テストテストテスト50

「提案には飲んだものの……」

「良い案には……思えない」


 俺も《主人公》も完全同意。


 ネービスが仄めかしたパパラッチ対策。案を飲んだ俺達4人……と言うより、飲んだのはルーリィと《ヒロイン》の二人か。


『ふわぁ! 肌すっごい綺麗! やっぱ若いっていいなぁ!?』

『テレビ越しにも綺麗って思ってたけど、この娘反則。こんなにスレンダーなのに……おっきぃ・・・・! やっぱ桐桜華皇国人と身体の造りが違う!』


 俺ら野郎二人は状況に流されるばかり。黙ってその光景、試着室二つに群がる、ショップ店員の人だかりを黙って眺めるしかできなかった。


『ちょっと貴女勿体ない! 綺麗でセクシーな体してるのにベージュの下着ってオ・バ・ちゃ・ん・かっ!? 刺しゅう入り水色、一枚どう? 外のカレも思わず猛り狂っちゃう奴! ってか、貴女みたいな芸能人にカレシいていいの!?』

「わ、私は芸能人では……この世界のファッションにも疎いというか……た、猛るって一徹が?」

『ね、貴女これ、まだまだ成長するでしょ? もうワンサイズ大きいの、いまから用意しておいた方がいいかなっ。締め付けとか、良くないんだから』

「いい。良いですからっ! 自分でえら……ひゃぁっ! 触ら……揉んじゃ……」

『柔らかぁ! こ・れ・で、墜としたんだなぁ!? 芸能人の友達ってやっぱ芸能人並みに超可愛い!』


 ベビー用品スーパーから近い、ショッピングモール内のアパレルショップ。


『で、どっちの男の子? あっちのイケメンは誠実そうだけど。もう一人は、貴女たち二人が付き合うには……』

『え? ウチは好き。背が高いし腕回りも。エロいって言うかセクシーなオトコの身体付きしてるし』

『アンタそればっか! 溜まってんの!?』

『あのカラダで滅茶苦茶にされたら、一発で解消だよね。超爽快? 快感?』


 ただ試着室に人だかりができているだけじゃない。

 閉じ切ったカーテンのなか、さっきからひっきりなしにショップ店員が出たり入ったり。


「なぁ、山本」

「ん?」

「想像なんてしていないよな?」


 恥ずかしさ満点の悲鳴、下着についての話が試着室から漏れてくる。

 実際に下着の入った四角い透明プラスチックケースを、ショップ店員が持ち込んでなかに入っていく。


(この状況で想像しないのは男じゃないってね?)


 きっと脱がされている状態に違いない……のに。

 店員が遠慮無しに入っていくから試着室のカーテンはひるがえる。何かのはずみで中が見えてしまいそうでト゛キト゜キしてる。


「……やめろよ。穢らわしい」

「……あ゛?」


 だが、そんな意識は《主人公》からの一言でもぎ取られそうになった。


「《主人公》、いま、なんつった?」

「『穢らわしい』と言ったんだ。お前の事だ。妄想してるのはトリスクトの事だけじゃないんだろ?」

「さてぇ? 男としてはお前がおかしいんじゃないのか《主人公》?」

「なん……だと?」

「仕方ないのさ。ルーリィは言わずもがな。そして《ヒロイン》も可愛いじゃねぇの。試着室のカーテン布地一枚のすぐ先で、服脱いで、下着も試してる。反応するのが男ってもんだろ?」

「……節操がなさすぎるな。トリスクトの甘さがそれを許すのか?」


 いや、完璧にもぎ取られた。

 視線を完全に隣に立つ《主人公》に向ける。

 奴さんは、だが顔を向けた俺を一瞥もせず、試着室を眺めていた。

 エロい思惑? 違う。

 単純に俺に意識を向けたくないのだとありありと見て取れた。


「なんだかお前最近……ウゼェぞ刀坂・・・・・・?」

「そうか。気が合うな山本・・・・・・・?」


 コケにされてる。眼中にないのだと。

 よほど肩に手を置き、無理やり俺の方に向かせてやりたかった。

 だが……


「……だから貴方は駄目なのですよ。ヤマト様・・・・・・・・・・・・・・・・・・」  


 この会話。ネービスが立ち入った。


『正しく、雌の魅力に圧倒される雄の反応♡ 山本様の分かりやすすぎるリアクションはある意味、正解です」

「クラスメイトを性的な目で見る。穢れてる。異性を、あまりに軽んじているじゃないですか?」

「さて? 私から見るに、発情ギリギリで抑えこんでる山本様こそ、トリスクト様、アーちゃんの異性としての魅力を正しく理解しているように思えます」

「風音さん、俺が間違っているというんですかっ!?」

「いえ、綺麗ごととしては正しい。ですが……欲されているとは思われないでしょうね?」


 顔ひきつってならない刀坂・・に語り掛けた風音の顔。間違いなく、楽しんでやがる。


だから奪われたのでは・・・・・・・・・・?」

「ぐぅっ!?」


 いい。何の話かはよく分からんが、俺も今の刀坂にはイラっときた・・・・・・・・・・・・もんだから。


「山本様?」

「ん?」

「見つからないため、まず外見を変えることが基本。変装は悪くないアイディアかと♡」

「いーよ。そういうことにしておく」


 苦しそうに歯噛みする奴の顏が楽しくて仕方ない・・・・・・・・

 そしてそれがここにいる理由だった。

 変装。  

 確かに、普段から制服を着用しているから、普通一般なカジュアルに着替えたら、随分印象も変わる。

 そういうことで先ほどから、時間をかけ、彼女たちの服装は下着から選ばれていた。


(確かに変装何だろうが、意味あるのか?)


 ルーリィに《ヒロイン》。ティーン誌の表紙を飾るアイドルやモデルにも匹敵……以上の美貌を誇る。

 そんなマネキン(失礼)相手に、自身の考えたコーディネートを合わせるのが、店員たちには楽しくてしょうがないように見えた。


(いや、絶対に意味ないわ)


 ただ、あまりにも大げさになりすぎてしまっていた。

 このお店にいる他のお客さんは「何々、撮影?」やら「可愛い! え、モデルさん?」なんて集まってきて……


『ねぇねぇアレ。ルーリィちゃんじゃない?』

『ホントだっ!? テレビで見るより顔小っちゃい。って言うかキレェ~(感嘆)』


(というかこの騒ぎに勘づき、店外からドンドン観客が……増えてきてるような)


 目だないよう変装しようって言うのが趣旨だっけ? 本末転倒じゃないの。


「そういえば山本様、例の件、考えてくれましたか?」

「礼の件?」


 そうこう、状況に狼狽えっぱなしのていた俺に、刀坂を捨て置き、ネービスが問いかけてきた。


「進路について」

「あぁ、そういうこと……って、ネービス」

「ハイ?」

「チ・カ・イ」

「宜しいではありませんか?」

「宜しくないの」


 問いかけてくるのは良いんだ。


「山本様以外、第三魔装士官三縞校の三年生は全員、魔装士官採用通知が届いたようですね? 勿論三年三組も全員。《委員長富緒》様と《政治家正太郎》様は大学進学を予定し辞退した用ですが」


 隣に立ったかと思ったら、さも当然のように俺の腕に体ごと預けるのやめてくれないかな。

 その状態で俺の顔を見上げるの。ちょっと……上目遣いなの。蠱惑的だから。


「トリスクト様にも通知が来たとは知っていますが……』

「『知っていますが』ってことは、ルーリィも辞退したことを把握してるのか?」

「ルーリィ様への負い目などは御座いませんか?」


 聞きたいことがある程度うかがえた。

 進路についての話。プライベートも甚だしい。


「図々しいよネービス。プライベートって言葉知ってる?」

「そのプライベートを知っておきたい。私も……アーちゃんと共に、貴方様の所有物として加えていただけないでしょうか? 《石楠》に来てください。そして私たちの主にお成りください」

「なっ! 風音さん!?」


(本当、ネービスってぇのはお前さん、なーに考えてるか分からない女性ヒトだねホントに)


「……あのさ、意味わかんないよ。んでもって刀坂が聞いてる」

「聞く耳持ちません。今となっては、どうでもいい詮なきこと」


 《石楠》に来いと言うのは、先日初めて会った《ヒロイン》の親父さんからの申し出に応えろと言うことか。

 ただそれが、二人の所有に繋がる意味が分からない。


「そうだ。三組全員が心配してるようですよ? また山本小隊ですれ違いが生じるんじゃないかと」

「俺が願ってやまない正規魔装士官としてのキャリア。手にしたのはルーリィだけじゃない。一年坊二人組なんざ飛び級もいいところ。おいおい。二年の二人に関しちゃ学校が別だぞ……って奴ぅ?」

「辞退したと聞いてます」

「耳ぃ早すぎだ。っていうか、《ヒロイン》がネービスにバラしたのか」

「唯一採用通知の来なかった山本様が……妬ましさを覚えたならと」


(あぁ、なるほど、このタイミングで言ってきた理由がわかった)


「俺が嫉妬ね? 無いよ」

「言い切りましたね」


 試着室を眺める。なかのルーリィの顔が見えた気がした(べ、別によこしまな気持ちからじゃないんだからね! 変な妄想なんてしていないんだからっ!)。


「いつだってそう。東京第一校の《蛇塚なんちゃら》がかき乱したときもしかり。《ヒロイン》の部屋に転がり込んだときしかり。そしてそれは、文化祭での事件のときも変わらない」


 この半年以上を思い出す。


「俺なんかにゃ勿体なさすぎる。自覚もしてる。だから、これを言うのは傲慢すぎるってのもわかってるんだが。その上でさ、俺といることを優先してくれる」


(いつだってそうだ。良いときも悪いときも傍にいてくれた)


 学校生活の大半は、三組皆によって成り立っている。

 一方で私生活における居場所セカイほぼすべて、ルーリィたちによって構成されていた。


(共にいてくれる。それを望んでくれる。ありがたいことじゃないか)


「なんの思惑でネービスがそんなことを言うか分からないが、万が一にも億が一にもあり得ないけど、もし俺が二人を受け入れたとして、ルーリィに申し訳が立たない」

「『なんの思惑』……ですか? その情の強さと深さでは足りませんか?」

「足不足の問題じゃない。裏切れないっつってんの。だから俺が羨むキャリアを、俺の目の前で捨て去ったルーリィ達たちには、怒りも妬ましさも覚えなかった」

「思った以上に、強敵ですね。その顔の癖に」


 ……うん? ここ、怒っていいとこ?

 ネービスはクスリと、ただ疲れたように、呆れたように笑って、俺の腕を解放した。


「キャリアを捨てたのは、トリスクト様たちが山本様と共にありたいという本気の表れだとお感じになった?」

「己惚れてるってのは判ってる。不甲斐ない俺に合わせたんじゃないかと思うことも無いわけじゃない」


(多分、学院に編入したばかりの俺ならきっとキレてただろうな。半年以上経ったからか? そこに本気が見える以上……ね)


「でも考えないようにしてる。ここまでしてくれたルーリィ達に対する冒とく……だろ? 変に邪推して、文化祭で大火傷を負ったこともあったしさ」

「……なるほど?」

「こんなこと、面と向かってルーリィ達を前に口にするなんざ、それこそ恥ずかピーけど。本気には、応えたいかなって」

「……義務感・・・……では?』


 俺の想いに嘘はない……ハズ?

 だが、きょとんとしたネービスに言われ、息を飲みこんだ。次いで笑っちまった。


「ハッ! こういうとき、『違う! 俺は、俺の心に従っているんだ!』なぁんてカッコいいこと言うべきなんだろうけど……義務感もないわけじゃないよ」

「煮え切らないですね。身も蓋もない。恋愛において義務感なんて単語を持ち出されたら、女の子はまず100%冷めてしまいますよ?」

「いいじゃない。義務感なんてなぁ、裏を返しゃ責任感の表れだろ? 寧ろ無責任のままルーリィ達と一緒にいるわけにゃいかないのよ。本当、面倒臭……いや、んなこと言ったら罰当たるか」


 これで答えになるだろうか?


「やはり、18歳ではあり得ない。物凄く達観したセリフ。酸いも甘いも嚙み分けた大人ですね・・・・・・・・・・・・・・・・

「へっ?」

「い、いえ、なんでも」


 多分なってませんね。ネービスの奴、複雑そうな顔してやがりますん。


「少なくとも絶対に俺から彼女たちとの繋がりを切っちゃいけない。記憶とかどうでもいい。全てから逃げ出したとき、俺がいまの俺として生きることを、アイツらは歓迎してくれたから」


ー私たち、きっとキスしてたんだよー


(やめろよ。出てくるな)


「能力とかもどうでもいい。文化祭の一件で思い知った。アイツらの方から離れない限り、その本気には、俺も本気で応えたい」


―『好き』って言ってくれたよね。あの時、どんな反応をすればよかったのかな―


 この想いに偽りはない。胸を張って言える……のに、頭の中、月城さんとの一幕がフラッシュバックのように脳裏に垣間見えるのが嫌だった。

 自分自身の、浅ましさを、突きつけられるような気がしてならなかった。


「……ヤマト様?」

「か、風音さん?」

「これが、貴方と山本様との間、アーちゃんと私の二人ごとにハッキリと明暗を分けた差です」

「クッ!?」

「と……いうより、そもそもあり得ませんね。ヤマト様如きでは・・・・・・・・


(なんで、どうしてこんな時いつも、月城さんが出てくるんだよ)


 ルーリィの事が好きだ。これは間違いない。

 奢ってるとしか思えないが、両想い……なのだと思う。

 あんな綺麗な娘とだぜ? なのに、チャンチャン♪ と、なぜ行かない。


「それともまさかとは思いますが、ヤマト様の中で、ひそかにアーちゃんに対して恋愛感情を持っていた……なんてことはありませんね?」

「そ、それは……」

「なんて、そんなことあり得ませんね。だったら入学してから2年半以上、もうすぐ三年経とうという期間、アーちゃんが持っていた想いに気付かないわけがない」

「だ、だから……」

「お為ごかし(自分のせいなのに、人の為を装う事)を口にするものなど、そもそもお呼びではありません。そんな者、必要ない」

「……あ……」


 なんか外野が騒がしい。でも、懸念が強すぎて耳に入っても頭に入ってこなかった。


『『『『『せ~の……できましたぁっ!』』』』』


 状況の進行が、俺を救ってくれた。

 彼女たちにつきっきりだったショップ店員たちの合図と共に、試着室のカーテンがバァッと開いたのだ。


「「ッツ!」」


 もしかしたらそれは、救いではなかったかもしれない。 

 打ちのめされてしまったから。

 衣装チェンジしたルーリィと《ヒロイン》が、恥ずかし気に顔を赤らめ、目を伏せてお目見えだ。

 登場した途端。何か突風が吹いて、抜けた気がした。


「あ……う……」


 なっさけねぇ。その出で立ちに対する言葉が俺も見つからないでやんの。


(なんか言え……刀坂)


 そんなことを思いながら、俺は知らずのうちに最近ムカついてならない刀坂を肘で突く。

 「お前こそ何か言う言葉はないのか?」と言わんばかりに、逆に突き返されてしまった。


(てめ……)


 やられたら、やり返すのだよ。


(このっ……このこのぉっ)


 やり返したから、さらにやり返されるのだよ。


(てめっ! コラっ! 何しやがる! 往生際が悪いぞ!)


 最初はトントンと軽く肘でついていたのが、ドンドンお互い強くなる。

 次第に、双方ともに胸板を拳で叩き合い、何とかして先に何かを言わせようと争う形となってしまった。

 しょうがないって。

 ピタッとフィットするシルエットに、ギリギリ見えない・・・・・・・・ミニスカートというのが普段纏う制服姿。

 魅力は満点。とはいえ既に見慣れている。


「ど、どうだろう一徹?」


 青いスニーカーは、すらっとした脚の先をキュッと引き締める。

 ハイウエストのロングスカートは、ウエストの細さを際立たせるとともに、脚の長さを強調していた。

 タイトな白シャツは清潔感抜群。デニムジャケットなんて遊び心満載。

 大人クールで、カジュアルなビューティさ。


「に、似合っているかしら?」


 お次はコチラ。

 普段は一見ポッピーでガーリーな彼女が、いまはとてもシック。

 落ち着いた白のタートルネック。赤地チェック柄のプリーツミニスカート。ニーハイソックス、さらにブーツ。

 

(スカート裾と、ブーツ上の狭間。あらわになる肌地……《絶対領域》! うんげー眩しい!)


 幼い可愛らしさを残す。

 一方でなかなかおっきなバスト、ゆったりと形を作っていて……


「殿方お二人には褒め言葉が見つからないようですので私から♡ とてもお似合いですわお二方♡」

「そ、そうかしら。だったらいいのだけれど……」

「まぁ、こうなるんじゃないかと思っていたが……」


 結局、俺も刀坂の奴も圧倒されて何も言えずじまい。


「……お二方」

「あの、大丈夫です。何を言われるかある程度……」

「勘弁してくれぇ」

『紳士失格です(ビシィッ!)』

『「……はい、スミマセン」』


 ネービスに断罪食らうとして、甘んじて受けなきゃ……だよねぇ。


「トリスクト様、そちらのお衣装、全て《石楠》グループよりプレゼント差し上げます♡ 他にもお試しになったお品、全て下宿に宅配させていただきます♡」


 ただ、やはり服装を変えたのは良かったかもしれない。

 分かりやすすぎる魔装士官の制服を変えただけで、雰囲気は変わ……。


「あ、灯里っ!?」


 変わるなんて思ったもんだが、いきなり刀坂が声を張り上げるもんだから。


「は? 何? ヤマト」

「その……き、綺麗だ」

「ヒェッ?」

「か……可愛……とても……可愛い……」


 つーか、いきなりそんなこと言ってきたよ。俺も頭ん中真っ白だよ。


「な……ななな……何突然変なこと言ってくるのよ!? わわわ……私はヤマトなんかに褒められても嬉しくないんだから!?」


(いや、嬉しがれよ)


「ぜぜぜ……全然響かないんだから!」


(いや、響けよ)


「や、山本……そう、山本の為にオシャレしたの! 山本の為に可愛くありたいと思ったの!」


(いや、なんでや。その理論はオカシイ)


「ね? 山本。どう? このコーデ可愛くない?」


(よくわからんが、ここは可愛いというべきなんだろうな)


「あぁ、そーだな。可愛……」

「アナタが言うな!?」

「ぶきゃなでぃっ!?」


 て、展開が展開を呼びすぎてついて行けん。何とかついて行こうというか、併せようとしたというか。

 俺に褒められたいって言うから褒めただけなのに……


(なんで秒で間合い詰められて、俺の鳩尾に膝ぁ突き刺さってんの!?)


 瞬間で息が詰まるというね。変な悲鳴と共に。


「さてぇ? それじゃ俺も行ってくるかな?」


 いやいや、これもいい踏ん切りかもしんない。


「行ってくるとは? 一徹。どこに?」

「チョイチョイ帽子とグラサンの一つでもね」

「君がアクセサリーを買いたいと思ってたは思わなかった。ちょっと待っていてほしい。すぐに私も……」

「あー、いやいいのよ。今の俺の状態でルーリィに付いてもらっちゃ色々都合が悪い」

「都合が悪いとは?」


 滅茶苦茶盛り上がりを見せる店内。

 もしこの騒ぎを聞きつけて、変なカメラマンがいないとも限らない。


「もう、ルーリィの人気は国民的レベルになりかけてる。そんな隣に、こーんなパンピーモブが立てないっしょ?」


(だとしたら俺も今のままで一緒に行動はできないだろうしなぁ)


「……わかってるだろうけど一徹。私は名声などに興味がない。もしそんなものが君といることに邪魔建てするというのなら……」

「『有名であることそんなもの私はいらない』だろ? わかってるって。ま、この場を抜けるのは少しだから、チョチョイと待っちゃってよ」


 「そんなものいらない」か。これまでルーリィから何度贈られてきた言葉だ?

 でもね、今回ばかりは違う気がする。

 誰かからの人気や名声と言うのはきっと、ルーリィが望む望まないは関係ない。


(グラサンと帽子。適当でいいなら100均で構わないよな?)


 そういうわけで、一緒に来た奴らを残し、俺一人だけ離脱することにした。



 そうして一徹は……出逢うことになってしまう・・・・・・・・・・・・……















お話とは関係ないですが、ノリで、本章だけ全話投稿してこうと思います。

本章終わったらまたその次章から5話に一回投稿な感じで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る