テストテストテスト46
「え? これから?」
「うん、久しぶりにどうかなって」
アメフト部の表敬訪問を終えて大学の正門を出たところ。
積みゲーの消化、最近買って読めてないラノベの為にさっさと帰宅しようと、月城さんに別れの挨拶を告げたとこで呼び止められた。
「晩御飯の準備が出来てないんだ。これから寮に戻って支度を始めるのもなんだし、何処かで食べようかなって」
「そか、月城さんは毎日自炊だもんね。と言うか、女子寮住まいの全女子訓練生は、基本自炊か」
「また最近忙しくなってきて、料理に時間もかけられなくて。でも一人でお店に入るのも恥ずかしいし」
(その申し出は、嬉しいけんども……)
早く帰りたいのは決して、2次元ラヴだからだけじゃないぜ。
ルーリィやシャリエールの出張が無い日、皆で夕食を囲むことができる。
(当たり前と思ってた小隊皆との時間。彼女たち二人の特務によって頻度少なくなって、最近それが実は、とても大切モノなんだと気づいた)
「やっぱり……トリスクトさんと食べたい?」
「あ、いやぁそんなそんな。いきなり、変なこと言うなぁ」
「ご、ごめん」
ルーリィの名前を耳にする。
(そうだなぁ。『一緒に居ろ』と言った癖して、最近ルーリィとの時間は一層減った。だけど月城さん……)
「ま、まあ週2、3で終日桐京に行っちゃうから。隊員そろっての訓練も出来てない。模擬小隊対抗戦頻度も減った。せめて夕食だけでも揃うなら、ミーティングのいい機会にもなると思って」
「そうなんだ」
なぜだろう。月城さんから耳にすると、ドキッとした。
「……あ……」
「うぅ……」
二人とも、次に何から切り出そうか分からず沈黙。
互いの出方を伺うようにじっと見つめ合う。お見合いって奴だ。
「それじゃ三縞広小路駅近くのスポーツカフェで18時半。see you at the next」
「「ハッ?」」
新たな展開呼びしものは、フウニャンだった。
「私も今帰り。そしたら、正門前でいい雰囲気出してる二人が見えてさ。羨ましくなって絡んでみたー」
向き合う俺たち二人の横に立つ。
「い、いい雰囲気って」
「そうっすよ。月城さんに
「あっ……」
「フンフン……フゥン? そういう事……」
肩に手を置いてきて、覗き込むようにして悪意のある笑みを浮かべていた。
「何となくわかって来たかも」
「は?」
「いや、なんでもなーい。さてさてさて」
(お、ラジオでよく聞く奴の《生さてさてさて》頂きましたっ!?)
「《キックオフ》って言葉知ってる?」
「試合に置いて初めてボールを蹴るところから試合が始まる。サッカー用語っすよね。ラグビーやアメフトも、フットボールの一種である以上、同じだったような」
「そう。でね? 実はビジネスや複数人で一つの目的のために動くプロジェクトでの一発目の会議の事を《キックオフミーティング》って言うのね? もし時間が有ったら二人と機会を今日持ちたいなーって。思い付きだけど」
「はぁ」
「依頼した私はクライアント。山本くんは依頼を実行に移す実働部隊のトップ。月城さんは私の依頼を受け付けた窓口だけど、生徒会長職。だったらプロジェクトに向け懇親の場があってもいいよね」
「今回のプロジェクトでお付き合いをさせていただく中で、少しでも交流が厚いほど、お仕事がしやすいということですね?」
「そそ、月城さんは山本君にご飯誘ったってことはこのあと時間は大丈夫そうだね。じゃ残るは山本君かなー?」
「ふごっ!?」
声をかけてきた理由はわかった。フウニャンの説明も、PV撮影プロジェクトの事を考えたら納得も出来る。
(でもゲームしたい。マンガ読みたい。自分の時間も欲しいのよさっ。ルーリィと過ごす時間だって、桐京出張があるなら今まで以上に真剣に……)
「ま・さ・か、現在売り出し中の超人気モデルのフウニャンからのお誘いを断る男の子はいないよねぇ」
(あ駄目だコレ。詰んでる)
「拒否られたら、もうやっていけないなぁ。呟きアプリの《チャッタラー》やSNSの《クラシックポンド》に投稿不可避。でも暗いネタは
「は、はは……ちょっと待ってください? ……ああルーリィ? 俺だオレオレ。詐欺じゃないよ?」
何となくヤバい匂いがした。
俺がポケットに手を突っ込んで携帯端末を取り出したのはすぐの事。
「……そういうわけでフウニャンさんと会食することになった。悪いけど今日は俺抜きで飯食っちゃって? あー、またそんな気遣いの言葉貰っちまって。俺もそっちに居たかったんだけど……」
速攻ルーリィに事情を説明いたしますん。
当然だ。数十万人のフォロワーが国内にいるフウニャンが俺ネタでそんなこと投稿してみろ。下手すりゃファンから「
「いま家の了解が取れたんで。是非とも参加させてください」
「あー君ね」
「はい?」
「女の子の前で、他の女の影をチラつかせちゃ駄目だよ?」
「はひ?」
「わかってる?」
(わかんなぁい)
なんでやろ。フウニャンの誘いに乗って怒られるの、なんでやろ。
美人っていいね。どんな顔しても美人だから……俺、なんか失敗したのか、怒っていらっしゃるけど。
☆
「それじゃ、お近づきの印にカンパァイ♡」
「「か、乾杯っす/乾杯です」」
誘われるまま付いてきた俺と月城さんが入ったのは、三縞から
スポーツカフェと名前を聞けば健全そうだが、夜はお酒を出すバー的営業をしてることもある。
お酒を出す店ってことは、大人なお店ってことで。何となく緊張してしまう。
「あー美味し。ヤバ―進んじゃう。今日は酔っぱらっちゃうかな。危険だね」
「いや、お酒入ってないじゃないっすかソレ」
「いーのいーの。こういうのは気分なんだから。さ、食べて食べて。育ち盛りなんだし。普段から訓練してるとよく食べるでしょ?」
アメリゴンダイナーの雰囲気が強い店内。
メニューもアメリゴらしさに包まれていた。
(全部美味いに決まってる。でも駄目、これ絶対良くない体重増加まっしぐらな奴だ)
机に圧し並べられた料理に思わず喉がなった。ステーキだ、フライドチキン、BBQポークリブ。
フライドポテトにオニオンリングにクラムチャウダー。
ちょっと変わり種で行くと、《ディープフライドステーキ》なるギトギトパワーワード炸裂なものまで。
「山本君凄いね、やっぱりモデルさんって」
「だなぁ。俺らは防衛と戦闘。フウニャンさんは見られることが専門。同じく体が資本で商売道具なのに、違うと、思い知らされる」
ただフウニャンさんと言えば、たかだか食事の場面でもプロ意識を見せつけられた。
フゥニャンの前に店のオーナー店長さんが持って来たのは、Mサイズピッツァ思わせる直系の丸い平皿。
色とりどり、10種類以上の野菜をふんだんに使った山……否、メガ盛りサラダ。
「チョット頂戴?」
出された肉料理一種類ずつにナイフを入れる。厚めのスライス2枚をトングで摘まんでサラダに乗せた。
「ふんふ~ん♪」
その上から、香りからでも酸っぱいと分かりそうな透明なドレッシングをかける。
「ここに温玉落として、粉チーズ。クランチーミックスナッツ振りかけて。出来たっ」
言った通り。だからフウニャンはポケットから民間用スマートフォンを取り出した。自分でカスタムしたサラダの出来栄えに満足し、SNSアプリに投稿しようとしている。
「綺麗な人は、そういうものを食べるんですね。炭水化物は取られないんですか? 私は、無理そうだな」
「慣れちゃえば意外と大丈夫。それに一見野菜ばっかり食べてるように見えて、炭水化物以外では結構バランス取れてるんだ。あ、でも朝だけは炭水化物食べるよ? 一日動くための第一食だし」
「今日は肉料理の種類も多い。取った一種二キレずつでも、結構サラダを埋め尽くしてる。って言うかこの組み合わせ……マッチョ?」
「マッチョ言わない山本君」
「言われてみたらホントだ。卵、チーズ。どれも筋肉を形成する栄養素を多く含んだものばかり」
「お肉はほんの少し脂肪を残したものが好き。腹持ちいいし、満足度も違う。後は9割がた野菜を軸にタンパク質かな。《パワーサラダ》って呼んでる。しっかり食べた後は運動。筋トレが一番かな」
「贅肉つきにくい食事ながら満足できる。筋肉形成に効果ある食事を続けて筋トレする。筋肉増えりゃ基礎代謝が増す。何もしなくても脂肪が燃焼されるって身体ってこった」
「さすがはモデルさんだね」
「もっと褒めて! 褒められて伸びる子だから。今の食事で褒められるだけのキレイをキープで来てるって思える。じゃなかったら一日中炭水化物食べていたいもん」
そんな人の前で高カロリー爆弾な品々に手を伸ばすのは若干気が引ける。が、カスタムパワーサラダをモリモリ食べ始めたフウニャンが「気にせずバンバン行って」と促してくれた。
流石、大人は気が利くと思う。
おかげで始めは「ホントに食べていいの?」とおっかなびっくりだった俺たちも、次第に手を伸ばすスピードが速くなっていく。
「それで? 月城さんが山本君の編入に向けて家庭教師役を務めたんだ」
「ガッ! ケホッコホッ……ふ、フウニャンさん!?」
「あぁ、そうなんすよ。出会う前は俺の方にも色々あったらしいんでなかなか大変だったんですけど。体力面とか、学力面とかフォローアップを通して、変な沼から引き揚げてもらいました」
変な話だとは思わない。
先日初めてフウニャンと会った時の自己紹介で、月城さんとの関係性は伝えている。だのに、なぜか月城さんは声を上ずらせるのかがわからなかった。
「そしたらさぁ、なんか私の番組にチョイチョイ出てくる彼に似てるっぽい」
「ふ、フウニャンさんそれは……あ、あのっ!?」
「あ、僕も《パニックフィールド》聞いてるんで知ってます。《編入男子》君っすよね?」
「kジオp「:klmjl;:@p:jkkjsdふぁおpkjbcxvkjl背wh日dxb柄wbj!?」
と言うか月城さんは何に驚いているか分からないが、意味不明な叫びをあげ、両手で頭を抱えるじゃないの。
「結構親近感湧くんすよね。編入目指して《生徒会のウサギ》さんに勉強の面倒見てもらったところ、やっと編入した学校で加わったクラスが、エリート揃いの超進学クラス的な場所だったこと」
「そうかそうか親近感湧くんだ。例えばそれは……甘々エピソードにも共感しちゃうのかな?」
「あ、アマぁッ!?」
差し込まれた問う。今度声を張り上げたのは俺の方だった。
「どうかなぁ~?」
どげん答えんばいかんね。
共通点が無いわけじゃない。
(夏祭りでの告白。ラジオで聞いた時、《編入男子》君が伝わってないと思ってた告白は、実は《生徒会のウサギ》さんに聞こえていた。俺も告白した。だけど……)
と言うか。《編入男子》君とのエピソードは、俺のものとよーけ似ているから。
(恥ずかしかったから届かせるつもりはなかった。声も小さくして、俺たちの間には扉も……)
―『好き』って言ってくれたよね? どう反応すればよかったのかな?―
「ッツ!?」
夏祭りの下りを思い出す。そして先日言われたことが急に思い起こされ、思わず月城さんに顔を向けてしまった。
「ど、どうした……のかな山本君?」
俺が急に向いたことに驚いたのだろう。月城さんは顔を引きつらせながら首をかしげていた。
(まさか……届いていた?)
「流石にこんなことはないだろうけど。ねぇ、月城さん?」
「は、はい……」
「婚約者っている? いや、いた?」
「なぁっ!?」
「《編入男子》君が何処かで、婚約者にイジメられる《生徒会のウサギ》さんを守ったってエピソードあったなぁって」
(確か、その話は……)
「でも婚約関係があるから、《生徒会のウサギ》さんはそれでも婚約者に寄り添った。その振舞いは《生徒会のウサギ》さんの学校生には面白くない」
年度末競技会に向けた抽選会での一幕。
月城さんの唇を無理やり奪い、人の目がある中で月城さんを辱めた久我舘隆蓮をぶん殴った。
月城さんはそれでも久我舘隆蓮に付いた。
それは、
「孤立しちゃった……でもそこで《編入男子》君だけが味方になった」
(助けるしかなかった。助けたいじゃないか。月城さんは俺の第二の人生において一番の恩人なんだぞ)
「《生徒会のウサギ》さんからのお便りが一気に面白くなってきたんだよね。今まで好きだって言ってくれた《編入男子》君の事を、好きになっちゃった。無理ないよね。私だってホレるかも」
(それは、そこが……違う。共通点じゃない。俺如きを月城さんが? ハッあり得ない)
「でも、そこで……
口に運んでも運んでも減らないフゥニャンのパワーサラダ。食事とマッチするか謎な、
(かけ違ったってなんのことだ? 《生徒会のウサギ》さんが《編入男子》を好きになっちまったこと自体がか?)
ふと、傲慢すぎる疑いが頭に生まれてしまう。行けない。始め小さく浮かんでしまったものは、ドンドン膨らんでいくじゃないか。
(違うって、あり得ない)
パクパク、意識的に料理を取り口に突っ込む。それはそれはもう、すごい勢いで。
何でもいい。口に入れ、咀嚼することに意識を働かせて、不遜すぎるイメージをかき消したかった。
(まさか月城さんが、
自己過大評価が過ぎるのも嫌な理由の一つじゃない。
「いつからなのかな。《生徒会のウサギ》さんが《編入男子》君を好きになったのって。嫌な婚約者がいたから気持ちを抑えていただけで、実はずっと好きだったって」
ポット浮かんだ妄想が大きく膨れ上がってくるとなると、それは無条件で俺が望んだ展開故じゃないかと思ってならない。
すなわち、俺はまだ、
(ルーリィが、シャリエールがいてくれるのにっ!?)
「でもねー……その時にはもう、隣に別の女の子が至って話」
「うっ」
「正直、凄い気になっちゃうんだよね。あれからさ、《生徒会のウサギ》さんからのお便りは来てなくて。私のラジオ番組から離れちゃったのかなって」
フゥニャンは「どうしたのかな、元気してるのかなぁ」と頬杖ついて顔を俺たちから背け、遠くを眺めるような。
「あ、まさかだけど、話がここまで共感してるってことは無いよね二人とも」
「あ、あの、どういうことでしょうか?」
「うぅん?」
とんでもな話の展開に、俺と、そして月城さんが食事の手を止めていた。
あらぬ方を向いていたフゥニャンさん。頬杖ついたまま、イタズラ心の見える笑顔でこちらに向き直した。
「た・と・え・ば・さぁ……」
月城さんも料理に手を付けなくなってしまっているのが、また嫌……
「二人の間に、『好き』が、生まれちゃった……とか……」
「「ッツゥ!?」」
(やべっ)
言われた……瞬間だった。
ガラスの砕け散る音とパシャァと液体が床に広がり、飛び散る音。
「す、すみません俺」
慄き、のけぞってしまった。不意に膝頭が料理が圧し並べられたテーブルの脚にぶつかって、飲んでいたコーラを、グラスごと俺は床に落としてしまった。
「あ、ごめんね。いきなり変なこと言っちゃった。邪推が過ぎたかな。驚いちゃうよね」
慌てて溢したコーラとガラス破片を片付けようとしたのだが、駆け付けてくれた店員さんの方で処理をし始める。
「って、そんなことあるはずないか。なんて言ったって山本君にはカノジョいるんだし」
嫌な流れだ。自分で片づけることに意識を没頭させることで邪念を払いたいのに、コレではフウニャンさんとの会話を続けざるを得ないじゃないの。
「か、カノジョ……すか?」
「カノジョでしょう? 山本君の耳を引っ張ってたこの前の女の子。私の登場にヤキモチを焼いちゃうくらいだし」
「そ、それは……」
そうして実際に話題はルーリィの事に移るじゃないの。
構わないはずだ。別に後ろめたいことじゃない。聞かれて、困ることはないはずだ。
(なのに……)
「カノジョ……なんだよね?」
ジッと俺を見つめるフウニャンさんの瞳は、何か見定めようとしているかに見える。少しだけ声が低くなった。
「カッ……」
(カノジョだっ!)
「カッ……カカッ」
何か、雰囲気があって、息を飲んでしまう。
(言えよ。言っちまえ)
声をひり出せない。
(なんでだ。どうして出てこない)
「カノ……」
言おうとして、喉から出てこない。「カ」と言う声を上げたとき、隣の月城さんがビクッと身体を震わせたことも、俺に言いきらせない。
「あぁ、そっかぁ……」
そうして……
「まだ、
フゥニャンさんが断言してしまう。まだこの時、この場において、俺とルーリィはカレシカノジョという関係ではないのだと。
「い、いや……」
「だったら恥ずかしがらなくていいじゃん。あの子の目の前で「カノジョ」発言は恥ずかしいあるあるかもしれないけど。この場にいるのはどうせ私と、
それは、とてもとてもマズいと思う。
少なくとも月城さんには、俺とルーリィがそういう関係であることを認識してもらわなけりゃ。
(なぜ? 決まってる。踏ん切りがつかない。踏ん切りをつけたはずなんだ。俺は月城さんを諦めた。そして月城さんは俺の事が好きなんてあろうはずがない。何より……ルーリィ達に失礼だ)
なのに、決定的な発言ができない。それこそ、俺が月城さんをまだ諦められきれていない証明じゃないだろうか。
想いを向ける。「好きだ」って憧れ眺め続けられる存在を、俺ごときがキープしているような。
「山本君さ」
「な、何すか?」
「モテるらしいじゃん」
「な、何言ってんすか。ほら見てくださいこのイケメンとは言えないが、ブサメンとも言いたくないフツメンと信じたいこの顔。でっかい図体は細マッチョ好きらしいこの国の女子のお眼鏡には敵わない」
「バカで、トーク力があって、面白い。優しそうだし、女の子とか守っちゃうんだ。悪くないと思うよ?」
「ほ、ホント、いきなりなんですか? 何が言いたいんですか?」
「カノジョがいないってことを、いま山本君は証明したのね?」
なかなか料理に手が行かない俺とは違って、フウニャンさんはサラダを口に運ぶ。
「だから山本君はまだ、誰か一人決まった相手を自由に選ぶことができるって言うのと同時に……」
シャキシャキと言う音がいやに聞こえるのは、野菜が新鮮だからか、それとも……
「誰かから想いを向けられても『問題ないですよ』って自分で言ってるのと同じだから。つまりそれは誰かが、山本君を好きになっても良いってことだからね?」
「ッツ!?」
「そりゃそうだよね。選んでないもん。選ばれてもいない」
俺がフウニャンさんに集中しすぎてるからか。
「だから、君には仮に想いを向けられたとして、迷惑に思うことも、悩む権利はないはず。そういうことなんだからね?」
(ソイツぁ……)
「と……いうわけで、ご馳走様っ!?」
「あ……え??」
ミスったと……思わざるを得ない。
「ゴメンね。チョットこの後またお仕事入ってて、もう行かなきゃ」
話に圧倒されてばかりだったから、料理に半分ほどしか俺たちは手が付けられていないのに、その間にフウニャンさんは食べ切ってしまった。
完食したフゥニャンさんは、しかもこの後予定があるって話じゃない。
「二人はまだ全然手を付けてないみたいじゃん。今日は私のオゴリ。なんだから、ちゃんと食べ切っといてよぉ?」
(お……い? 待て。その……流れって……)
「マスター。クレジットカードで」
はきはきした物言い。テキパキした動きで椅子から立ち上がり、セカンドバッグを取ったフゥニャンさん。右手人差し指と中指に、プラチナ色のクレジットカードを挟んだまま、レジに向かって行った。
「それじゃ改めて、今回の依頼を宜しくね。月城さん、山本君。じゃねっ?♪」
人懐っこそうな笑顔でパタパタ手を振った支払い終わったフゥニャンさんは颯爽と店から離れていく。
と、言うことは……だ……
「た、食べよっか山本君」
「お、おう……」
残されたのは俺と月城さん。二人きりでの食事と相成っちまう。
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