テストテストテスト54
「ねぇ、なーんで今年の三組は一難去ってまた一難なの?」
「ん、うざ。問題が収まってやっと落ち付けると思ったら、長続きしない」
「いい加減にし給えよ。ある意味、三組とって致命的だぞ?」
「ヤマトとは、今年以前から付き合いあった俺たちすら羨むほど、山本は良き縁を結べたと思っていた」
「想っていたというか、それが事実です。本当に仲が良くて親友……以上に、兄弟のような。少し私たちが妬けてしまうほどに」
「「「「「……ハァ」」」」」
「貴様らっ! どこか他でやれ!」
何かが大きく変わってしまったのだと、昼休みに見せつけられた一徹のクラスメイト達。
そのなかの数名は、放課後とある場所に集まっていた。
だから、
「我が屋敷に暗い話を持ち込むな!」
「え~? だって『勉強会は
「阿呆が
当然と言えば当然。人の屋敷でため息ばかりこぼされてはたまらない。
「まさか、ヤマトと山本が喧嘩することになるなんて」
「そのことがこれほど三組に影落とすとは。どうだ? 中立を装い、この場にいる半半で双方に近づくのは? 例えばネコネ、お前ならヤマトに付くだろう?」
「ん~……今は、チョイムズイ」
「ですねぇ。こうなってしまって、想いもしなかったことがハッキリわかってしまいました。私たちにとって山本さんは、
「言いたいことは僕にもわかる。これまで、僕たちの中ではヤマトが第一党。正義だった。クラス内で不和があったとして、きっと僕たちはヤマト寄りになったはず」
「ですが、その相手が山本さんの場合、どちらにも寄りたくなる」
今回の大問題に、直接かかわりない者たちが綺麗に集まっていた。
「そもそも論だが誰か説明し給え。不和の原因は一体何なんだ?」
「フム? まずは原因と結果の縁を結ぶべきか?」
当たり前だが一徹とヤマトがここに居合わせるはずもない。
ルーリィやシャリエールには桐京出張があるから別として……
「ん、それは……なんとなくわかるけど」
「言っていいのかなソレ?」
「えぇっと恐らく……
……
翻弄され、右往左往。ウジウジするクラスメイト達の情けない姿を見下す
「だから、
(言えるわけなかろうこの阿呆)
「暗い話を持ち込むな」と言った癖して、
そのイライラ、決してクラスメイト達だけに向けたものじゃない。
寧ろ自分に対しての方が強いかもしれない。
「ん、
「フムゥ?」
「んむぅ、好きになっちゃったとか……無いよね?」
「わからん。俺も男女の機微というものに疎いからな。ただ……
「好き以外の感情で山本に急接近しようとしてるってことですか?」
「寧ろ縁の構築に躍起になっているのは、ネーヴィスの方か」
「風音さんですか?」
「最近ではよく、学外で山本に付きまとう場面に遭遇するようになった。好意もわかりやすい。」
(だろうな。妖王の《石楠》家は山本の血と
「待ち給え。整理する。僕らは
「トリスクトの反応も実に分かりにくい。それでなお、
「いくら親友になったからと、あり得ますか?」
「ん、考えにくいね。更に付き合い深そうなシャリエール教官からの山本の態度すら快く思ってないルーリィが、そんな反応するわけない」
真実に近しいというか、とある事実を
(あ、
「ねね、
「アレは論外だ
「あ、それもそうか。しかももう《山本君》の2年生5人に手放して貰えない感じだし。僕らの見てないとこで……襲われてないか変に心配になるレベルだけど(汗)」
(トリスクトのいないところで、二人……)
あわや
それは一徹、ルーリィ、
もしバラそうものなら、自分の駄目さ加減にきっと死にたくなる。
「って……げぇっ!?」
しかしながら、
「と、
「
「こっちを見るな
「綾人さんは御存じでは?」
「んなぁぁぁぁぁっ!?」
青天のへきれきにも違いない。
クラス内では控えめ、決して出しゃばらない類の
瞬間だ。クラスメイト達の目が一点に集中する。
「……灯里嬢に、山本様は血を分け与えたのです」
が、それに対する答え。
たった今までここになかった新たな声によるものだった。
「え、爺っ!?」
しかしてその声質についていちばん理解があるのが
声の主は、よく
「お許しくだされ綾人坊ちゃん。山本様とヤマト様の不仲は、爺にとっても心苦しいものがありますゆえ」
丁度、客人たるクラスメイト達に振舞うお替りの
「い、いや、それは分かるが……」
「《
「ぬ、聞こえなかったが」
「いえ、何でもありませぬ」
最も信頼のおける男の一人がボソリと言った何か。
「……言えるものかよ……言えるわけがない」
「「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? /やはりそうでしたか……」」」」」
「緊急事態だったのです。月城嬢襲撃事件に見立てた、坊ちゃんと灯里嬢誘拐事件の為といえばご納得いただけますでしょうや」
クラスメイト達が声張り上げるものだから。驚きの声が大きすぎるから、追及に繋がらない。
「い、いや、納得も理解も出来るよ? 出来るけどっ……」
「やめ給え! 気まずいぞ! 非常に気まずいぞ!?」
「ん、ソレが灯里が山本に好意を見せた理由? 既成事実……だから?」
「俺も妖魔の端くれだから、
予想できた反応が実際に目の前に広がる。綾人ではもはやどうしようもない。
「セックス……したんですね?」
「「「「「「ッツ!?」」」」」」
場にいた者が全員絶句したのは二つの理由。
決してそういう単語を口にするはずがない真面目な
「山本さんと
皆が真実を知ってしまったこと。
「ねぇちょっと待ってよ宗次さん!? それってトリスクトは知ってる話なの!?」
「存じてございます」
「ん! 有り得ない! それって山本をルーリィの手から寝取ったってこと!?」
「やはりとんでもない女傑だなトリスクト。それでなお、山本との縁は揺るがないか」
灯里が人間形態を取るためには異能力あるものの血を啜らなければならない。
「待って下さい。経緯と現状には大きな矛盾があります」
「矛盾でしょうか?」
「幾つかあります。サキュバスは満足するまで吸血を止めません! 強大な異能力を持つものなら、或いは吸血が終わっても飲まれた側は生きていられる」
「ん、逆に言うと、山本が吸われたなら死んでるはずだよね?」
一つ、血を飲むなら無力無能な一徹など足しにならないはず。
「百歩譲って吸血された山本さんが運良く生きていられたとして、もはや人間と言う生物では有り得ません!」
「眷属化。人間として生きる道から、妖魔としての生と縁持つことになる。決して逃れられん」
二つ目こそヤマトが灯里に普段血を飲ませてる理由。
「既に半分妖魔のヤマトには、その呪いが効かない。それが二人のこれまでの関係を作り上げた」
吸血はセックス。で、ありながらヤマトのことが好きなネコネや富緒が黙認してきたのは、そこが大きかった。
「そこも幸運だったのでしょう?」
「幸運で済ませるおつもりですか?」
無理が過ぎる説明をシレッと返す宗次に、誰もが何かを隠されてるのだと感じる。
「おいたわしやヤマト殿。爺めも気掛かりです。しかしながら……そも、灯里嬢との交際は関係ありや?」
しかし畳み掛けるように話は紡がれるから、皆が口を紡ぐしかない。
「吸血は先の事件で危機に貧した灯里嬢を助けるため。セックスだったとしても避けられなかった」
もっともと言えばもっとも。
でなければ恐らく灯理は死んでたのだろう。
「灯里嬢が山本様を寝取ったは別として。交際の事実がない以上、お二人が交らわれたことにヤマト殿にとって何も問題ありますまい」
「問題が無いということはありません」
灯里にとって「自分は特別」との自負がヤマトにはあったはず。それを、一徹は奪った。
あの事件から、その状況はずっと続いていた。
「しかし灯里嬢が生きて戻られたことは感謝しても良い。いやむしろ、感謝しこそすれ、決して仲違いすべきではありますまい」
「宗次、控えろ」
「と、申し訳ありませぬ坊ちゃん。誤解なきよう。爺は決して苦言をヤマト様に言いたかったわけではありません。しかし困りましたな」
そこのところを宗次もわかっていた故、狙って言ったのだ
「交際はしていなかった。しかし灯里嬢は実はヤマト殿にとって特別なお嬢様だった。もし山本様に奪われたとも思うならば、ポッカリと胸に穴が開くでしょう。危険です」
「聞いても良いか宗次殿。二人の縁に来る危険とは?」
「奪われた。しかもそれが特別な異性ともなれば、嫌な妄想も浮かびますまい。ヤマト殿も、
「そ、それってもしかして……」
「もし山本様によって灯里嬢が
「爺、俺は辞めろと言った!」
「ん、ジジイの癖に、下流」
「ご勘弁を。しかしあらゆることを想定し、出来得る限りの手は尽くすべきと爺は考えます」
ある意味、相当に年が上の男が煽りに煽っていく。
再度、一徹と
「皆、落ち付き給え? それで……尽くすべき手とは?」
「亀の甲より年の劫とは申しますが、時には下賤で現実的な手がよく効くこともございますれば」
「聞いてもいいでしょうか?」
「ヤマト殿は……多くの娘っ子から放っておかれないと聞いています」
「まさか……」
何とか平静を保ったのが
「そ、それは……」
ギギギっと、油さされてないブリキの人形宜しく、富緒とネコネに顔を向けてしまって。
「ん、デリカシーがない」
「僕のせいなのか!」
顔面に、ネコネから掌を押し付けられることになる。
「宗次さんにこんなことを言いたくはありませんが、本当にそれ、下賤ですよ」
気乗りしなそうな顔した富緒は、チラッとネコネと目を配背合った。
「しかし、別の女性、ヤマト殿にとって新たに大切なお相手様が出来ますれば、灯里様の事を忘れる一助にもなりましょう。少しずつ灯里様への未練が薄くなれば、山本様への恨みも薄くなるでしょう」
「薄くはなると思います。でも、消えることはありません。警戒も、嫌悪感も」
意識を交わす女子二人に、男子たちが視線を集める。
誰かのゴクッと唾を飲み下す音が聞こえる……ほどに、重い沈黙があった。
「誰か、どうにかし給え」
「こんなの、どうにもできないよ」
「ん、いくら考えても、灯里の山本への態度は
「フン、邪推は辞めろ」
「本当に、危機ですよコレ。折角文化祭で、今度こそ三組が一つになれたと思ったのに。あの時以上に、不味いじゃないですか?」
さぁ、状況はクラスメイト達に付けつけられた。
どうにもできない……という状況だ。
「俺は、山本もヤマトと同じ、三組クラスメイト一人一人が繋がる縁の中心人物に何時しかなったものだと思っていた。不安はなかった。二人が仲違いを起こすな露とも思っていなかったから」
皆、気付いてしまった。
「しかし現実は二人の間に軋轢が出来てしまった。ヤマトの方にも……」
刀坂ヤマトを主人公と見立てた
「山本の方にも……」
それとも、山本一徹を主人公と見立てた学園ラブコメディ
「そのどちらかに俺達が寄ることは恐らく許されん。これまで絶妙に保たれてきたバランスがどちらかに傾く。それは……」
「文化祭終了時に誰もが感じていた理想的な、私たちの好きな新生三組が壊れてしまう。そういうことですね?」
「ん、でもこのままというわけにも行かないね。じゃあ私たちに何が出来るって言われても」
一徹も三組の中心人物になってしまった今、三年三組には二つの物語、二人の主人公がいるのだということに。
若しかしたら、迫られているのかもしれない。
クラスメイト達が、どちらの世界を生きるのか。誰を主人公と仰いで学院生活を送るのかを。
「あぁもう、どうすればいいの!?」
選ばなかったもう一方の物語と主人公を打ち捨てるに他ならない。
残酷な。
同じ
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます