の場合は先が見えません。。。(爆死っ!!)

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