187
「やっぱりろくな奴じゃねぇ。リングキー・サイデェス。俺たちに取っちゃあただの疫病神だ」
再び灯里とネーヴィスを洗脳し、魅卯にけしかけようとしたリングキーの思惑を打ち砕いたアルシオーネ。
下宿前の庭にいたメンバーに一声もかけない。それらは有栖刻長官に任せて、一目散に向かったのは……
「ただいまナルナイ」
「……ウ……う……」
「……ナルナイ……」
下宿内はナルナイの部屋だった。
扉は内側から施錠されていた。なんどもノックしてアルシオーネはナルナイに呼びかけるも、反応がない。
ゆえに一徹の部屋に立ち入って館内のマスターキーを握りしめ、やっとの思いでナルナイの部屋に入室した。
「……あれから、風呂に入ってないだろう?」
部屋に入るなりアルシオーネが顔をしかめたのは、扉を開けたとき中に籠もった異臭が廊下へと流れ出てきたから。
少ししつこい甘さ、複雑な香り。
数多品種、サイズも大小関わらない花束を想起させるのが、ナルナイの発するフェロモンだったはず。
花束すべて朽ちてしまったかのような。
甘さは薄れ、塩っけと酸っぱさが替わりに主張する悪臭が部屋を占めていた。
「まともに飯も食ってねぇ」
異臭の中に、下が感じられないのは安心すべきかどうか。
要は四國から帰って来て殆ど栄養を摂取していない。
吸収しきれず、老廃物として出ないわけだ。
「壊されちまったなぁ、ナルナイ?」
とても生きているとは思えない。
活きていないと言ったほうが、良いのかもしれない。
部屋は真っ暗。
ベッドの上は掛け布団の中から盛り上がっている。
「ちょっとでも起きられないか? 久々の再会なんだ。顔を見せてくれよ。伝えなきゃならない事だってある。だから……」
アルシオーネが帰ってきたというのに、返事も反応もないのだ。
「なぁ、ナルナイ?」
ナルナイと言えば、アルシオーネに取っては親友と言うよりも姉妹程の間柄。
四國でリングキーを斬った咎で二人は引き剥がされた。
その原因がナルナイの心を容赦なく斬り刻んだ。
収監されたアルシオーネは、どれほど会えない期間落ち込んでいるだろうナルナイを心配したことか。
でも、やっと会えたナルナイは落胆の域を越していた。
「う……うあ……」
もはや……廃人。
「……あのトリスクトでさえ心が折れちまった。だからナルナイが耐えられるわけはないと思っていたよ」
部屋に入ったアルシオーネは、掛ふとん一枚で外界を拒絶しようとするベッド上のナルナイのそばに立った。
「でもさ?」
更に姉妹分すら遠ざけたいのか、掛ふとんの中でもぞり動いたナルナイは、アルシオーネに背を向けるではないか。
「でもさぁ……」
これほどに惨めなナルナイを前に、見てられないアルシオーネは目をギュッと瞑って俯いた。
「ワリィな姉妹。俺、俺は……そんなお前に鞭を打つことにした」
が、合わせギュッと拳を握ったかとおもうと、カッと目を見開いた。
☆
「か……閣下、どうしてこの場に? しかもこのタイミングで、更にグレンバルドさんをともなって」
「質問はもっともだ。が……コレは内々の話。スマナイが君たちの知るところではないと言っておこう。月城生徒会長」
「なっ!?」
この場に現れるなり脅威だったリングキーを殺してみせたアルシオーネは、さっさと下宿内に駆け込んでいく。
あまりに突然の出来事について行けず、魅卯は下宿前の庭に残った有栖刻長官に質問する。
跳ねのけられ、絶句した。
「長官閣下ぁ? ここまで巻き込まれた私達には、知る権利が……」
「さて、では石楠グループは私が欲したとする情報があれば、詳らかに明らかにしてくれるのかね妖王の補佐官殿? これまでの経験からはとてもそう思えぬが」
「はぁ、それを言われてはこれ以上の追求は出来ませんわね」
此度はネーヴィスが図々しく行くも、返す刀に諦めたように肩をすくめた。
『じゃあ嫁さん殺されかけた俺は、それでなお我慢しろって?』
「ッ!?」
が、三人目の声を耳にしたとき、明らかに有栖刻長官は苦しそうな顔をした。
『ま……た……アンタ絡みかよ!』
「ぐぅっ!?」
その場に、トモカの旦那が現れたのだ。
有栖刻長官を見るやいなや、ツカツカ近づき、次の瞬間その鼻っ柱に頭突きを叩き込んだ。
「テメェ! ガキィ生まれて抱き上げることがなけりゃ、このゲンコぶっ込んでたところだ!」
「だ、旦那さん行けません! 二人共止めて!」
『『我らはインペリアルガード!』』
慌て悲鳴を挙げた魅卯に反応して、月城魅卯親衛隊二人がトモカの旦那を抱きとめた。
「「えっ?」」
多分、有栖刻長官の鼻は潰れている。鼻腔からドス黒い液が流れ始め……
「……アーちゃん? こ、これは……」
「そこの屍が立ち上らせる匂いと混じっているからそう感じるだけ? だとしても近い」
「私も同感です。閣下の鼻血の匂い……以前啜った山本様の血の臭いと近い。近すぎます」
血を啜る者たちは何かに反応した。
「気に喰わないのは百も承知……の上で、それでも君にも話せん。誠に申し訳ない」
『……コ……ころ……』
『ちょ、ちょっと待つんだな!』
『落ち着くでガンス! 気持ちはわかるでガンスから!』
大人が「殺す」など滅多に言わない。
トモカの旦那がそこまで極まっているのを直感し、月城魅卯親衛隊二人も焦るしかなかった。
それでも……
「石楠訓練生と月城魅卯生徒会長は別室にて待機。意識を失っている刀坂君の治療に当たるのが良いだろう」
有栖刻長官は無理くり平静を装った。
「妖王の筆頭補佐、十六夜・ネーヴィス・風音さんはホテル本館の警備警戒を。君たち男子訓練生二人は、そのままホテル支配人を女将のもとへ送り、二人を守り給え」
普段ぽややんなトモカの旦那が激烈を見せたから、誰も新たに長官に抵抗する感じはない。
未だキレているトモカの旦那以外は、納得できない顔をしていたが、仕方ないと言う感じで指示に従い動き始めた。
「……君たちは私と来なさい。君達には、徹の兄として伝えなければならないことがあるのだから」
山本小隊以外がその場から姿を消して、やっとゆっくり有栖刻長官は意図を口にする。
まさか有栖刻長官が、ルーリィ達が隠してきた一徹の正体を確信持って口にするから、シャリエールもリィンもエメロードも顔を戦慄させた。
「君にもしかと聞いて欲しいルーリィ君。一徹の兄貴である私だから、君は私の義妹であるはずだ」
が、ルーリィの無反応は変わることなく……
『目ぇ覚ましやがれっ! ナルナイッ!?』
いや、注目すべきはルーリィではないのかもしれない。
下宿二階。怒声が寒空を振動させたと同時、硬いが衝撃にはそれほど強くないものが砕けて散り飛ぶ音が響く。
「おぉ……」
音のする方を見た有栖刻長官、信じがたい光景に声を漏らす。
夜空を……アルシオーネではない人影が放物線描いて舞っていた。
「無茶苦茶も良いところだ」
「グッ!」
二階から窓を突き破り投げられた影は、地面に叩きつけられ、衝撃に声がひりでた。
刹那もない。
その倒れた影のそばに、ドンっとの着弾音。
アルシオーネが、破った窓から飛び降り、倒れた影を追って着地した。
「チィッ、これでまだ足りねぇか」
見下ろす先、ナルナイの様子に鬼気迫る顔で歯を食いしばった。
「ア、アルシオーネ君……」
「ちょっと待ってくれ長官さんよ」
昂ぶったアルシオーネの雰囲気に有栖刻長官が呼びかけるも、
「この場所くんだりやってきたアンタが山本小隊に向けて話があるのは知っている。でもよ……」
アルシオーネは呼びかけに言葉を返しながらも、巡らせた視線の中に有栖刻長官を入れることはない。
意識の先は、姉妹分ナルナイの惨めな様子。
うらぶれて心を閉ざしてしまったルーリィの醜態。
瞳に諦めが宿ったシャリエールの退廃的で情けない様。
「今のままならアンタの話も、想いも通らねぇ……から……」
大きく息吸って吐いた。
「まずはこのバカ共に喝入れてやる。目ぇ覚まさせてやる」
言い切った。
「リィン」
「あ、アルシオーネ?」
「ナルナイ、トリスクト、そしてフランベルジュ特別指導官。ナルナイは俺がボコすことにした」
覚悟決めたアルシオーネに呼ばれ、リィンはコクッと唾を飲み込んだ。
「私も闘るの?」
「……ならリィンは、フランベルジュにしておきなさい?」
「へぇ?」
「私はルーリィ様を貰うから」
急なる提案に窮するリィン。話を進めて前に出たのはエメロードだった。
「まさかアルファリカが出てくるかよ。お嬢様ってやつぁメンタル豆腐でイケネェ。リングキーにお前も壊されたと思ってた」
「正論よ。論破されたわ? でもね……それとルーリィ様が山本一徹を諦めることは話が違うし、何よりそれはこの私が許さない」
流石にエメロードまで名乗りを上げたことにリィンは驚きを隠せないが……
「山本一徹が貴女を妹にしたなら、貴女にとってルーリィ様ともフランベルジュとも関係性は同じはず。とはいえこれまではあまりフランベルジュと絡んでは来なかった。いい機会よ。義妹として、二人目の義姉ととことん向き合ってきなさい」
言われたことへのリィンの中での分かり味の深さよ。
受け止めたリィンは、しばし無言のちゆっくり頷いた。
「ま、そういうわけだからさ、チョット待っておいてくんねぇ長官さん。すぐ終わる……のかな? 奴ら次第だ」
話は決まった。だからアルシオーネは有栖刻長官に語りかけた。
長官といえば返事は返さない……が、手近な大きめな石に腰掛けたのが答えだった。
山本小隊6人は3対3へ。
もし一徹がここにいたなら決して認めない喧嘩が今、勃発することになる。
長官の行動は、成り行きを見守るだけのものなのだ。
◇
「ん……」
朝チュンとは俗に、ヤっちゃってその翌朝、小鳥さんの歌声に目を覚ますことを指すらしい。
「朝目を開けてみたら、身起こしたリングキーが寝てる俺をジッと眺めていました。どーしたの?」
「昨夜の事を、思い出していました。一徹様、とても激しくて」
ならばこのシチュエーションってぇのは確かに朝チュンと言うのだろう。
「安定期に入るまでお預けでしたから、反動が来たのでしょう。我慢をさせてしまっていたのですね」
「はは……」
言われると、苦笑い不可避だ。
「めくるめく」って言葉が昨夜には一番ふさわしい。
自分自身、昨夜の俺は猿だったとの自覚がある。
リングキーにのめり込み、疲労と脱力と眠気に意識落ちるまでその肉体を貪った。
「随分とまぁ、必死だった。見苦しかったんじゃない?」
「それどころか、嬉しかったです」
交際、結婚、合わせて十数年。俺との子供を宿した。
こんなに可愛くできた嫁だ。きっと数え切れないほど肌を重ねたはず……なのに。
(最近になってやっとこさ初体験させてもらって、経験が浅い上で快楽にやみつきになって暴走したような感覚だ。自分で言うのも何だが、完全に盛りのついたオスみたいだったよな)
初めてか二度目か。
嫁さんであるはずなのに、リングキーとの営みは好きでたまらない付き合いたてホヤホヤの彼女とシているような新鮮さが凄くて興奮した。
「フフッ」
「どしたい?」
「いえ、幸せだなぁって」
「うくっ」
目は口ほどに物を語るとはいうが、目で語って口でも語るなら最強の感情表現だ。
「……夢……みたいだな」
「えっ?」
俺が良いってよ。俺との人生が良いってよ。
途方もなくリングキーが愛しい。仰向けになった状態で右手を上げる。手のひらでリングキーの頬を触れた。
「現実じゃないみたいだ。俺は……ずっと君とこう有りたかった気がする」
「現実ですよ一徹様。夢のような現実。貴方が望みさえすれば、この日常はいつまでも一徹様のものです。望むだけで、信じるだけで、私はいつまでも貴方とともにあれる」
リングキーは俺の右掌を両手で包むと軽くキスをしてくれた。
「あら? 少し早く起きすぎてしまったみたいですね私達。いつもの起床時間まであと1時間。どうしま……きゃっ」
年甲斐がないのは百も承知。でもリングキーへの好きが爆発して溢れまくった。
両手で包まれた右手に力を加える。これによってバランスを崩したリングキーは起きていた状態から俺の横に倒れる形。
俺は、大きくなった彼女のお腹に注意を払って覆いかぶさり……
「朝ごはんギリギリまで、昨夜の続き……シちゃいましょうか?」
そんなこと確認するリングキーに、答えを返すまでもない。
当たり前のように、だがユックリと、彼女の唇に口を重ねる。
それから、それから……
☆
「ね、ねぇ月城さん」
「うん?」
「なんか考えてみたらこうして一所に二人きりって初めてよね。まぁ、ヤマトはいるけどまだ眠っているし」
「い、言われてみたら確かにそうだね」
有栖刻長官の指示で、灯里と魅卯の二人がかりで気絶しているヤマトを手当している状況。
言われ、改め自身の状況を知った魅卯は急にぎこちなくなった。
「どうしてそんな機会がなかったかはハッキリしてる。月城さんて……ヤマトの事好きだったでしょ?」
ストっと心を射抜く言葉の矢。
はじめ不意打たれポカン顔の魅卯は、しかし困ったように笑った。
「うん。石楠さんの言う通りだよ」
苦笑したのは言い当てられたからじゃない。
聞いた灯里が複雑そうな顔をしていたから。
そりゃあ二人のツーショットが無いわけである。
灯里、そして魅卯のふたりとも、意中の相手はヤマトだった。
牽制や目立った取り合いはない。が、互いに警戒したところはあっただろう。
二人は間違いなく、恋のライバルだった。
「好き……『だった』」
きっと、だからこそこの場に二人いれるのだ。
もはや二人は恋敵ではないのだから。
魅卯にとってはもうヤマト……ではない。
「あ、あのね? その……」
なお灯里が複雑そうに見せるのだって、魅卯が恋敵だからではない。
「や、山本は……やめたほうがいいと思うの」
「石楠さんは……全部知ってるの?」
「何も言えない。それでなお『止めたほうが良い』って言うのは理不尽だって言うのも分かってる。それでも……」
魅卯はもうライバルではない。
そして人を好きになるしんどさと、実が結ばれないかもしれない不安。
恋の辛さ。すなわち魅卯が抱えているものが、ヤマトへ恋心抱く灯里にはわかってしまう。
「きっと山本君がもっと、ただの人だったら、そうやって石楠さんに心配してもらえなかったかもしれないね」
「え?」
灯里から魅卯への忠告は、転じて心配で有ることを魅卯も理解していた。
「石楠さん、トリスクトさんと仲がいいもん。私がトリスクトさんと山本君の間に割って入ろうものなら、親友の婚約者をたぶらかそうとしているって不愉快に思わない?」
「それについては持っていい想いのはずなの」
「うん。寧ろそれが感情として健全」
魅卯の想いは報われない。灯里にその確信があるからこそそんなことを言ってくる。
魅卯も気づいていた。
なんと言ったって、あのルーリィ、シャリエール二人の真剣さだってどうやら報われていないようだからだ。
「私が山本君の事を好きになったことで、トリスクトさんは勿論として、石楠さんまで私を警戒する。決して喜ばしい事ではないけれど、今の状況を鑑みたら、そういう展開のほうが良かったかな」
「ん、良かったって?」
「だって対等って感じがするもん。同じ舞台に上がって、相手をライバルとして意識し合う。いいか悪いかは別として、ある意味認められているゆえからとは思わない?」
これまでほうれん草やらナッツやら煮干しにチーズやら、鉄分にタンパク質をふんだんに、血になりそうなものを刻み磨り潰していた手を止めた魅卯。
苦しそうに部屋のとある方向の壁をみやった。
壁というより、すり抜け、建物の外を気にしているのは灯里にはわかっていた。
静かに言葉を紡ぐ二人とはうってかわって少し前からドンパチ騒がしい外に。
「取り合うための争いにも加われない。その立場にないんだよ私」
憂いた顔の魅卯をじっと見つめた灯里は、フッと視線をそらすとヤマトに目を落として引き続き動いた。
「どうかしら。多分あの子達は、その争いに加わらなくても良い月城さんの方こそ羨んでいるんじゃない?」
「それってどういう……」
「好きになっちゃうとどうしようもなくなる。例え自分が選ばれたとしても、好きな相手が自分以外と過ごした時間や関係性すら独占したくなる。それ以外の存在が持つ、好きな相手に対する思いと一挙手一投足が気になって仕方ない。何故かって?」
「それは……」
「一歩間違えば自分以外の誰かが選ばれてもおかしくない程の熱量を孕むから」
魅卯が拵えた食材の粉末を、糖蜜溶かし少しの食塩を加えたものに加えてかき混ぜる。
「だから月城さんは、山本の為に喧嘩までするあの娘達の本気度に気が気じゃない」
「うん」
「でもね?」
気を失うヤマトの頭を抱き起こし、水差しによって特製ドリンクを飲ませつつ、灯里は続けた。
「恐らくだけど、リングキー・サイデェスの術によって襲撃されたその事実は、ルーリィ達にとってもっと最悪だった」
「最悪……って……」
「リングキー・サイデェスがあの子達を亡き者にしようとし、潰そうとしたのも、あの娘たちが山本を巡る上での最大の恋敵だから。そしてそこに……」
水差し半分ほど飲ませた頃、灯里は魅卯に顔を向ける
「貴女も加わってしまった。月城さん」
「っ!?」
「わかるかしらこの意味。これまではリングキー・サイデェスとルーリィ、シャル教官を筆頭としたあの子達が互いに最大の障害だった。ここに同程度の脅威と評され貴女が現れた。そういう意味では今や月城さんも山本の心を奪い切るにたる一人となったに等しい。だから命を狙われた」
「……あ……」
突きつけられて魅卯は呆然として……
「……嫌な娘だね私」
クシャッと顔をしかめた。
わかってしまう。
リングキーから魅卯もルーリィたちと同じような敵対象として見られる。
ならばルーリィ達からだって、魅卯がとうとう一徹にとってリングキーやルーリィ達と同じレベルになったと見えるはず。
ルーリィ達は小隊内で喧嘩し、消耗しあわなければならないのに。
遂に一徹にとって、ルーリィらと同程度の存在となってしまった魅卯は、わざわざ身を削る必要はない。
「嫌な娘よ。私だったら嫌い」
悠然と成り行きを見てれば良いのだから。
「それでも今回ばかりは月城さんへの嫌悪より、心配が勝る」
聞けば聞くほど魅卯が嫌な立場にあると灯里はぶつける。
だからこそ、それでなお「心配が勝る」など、魅卯を気遣おうとしてくれるのが尚更魅卯は気になってしまった。
「貴女……破滅する」
「ハメっ……!?」
「待っている悲劇は恐らく3つのうちどれか。一つ、リングキー・サイデェスに殺害される。2つ、山本が目の前から居なくなる。貴女は途方に暮れるでしょう」
殺害の二文字でも充分魅卯を怖がらせる。
「み……3つ目は?」
「可能性は、極めてゼロでしょうけど……」
それでも、聞いてしまった。
「世界を敵にする。世界が敵になる。月城さんが今日まで生きてきた中で作ってきた大切な誰か、大切なもの、想い。そのすべてを、貴女は捨てなくてはならなくなるのよ?」
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