テストテストテスト68
『
『『『『『「おっしゃああああああああ!」』』』』』
攻撃権を手にした。
ゴールまで残り25ヤード。ここから10ヤードごとに4回責めるチャンスがある。
逆に、4回のうちに10ヤードを超えられなければ、再び攻守交代となってしまう。
(しかし得点大チャンスにゃ違いねぇ)
《リーガルダイナソーズ》の
《センター》なるポジションの掛け声に、俺も含め全員終結する。
『トゥッ!』
『『『『『「ウェェェェイ!」』』』』』
人差し指を天に向けての一言は、「これから伝達されるフォーメーションに注意を傾けよ」という合図だ。
『
(ち、チートって……)
全員が傾聴状態に入る。
『寧ろ山本君はこれまでの活躍でかなり警戒されている。チャンスがあれば、他の皆にもガンガンボールを渡していく。最後まで決して集中途切れさせるな!』
俺たちが意識すべきは攻撃陣の司令塔ポジション。
『では参ろうか!
クォーターバックの青法中大アメフト部キャプテンさんの言葉だ。
「
『『『『『「
気合に対して気合で返す。
これから行う作戦の為に、それぞれの配置についた。
ちなみに俺は……
『アイシールド
『
『
(オッホ! つられてるつられてる♪)
結論から言うと滅茶苦茶警戒されている。
だから俺がフォーメーションの右端に立っている事実に対し、敵さんは、俺の立ってる方からパスなりランなりで攻めてくる可能性が高いと警戒していた。
(……ちょっとズルい……のかな?)
―予期せぬチート要素が加わってしまったが、たるむことは許さない―
(チートかぁ。まったくもってしっくりこないけど、俺の事……なんだよな?)
―寧ろ山本君はこれまでの活躍でかなり警戒されている。チャンスがあれば、他の皆にもガンガンボールを渡していく。最後まで決して集中途切れさせるな―
作戦を告げられた時に言われたことを思い出す。ほんの少し複雑で、笑えてしまった。
変な確信があった。これも自信過剰乙じゃない。
これから攻撃を行っていくにあたって、多分俺が何かしても、
(
常に警戒を払って、俺の動向に目を向け続けなくてはならないだろう。
俺にばかり注意が行ってしまうと、当然ながら他の選手や俺以外を使った攻め方に対する警戒が手薄になってしまうわけで。
『Ready !
(そして青法中大アメフト部キャプテンさんは、そういうところを見過ごすような人じゃない。まさか、無力無能で雑魚な俺が……チートって……)
『Set! hut!! hut……!』
(hut一回……二回)
『ハーット!』
(三回目!)
『『『『『「応ッ」』』』』』
合図の通り、三回目にプレイが開始する。
(チィッ!
前衛のプラス一人として俺も加わった以上、合図とともに相手ラインマンと俺もぶつかり合った。
身長はほぼほぼ俺と同じ。筋力は俺の方が強そうだが、何より体重は向こうさんの方が重い……お腹出てるし。
(違う。腹が出てるってことは前に対して重心が効いてるってこと。正面衝突のぶつかり合いで言えば、相当な
向こうも失点させないように必死だ。
ヘルメット同士をぶつけあい、せめぎ合う。眼前には、殺気だった目で歯ぁ食いしばった戦闘モードな貌が良く見えた。
(でも……ね?)
相手ラインマンと密着。押し合った状態で小刻みに足をかくことで、俺は立ち位置を変える。
イメージは、相手と正面で密着した状態から真横に移動。横から相手を押し込む感覚。
先ほどのパントリターンと考え方は同じ。
人は前後左右からの衝撃には強いが、横から加えられる力に弱い。
『中央に押し込まれた!? 外側からボールが出てくるぞ!』
俺の動きの意味を瞬時に察知し、押し合う相手ラインマンが叫ぶ。
やはり決勝進出チーム選手。判断が早い。
(だが、かかった)
俺の押し込む方向を感じ、外側から攻めると勘違いした相手ラインマンは、俺のユニフォームを掴んで俺を引き倒す。
「なっ!」
ただそれは、向こう正面ラインマンに対して俺が張った罠。
俺をひき倒し、相手ラインマンはフィールドのサイドライン側に走る。声を上げたことに釣られ、他の相手選手も同様に、フィールド外側に守備網を張った。
それゆえ……
『『『『『『中ぁぁぁぁぁっ!?』』』』』』
相手チームの悲鳴じみた叫びが重なった。
フィールドサイドライン側に展開されていく守備網の裏をかき、俺のチームメイトの《
(抜けた!)
実際の作戦が中央突破であることに相手が気付くまで時間がかかった。
ほどなくのホイッスル。
ボールを持って果敢にゴールに切り込んでいくランニングバックが倒されるまでに、結構のヤード数を稼ぐことができた。
(2nd down残り4ヤード。ゴールまでは19ヤードか)
『
『『『『『「おっしゃああああああああ!」』』』』』
プレイが止まってから、次にプレイを再開するまでに時間制限もある。
センターの掛け声を耳に、俺もすぐはせ参じた。
『トゥッ!』
『『『『『「ウェェェェイ!」』』』』』
『素晴らしい。完全に山本君に意識し、釣られていた。相手チームの守備形態はこれでかなり混乱する。山本君を警戒すべきか、他の選手もケアすべきか』
作戦を告げる前、青法中大アメフト部キャプテンさんはしてやったり顏。
『次だ。もっと混乱してもらおうか』
他の皆さんもニヤニヤ笑っていた。
『
(あーうん。初めてキャプテンさんに会ったとき、メッチャ騎士道精神感じたもんだけど……)
『
(結構エグイ手ぇ使うつもりなのね)
『
『『『『『「
(しかも容赦ねぇ。いんや、
自分で言うのもなんだが、試合の流れと勢いはこちら側に傾いたとみてる。
勝負に絶対はない……が、何となく次の作戦も成功するような気がした。
(ただ……なぁ……)
試合に集中しなければならない。折角頼ってもらえた。意外にも結構な活躍が出来ていることは俺自身嬉しい。
なのに、少しずつ申し訳なさが俺の中で募ってきた。
持ち場についた皆さんと同じく、俺も作戦遂行のためにいるべき初期配置に到着する。
『Ready ! Set!
『『『『『「応ッ」』』』』』
『『『『『うわぁぁぁぁっ!?』』』』』
(やっぱこうなったね)
プレイはreadyから、set、色と番号、hutまでの掛け声のどこかで始まる。
ただ、「hut」何回目かでのプレイスタートに皆慣れている。「On two」なら二回目。「On five」なら5回目。
このスタートは不意打ち。意表を突きすぎる。
嫌じゃない。「位置について……よ~い、ドン!」の「ドン」で始めたいだろう。
(敵さんの感覚としてはきっと、「位置につ……」のタイミングで始められたに等しい)
おかげで立ち上がりでの先制に成功した俺たちのチームは、相手にまともに体制を整えさせず、作戦を遂行できた。
『右! 右だぁぁぁぁ!』
『ランニングバック二人とアイシールドが右に寄ったぞぉぉ!?』
俺たちの
『
つまるところ今回は、俺たちのチームからみて人数の薄いサイドから攻め上がるという作戦……
『待て! 待てェェェェ! 違う!』
……という風に見せかけた。
『反・対・サイドぉぉ!』
ランニングバックがボールを持って走るわけじゃない。
パスをキャッチしてから敵陣目がけ走る《ワイドレシーバー》が攻撃の起点でもない。
『クォーターバックだぁぁぁぁぁぁぁ!?』
仲間に指示を飛ばし、通常ならボールをランニングバックに渡し、ワイドレシーバーにパスを投げる《クォーターバック》が相手陣地を駆け上がる。
(なかなか、キャプテンさんもいやらしいね)
プレイ開始で立ち上がった時、相手からは数人が壁を作ったようにも見えるから、その後ろでボールを誰に渡したのか見えにくい。
(まさか誰にもボールを渡さず、司令塔自ら敵陣に切り込むなど思わなかった。奇策を、更に不意打ちで用いた……ね?)
またもや意表を突かれ、こちらの攻撃に反応するまでに何拍も出遅れた。
罠にまんまと引っ掛かった相手チームが放逐したエリアを、ボール持ってキャプテンさんが果敢に走り込む。
(点差はゴールとボーナスポイント一回分。振るう采配によっちゃ、勝ち越し大逆転にもなりうる)
『『『『『いっけぇェェェェ』』』』』
(こちらも必死だが……)
『『『『『止めろォォォォ!』』』』』
(あちらも死に物狂いかよ)
『オフェンスファーストダウンコンバージョン成功! 1stダウン!』
『『『『『よっしゃぁぁぁっ!』』』』』
このままではゴール地点に辿り着かれてしまう。
キャプテンさんにやっとの思いで追いついた敵さん二人の体当たりに伴い、鳴いたホイッスルでプレイは中断する。
(次の
『
「チィッ!」
ぶつかり倒されたキャプテンさんはフィールドから立ち上がるなり咆哮を挙げる。
その意図が分かってしまって、まさか、チームメイトである俺が舌打ちをしてしまう。
決して怒りではない。驚きと焦りゆえに自然に出てしまった。
(キャプテンさん! 決めに来たかよ!?)
その一喝に、俺含めたオフェンス選手が慌てて駆け寄った。
『全員、試合前に決めた通りだ!』
(って、試合前の取り決め? そんなこと言われたって……)
『山本君っ!?』
(いや、知らねぇんだけど!?)
『
「ッツゥ! 了解ですっ!」
『
『ブレイク!』
状況を簡単に説明する。「兵は神速を貴ぶ」……という事。
俺のパントビッグリターン。
俺に意識を集めてしまった結果、警戒から外れた他の選手が素晴らしい活躍を見せた。
その次のプレイ。
俺以外、通常なら得点につながるポジション選手に敵が警戒した裏をかき、まさか司令塔自ら敵陣に攻め上がった。
(ゴールまでもう残り14ヤード。あの手この手使って一気に得点圏。相手が焦らないはずもなく、それでなお誰を警戒していいか分からない。そんな状況で……)
『Ready……ッ!』
『『『『『「応ッ」』』』』』
『『『『『ぐぅっ!?』』』』』
(守備配置を整える間も与えられず、俺たちに畳みかけられてしまったら……)
プレイ再開前に守備体制をまともに整わせる間もなく、攻撃陣ラインマンが衝突に行ったゆえ、先ほどと同じくディフェンスラインマンは動きを封じられてしまう。
『外から走ってくるぞ!
キャプテンさんのすぐ脇をすれ違ったランニングバックが、サイドライン側に目いっぱい走る。
滑稽だ。そして少し申し訳なかった。
守備陣の体制を整えさせないままのプレイ再開。俺たちからの攻撃を待ち構えることも、俺たちは許さなかった。
だから相手は、俺たちチームの誰か一人が目立った動きを見せたことに、
『違うッ!
そのうち目立った動きを見せたランニングバックが、ボールを持ったような振りをして走っていることに相手チームも気づく。
こちらのキャプテンさんがボールを投げようとするモーションが目に入ったのだろう。
『パァァァァァァァァァァァス!?』
見事に大外にディフェンス陣が走っていくから、中央あたりは人手が無い。
プレイ開始時はランプレイに見せかけるため、俺も相手ラインにぶつかっていた。
(だけどね……)
秒ほどしつこく相手ラインにくっつく。のち、その横をすり抜ける。
(遅い……よ)
5ヤードを走り、瞬をイメージした鋭い方向転換。
(あぁ、
直角に曲がってフィールド中央に走りながら、俺はキャプテンさんに目を向ける。眼が……合った。
(オフェンスに置いてかなり特殊。フォーメーションを組むとき、最前列の一人に組み込まれるラインマンのポジションの一つでもある……
ひしめき合う両陣ラインマンたちの頭上を越した、ふわりとしたパスが放られる。
(ボールを持ち、あるいはキャッチし得点を狙う、
そのターゲットは……
(だからこのポジションは、チーム
『や、ヤベェっ! ア・イッ……』
「
『シールドだぁぁぁぁぁぁぁぁ!』
俺達の攻撃展開の速さになかなか対応できないディフェンス選手たち。おかげで特に問題なく、山なりの回転美しいパスは、すっぽり俺の両手に収まる。
俺がパスキャッチした時点で、すでにプレイ再開地点から5ヤード前進したところである。
(残り9ヤード)
『『『おぉぉらぁぁぁぁぁ!』』』
「ぐぅっ!」
(ガチで来やがった! だがっ!)
絶対に失点しないとの敵さんの気概がよく表れていた。
(足りねぇ!)
パスキャッチと同時、3人が、それぞれ違うアプローチから俺目がけて突進したのだ。
(こんなもんじゃ足りねぇ!)
捕球後、両腕まわし、ボールを腹で抱える形。
『『『堕ちろぉぉぉ!』』』
「堕ちんわぁぁぁぁ!」
まだ倒れるまでじゃない。ここから更にゴールに向かわなくては。
絶対に押し通さないと言わんばかりの相手選手は、やがて4人、5人と俺にたどり着く。
(チィ、流石に5人がかりじゃ……)
5対1では俺の前進も叶わ……。
『『『『『応ッ』』』』』
(って、ナイス! チームメイト!)
否、俺一人で前進出来ないのを認めたか、掛け声とともに、チームメイト数人が俺の背中を後押しした。
「ウグ! イギギ……」
体中がミシミシと鳴った。
前進抑えようとするディフェンスと、背中を押して少しでも前に行かせようとするオフェンスの両挟み。
『プレイストップ! ホラ離れなさい! ホイッスルは鳴った!』
ボールキャッチしてから更に数ヤードは稼げたところで、俺を中心とした力のせめぎ合いは拮抗する。
これ以上のもみ合いは危険と判断し、審判がプレイを中断させた。
(ゴールまで残り5ヤード。次で……しまいだっ!)
『タイムアウトォォォ!』
見えてきたゴールへの現実味。
俺達だけじゃない。それは相手方にとって、失点までのカウントダウンが始まったという事。
(いや、1タッチダウンとボーナスキック1点の状況。が、もしボーナスギャンブルを狙って成功したら2点。つまりは……)
逆転だってありうる。
試合時間も残り少なくなってきていることを考えると、死刑執行のカウントダウンにも近い。
だからディフェンス側のラインバッカ―、敵さんのキャプテンと思しき選手が声を張り上げた。
リターンしてからここまで、怒涛の勢い。
乗りに乗った、こっちのチームキャプテンさんの息する間も与えない連続攻撃も功を制した。
(だから俺たちの今の勢いを削ぐため、一旦タイムアウトで試合を中断したい)
気持は分かる。
俺たちが攻撃権を取得してからというもの、ディフェンス側もまともに対策を考える暇をお耐えられなかった。
落ち付き、念入りに策を練り、実行しなければならないというところなのだろう。
『諸君! とうとう相手チームに指を掛けられ始めてきた』
『『『『『「おいさぁぁぁぁぁぁ!」』』』』』
構わない。対策を練るにディフェンスがタイムアウトを叫んで取得した時間、オフェンス側だって集合して、次の攻め手をガッツリ考えられる。
『勢いままに得点するつもりだったが、ディフェンス側はタイムアウト取得した。時間を間延びさせることで我らの逸るを落ち付かせたいのだろう。これは心理戦だ』
「……
『へぇ?』
「
(あまり言うべきじゃないが、俺と相手選手じゃフィジカル差がありすぎる)
「興奮や「次へ次へ」ってアグレッシブな思いは、時間と共に確かに薄れていきます。が、それで
5ヤードくらいならなんとかなる。本気で逆転の目が見えてきた。
「……
『……フム?』
俺らしくない、珍しくも自信過剰なセリフが、自分でも信じられないほどスルリとでて来た。
キャプテンさんは俺の言葉を耳にして、ジッとヘルメット越しに俺を見つめてきた。
『君を誘ったのは僕たちになのに、
「えっ?」
『大前提として、君は僕たちの予想を遥かに超えるどころか、
「あ、あの……謝るっていうのは……」
先ほどまでの威風堂々、はきはきした雰囲気はどこへやら。
「山本君、
少し、重苦しい口調。
「あ……」
『じゃあ諸君。ここで決めるぞ。次の作戦は……』
キャプテンさんからの次の指示が下る。
聞きながら、色々思い当たるところはあった。
その作戦は確かに、俺ならタッチダウンしきる。
『
『『『『『『ブレイク』』』』』』
作戦会議は終わる。次の作戦の為の配置についた。
『Ready!
(なんというか、なかなか微妙な心持だねどうも)
プレイ開始の合図をじっと身じろぎせず待ちがながら、ディフェンスチーム面々を見やる。
皆それぞれ、ヘルメットの中に悲壮感に満ちた表情をしていた。
―タッチダウンします。僕にボールをください―
―君は僕たちの予想を遥かに超えるどころか、僕たちを遥かに超えた凄まじい選手だった。君の今の言葉は多分過信じゃない。確信だろうし、間違いなく、次のプレイでタッチダウンを決めるだろう―
不意に先ほど俺が口にしたこと、キャプテンさんに言われたことが蘇る。
「Hut! Hut! Hut……」
(
「Hut!」
『『『『『「応ッ」』』』』』
さぁ、プレイ再開の合図。
ディフェンス、オフェンスラインがぶつかりというのを認めた俺も動き始めた。
(誘ってくれた。スゲェ楽しませてくれた。だから急に『退場』って言われたとしても、この人たちを悪く思いたくない。圧倒しちゃった。でも俺は悪くない。断言できる。相手チームには、申し訳なさしか立たない)
俺にとってはこのプレイで最後。その心は……
(なんつーか、難しいね? 社会って……)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます