テストテストテスト43

『セーンパイっ♡』

「やめぇや。キショイ」

『酷いやないですか! ワシらからしたらよっぽど胡桃音の方が……』


 ルーリィが学院にいる日は、休み時間になっても紗千香は出てこない。

 ありがたや神様仏様ルーリィ様。貴女がいてくださるから静かな学院生活が叶いますん。


(……の、はずなのに)


「せっかく今日は紗千香の来ない、優し~い一日が過ごせると思ったのに。騒々しい野郎代表格がわざわざ教室に来て、俺の机の前に立つって、なんの嫌がらせだよ」

「うん、聞き捨てならないよ。まるでのいぬ間に油揚げをすくいに来るトンビの様だ。紗千香の奴はまったく」


 《山本組》の舎弟の中で、とりわけ勝手にナンバーツーを自称する関西弁のデカブツ。

 両手を俺の机に置いて、前傾になって俺の顔を覗き込む。苦々しげな顔してやがるとかちょっと生意気じゃないの。


「フゥニャンや」

「は? フゥニャン?」

「ワシら三縞が生んだスーパースター。いるやないですか。今大人気のモデルはん」

「あ、あぁ、アレだろ? コミュニティFMで《パニックフィールド》って番組やってるディスクジョッキーやってる女子大生JDDJの」

「今、学院に来てますねん!」

「お、マジィ?」

「兄貴探してますのんて!?」

「……お?」

「だ・か・ら! 兄貴の事探してる言うてますやろ!? 何や大学の事で月城会長に相談事ある言うて、頭数必要やさかい《山本組》組長にも直接お話したいいうことで!」

「ふぅーん……ん?」


 何が「ワシら三縞が生んだ」だ。どの口が言う。お前は関西出身やろ・・と、エッセエセな関西弁を頭に浮かべてみる。

 話が何となくかみ砕けたようなぁ。


「ってぇ! このバカチンが!」

『あ痛っ!』

「そ~いうことは、もっと早く言えよ!」

『だ・か・ら、最初っから言ってますやん』


 フウニャンってったらお前、マジで綺麗だぞ・・・・・・・デジマレーキーぞだ・・・・・・・・・

 雑誌でご尊顔する際には、遠い世界、世界が違うからどうにも気にしないが、ご本人がいらっしゃるならその限りじゃないんだからね。


「オイ、俺のネクタイ。曲がってないか?」

『曲がってへん』

「どだ? このスマイリィ。人当たり良さそうか?」

『そらもうバッチリやで!』

「イケメンか?」

『……許したって下さい』

「バっカお前、そこは嘘でも世辞でも俺をおだてておく所でしょーがっ」

『嬉しいでっか? そんな見え透いた嘘でおべっか使われて』

「はっ、いいんだよ。こういうのは気分だから気分」

「……あーうん、取り繕ってるところ悪いんだけど、相談しに来ただけで男の子あさりに来たわけじゃないんだから、そのあたり気にしなくていいんんだけど(笑)」


 芸能人のモデルさんに会うってなったら身だしなみは重要だ。

 舎弟にヨイショしてもらうことで、少しでも美人さんに出会う前に気持ちを盛り立てようとしたところ、そんな呼びかけを食らってしまう。

 大事なことなので一応言及しよう。声には(カッコワラ)がついてますん。


「山本君、ゴメンね。お客さんなんだけど……」


 あぁ、月城さんは今日も可愛い。だが残念ながら今日のところはそれどころではないのだよ。


『「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! フウニャーンっ!?」』

「どもーっ♪」


 問題はその隣に立っておられる。すらりとした肢体をお持ちなお姉たま♡


「やっべ!顔マジちっちぇ!?」

『そうですねぇ! 8頭身いっとるんやないです!?』

「滅茶苦茶、脚なっげぇぇぇ!」


 ウチの三組の野郎どもはテレビや雑誌なんて俗世ごとに疎いから反応は鈍い。

 構わない。だったら判る俺と舎弟だけで楽しもうじゃないか。


「えぇっと、うん、褒めてくれるのは嬉しいんだけどさ……」


 キラキラァな後光がさしてる。なんたるフツクシー笑顔か。

 

(これが、芸能人オーラか!?)


「多分、そこの三年生の君、わざと驚いてるよね?」


 と、ありゃ? その笑顔は少し苦さが混じってるような……


「一徹、君もしかして私が傍にいることで、安心して他の美女を楽しんでるんじゃないかい?」

「へ?」

「君の耳を引っ張って隣でヤキモチ妬いてる娘、寧ろ私がビビっちゃうくらいにキレイなんだけど」

「はひ?」


 有名人に出会えて興奮していたこともある。言われるまで、耳を引っ張られているなんて気付かなかった。と言うより、痛くないよう耳たぶを指二本で挟んだ形。


「って言うか10頭身行ってない? こんなこと言うの複雑なんだけど本職モデルわたしより華がある」


 なんなら、フウニャンはルーリィ一目見て白目剥いてるって言うね。


「だって。少しは私の事見直してくれたかい?」

「なーに言ってんの? 俺はルーリィを見損なったことなんかないんだぜ?」

「少しずつ、女を喜ばせる口が旨くなった。悪い兆候だ」

「さてぇ? そんな、何人もの女の子と旨いこと同時進行できるような器用さは俺にはないよ」

「ないから困ってるんだ。女子たちに一歩踏み出させてばかり。ジゴロか君は?」

「言い方」


 あらま冗談も過ぎたか、頭にトンとルーリィの軽いチョップが降ってきた。


「……もしかしてだけど、そこの彼、意外とモテるの? その顔で?」


 あぁうん、きっとなんとなしに本音が出たんだと思ふ。

 でも、ほんの少し、正直すぎるフウニャン姉さんのセリフに、お涙ぶわぁ行きそうになった。


(ん、何だろ月城さん。フゥニャンに対して、なんか……困惑してる?)


 ちな、我らがルナカステルムは複雑そうな顔でフゥニャンを見ておられました。



「じゃあ改めてになるけど自己紹介するね。私は……」

「ダイジョブっす。この三縞でフウニャンさんのこと知らない奴いないっすから」

「マジィ? メッチャ嬉しいんだけど。ってか君さ、高校生の癖に大人か。褒め上手すぎ」


(それって誉め言葉け?)


 場所は、変わらず三組教室内。

 机を四つ並べて長方形を作り、それ挟んだ正面にフウニャンさんは座っていた。

 対して俺は、月城さんと隣り合って座っている(なぜかルーリィの目が冷たぁい)。


『おい、見ろよフウニャンだ』

『滅茶苦茶可愛いよぉ。ウチ先月号でフウニャンのコーデにあったポーチ予約しちゃった』


 な、なんか、座りが悪い。


「えっと、ホントにここでお話しされます? お望みなら別の場所にしますけど」


 場所は変わらず、三組生もそのままだ。そして教室外からは生徒会員、《山本組》組員はおろか、多くの男子女子が挙ってた。

 

「ん~ん。気にしないで。私の仕事は見られることだし。たくさんの目があるからってボロが出るような柔さもないから」

「「か、格好いい/かっけえ……」」


 なんなら申し出た月城さんに、俺まで集まる視線にビビってるっちゅうに、フウニャントップモデルは、笑い飛ばしていた。


「あ、こちらこそ改めて自己紹介させてください。生徒会長の月城魅卯と言います」

「知ってる。月城さんは三縞で有名人だもん。頭良くて可愛くて、しかもあの文化祭の時は凄く格好良かったって大評判」

「そ、そんな私は別に」

「謙遜しちゃ駄~目。実は隣の裾乃市のウチの大学にはファンクラブまであんだけど?」

「え、えぇぇぇぇぇ!?」

「『かぐや姫』なんてあだ名で呼ばれて。でもこうしてみると可愛いから、ウサギって言う方がピッタリかも」

『『『『『「我らは月城魅卯親衛隊インペリアルガードっ!?」』』』』』

「うわぁビックリした! 君っ! 何っ!?」

「あ、スマセン。つい条件反射的に」


 まずは月城さんの紹介。大学のファンクラブってことなら男共に違いない。

 すーぐ俺の頭の中で情報は野郎危険対象と変換されてしまう。

 それはどうやら俺だけではない。

 この状況を見守ってる野次馬の人垣に隠れて見えないが、どこぞに同志たちがいるらしい。

 図らずも同じ話で、同じ反応をしてしまったのだろう。


「で、こっちが……」

「三年三組山本一徹っす~♪ 月城さんにはこの学院の編入試験の折、受験勉強の面倒を見てもらうところから世話になってて……」

「ふぅん……んっ? この娘の……世話になってたの? 編入試験から?」

「え? あ、はぁ、まぁ」

「……ちょ……ちょっと山本君っ!?」

「え? のわぁっ!?」

「余計なこと言わなくていいから!」


 今度は、月城会長が声を張り上げる。

 俺はビックリしたのだけど、フウニャンに関しては……


「……生徒会。カグヤ姫。ウサギ。編入受験サポート。へぇ?」


 なんぞ驚きに目を剝いてから、ニヤリとした顔を見せた。


「そういや思い出した。山本一徹って名前、結構聞く。君さ、友達、多い方でしょ?」

「ど~っすかね。僕は友達が多い……とか恐れ多くて言えません。この学院には俺なんざと仲良くしてくれる心広い奴らが多い。単純にそれだけです」

「謙遜凄いね。それともおどけてる? そうそう、少しずつ思い出してきた。《山本組》って訓練生集団のトップ」

「トップって言葉もしっくりこないんですけど」

「私の友達が合コンで酔いつぶれたときに助けてくれた話も聞いてるよ。あの時は、ありがと」

「はは、なんか……照れますねぇ」


 何となく、俺を値踏みしている視線と言いますかぁ。

 恥ずかしくなって、後頭部ボサリボサリ不可避。


「あ、あのっ! 今回いらっしゃった理由を聞いてもいいでしょうか!?」


 美人さんからの視線に耐え切れそうにないのは俺なんだけどね、なぜか月城さんがいきなり声を絞り出した。

 

「あ、そうだね。リアルに持ち込むのはマナー違反か・・・・・・・・・・・・・・・・


 フゥニャンはそれに対してニっと笑う。オサレーなバッグから、クリアファイルに入った書類を机に置いた。


「ミュージックPVの撮影……すか?」

「そう。来年オリンピックがあるでしょ? 色んなレコード会社が応援ソングを製作していくんだけど、今回来たのはその一環で協力をお願いしたいからなんだ」

「……モデルさんにしては、随分企画営業みたいなことされるんですね? 音楽関係でジャンルも違うような」

「話を聞いて、『私も協力したーい』ってね? 何でも挑戦したいっていうか、なんにでも頑張ってる私リア充的な?」


 書類に目を落とす。

 どうやらオリンピック応援ソング用のPV撮影には違いないようだ。

 各種様々な競技模様を、ビデオ用の素材として撮影したいのだとか。


「来週、三縞の町はずれのフィールドで、アメリゴンフットボールの関東二部リーグの決勝戦があるのね? 機材の運搬とか、警備をお願いできないかなぁって」

「関東……2部リーグ? 2部ってことは1部リーグもあるんじゃないっすか? そっちの方がトップリーグのような」

「あるけれどホラ、撮影スケジュールって言う大人な事情があって」


(なるほど、ご都合主義と言うやっちゃな?)


「で、出来れば同日に、柔道の試合模様も併せて撮影させてもらいたいんだ」

「……アメリゴンフットボールの試合については決勝チームのメンバーが出ると思うのですが、柔道の方は?」

「三縞校からやってる子出してもらえちゃうと大助かりなんだよね」

「そうですか。協力したいとは思いますが、訓練以外の事で訓練生にケガのリスクが生じることだけはなるたけ避けたいと思ってるんですけど」


 ……なんか不思議な感覚。

 三縞校が三縞市からの依頼や相談事を受けてきたのは知っている。相談窓口は生徒会。こうして月城さんが直接伺うこともあったのだろう。

 こうしてお仕事相談を実施する月城さんを見るのは初めてだ。

 受け止めるべきところは受け止め、示すべきところはちゃんと伝える。

 ロリリでキャワワは今更なはずなのに、なんか大人びていて目を引いた。


「それなんだけどさ、もし出演予定の柔道選手の一人が魔装士官訓練生だったら・・・・・・・・・・・どうかな?」

「「えっ!?」」


 と、そんなときに差し込まれる驚き情報に息を飲む。


「第一学院桐京校。3年生の絡坐修弥からみざしゅうや君」

「そ、それって!?」

「……誰?」

『『『『『えぇぇぇぇぇっ!?』』』』』


 うむぅ、見事にまぁ月城さんと俺と野次馬共の反応が異なるこって。


「知らないの山本君! 来年のオリンピック出場が目される桐桜華柔道中重量級のエース」

「知らないけど……ホント桐京校は粒揃いだね。お腹痛くなってきちゃう」

「指導してる人が凄いんだよ。同じく中重量級でオリンピック3連覇の……」

「嘘ッ!?」


(……ん?)


 興奮気味に語る月城さんと無知過ぎる俺との温度さ。

 だからこそ、あらぬ方向からの大声に振り向いた俺は、両手を口元に目を見開く《委員長》に首傾げちまった。


「どしたの《委員長》?」

「あ、その……」

「もしかして、ファンだったり?」

「え? いや、そ、そうですね。世界柔道において、桐桜華にその人ありとうたわれるくらいですから」

「フゥン?」


 なんだかセリフと表情がマッチしないのだが。


「それでどうかな? 同じ魔装士官学院で違う学校の生徒。相手はオリンピック参加予定選手。撮影のために一緒に組んだ相手は試合……組み手……乱取りって言うの? できるんだけど。興味ない?」

「それなら……ありかもしれません。年度末の競技会に向けて分析もできるかもしれないし。どうかな山本君?」

「月城さんが決めるなら協力は惜しまないつもりだ。オリンピック候補柔道選手の相手が必要なら、《山本組》にはおあつらえ向きの舎弟たち鉄砲玉を何人だって用意する」


 構わない。《委員長》より、注視すべきは月城さんがどのような判断をするかだ。

 

『き、聞きやした? 『協力する』と言いながら、俺たちに丸投げじゃあないですかい?』

『ひ、酷いやないですか兄貴!』

『あ、兄貴は多分自分で相手するつもりはなさそうですね』


 何か何処かから聞こえてくる。


「ま、桐桜華柔道の礎になるために散っていくなら、後輩共も本望でしょ?」

『『『『『兄貴! そんなぁっ!?』』』』』


 全力で無視しようと思います。


「ち、散らしちゃ駄目だよ。競技会が控えてるんだから」

「うんっ♪ でも柔道シーンの撮影についてはOKそうね」

「と、フウニャンすみません。あくまで依頼を月城生徒会長が受けたならって話ですから」


 柔道の件でケリがついた。

 いつしか三縞校が協力を腹に決めたようにもとらえているようだから一応釘を刺してみた。


「月城さんっ! お願いできないかな? 『訓練以外での怪我は』って言ったけど、アメリゴンフットボールの試合は、あくまで機材運搬と警備だけだから」

「そうですねぇ。ん、そういえば、警備ってどういうことですか?」


 これにフウニャンは月城さんにすり寄っていく。

 あらま、ふと月城さんが挙げた疑問点。確かに重要かもしんない。


「言われてみればそうだよねぇ。アメリゴンフットボールって桐桜華で競技人口少ないでしょう。幾ら決勝って言ったって試合会場に観客大入り、満員御礼になるとは思えない」

「なのに警備が必要な理由? それは……ねぇ?」

「ん?」


 フウニャンはチラリと俺をみやる。イタズラめいたような笑みを見せていた。


「今回のPVは、結構有名どころのアイドルグループの楽曲用なんだよね。知ってる? 去年の大晦日にも白黒歌合戦にもでてたあの……」


(ふんふん……さっぱり知ら……)


『『『『『な、なぁぁぁぁんでぇぇぇすとぉぉぉぉぉぉぉ』』』』』


 俺は声優さんとアニソンの大好きっ子。

 ファッションモデルのフゥニャンを知ってるのはお気に入りのラジオ番組DJを努めているからであって、それ以外のジャンルの有名人やアーティストは詳しくない。


「観戦客役として、私も含めて事務所のモデル仲間も出演予定」

『『『『『モデル仲間ぁぁぁぁぁぁぁぁ!?』』』』』

「自分で自分の地元を悪く言うつもりはないけど、こんなに一度に芸能関係者が集うことって滅多にないと思うから、ファンとか挙って混乱すると思わない?」


(ああ、まぁ、言われてみればそんな気も……)


「……もしかして、あんまり魅力に思ってない山本君? 芸能人の可愛い子にもお近づきになれると思うんだけど?」

「そうっすねぇ。ま、月城さんが決めたなら……と言うところでしょうか?」

「フフッ♪ 君は、どんな時も月城さんを助けてきてるのがわかっちゃう」

「え?」

「ふ、フウニャンさん!?」

「アハハ、ごめんごめん。何でもないよ」


 一応、アイドルや歌手だって知らないわけじゃないんだ。

 軒並み……十数年も昔のアーティストさんばかりだけど。


『『『『『兄貴ッ!』』』』』

「のわぁっ!?」


 きゅ、急に大声上げるもんじゃないよホントに。


『『『『『この依頼、受けましょうや兄貴!?』』』』』

「ちょ、お前らいきなり横から何を言って……」

『『『『『オリンピックは国の一大事! そしてアイドルとモデルさんは国の宝!」』』』』』


 話を聞いて、反応するのがまさかの《山本組》員とか。

 しかも結構文字数多いセリフを、一字一句息ピッタリに言うって、ラノベや漫画かっ。


「あ、でも山本君を慕う後輩君たちは興味津々かな? どうかな兄貴分として、彼らの嘆願を聞いてあげたいと思わない?」

「い、いや、ですから協力するしないの決定はあくまで月城さんが……」


(こ、コイツら、ただアイドルや女性モデルさんとお近づきになりたいだけだよねどうも)


「……あ、そうだ。じゃこういうのどう? 撮影が終わったら、出演者、スタッフ全員の打ち上げに招待してあげる。協力してくれた子たち全員・・・・・・・・・・・・

「って、フゥニャンさん!? そんなこと言ったら後輩バカ共が……」

『『『『『兄貴、お願いします!?』』』』』

「だから! 俺の話聞いてた!? 最終決定権は月城さんにあ・る・の!?」

『『『『『兄貴ぃぃぃっ!? (お願い)しゃぁぁぁぁぁぁす!?』』』』』


(だ、駄目だこりゃ)


 もはや「兄貴」の後に「しゃぁぁす」しか聞こえない。多分「お願い」が省略されてる。

 欲望駄々洩れ。いくら「月城さんに判断を仰げ」といっても聞く耳持たない。


「今回の依頼、三縞校が受けてくれそうな流れかな? 月城さん」

「あぁもうっ!? 山本君!」

「激しく申し訳ない」


 そんな後輩たちをお客さんのフゥニャンに晒すのが恥ずかしくなったこと。奴らのせいで話を押し切られたことで、月城さんから言われてしまう。

 もうね、右掌で両目覆わざるを得ない


「それじゃまた後程、詳細について連絡するね。撮影に関わるスタッフや出演者。あ、そうそう。PV製作に差し当たってスポンサー企業のお偉方とかも来るんだけど、そのリスト送らせてもらうからぁ」


(うわ、また面倒くさいの受けちまったよ)


「短い期間かもだけど、同じ仕事仲間として宜しくね。ウサギちゃん・・・・・・・転入生君・・・・?」

「ひゃうっ!?」

「んがぁ?」


(どゆこっと?)


「ではでは約束の地! 桐桜華明立大・・・・・・・インテリジェントゴリラーズ・・・・・・・・・・・・・青法中せいほうあたる大学リーガルダイナソーズ戦会場でまた会おう! キックオーフッ!?」


 嵐が去ると、静けさに満ちるという。

 違った。

 さすがはラジオ番組でMC務める現役モデルのJDDJ。去ったあと「凄く綺麗だった」のなんの盛り上がっていた。


『『『『『っしゃあああああああ! 芸能人との合コン権……ゲットォォォゥッ!?』』』』』

「ば、バレてる……」

『『『『『やっまーもと』』』』』

『あ、ソーレ』

『『『『『やっまーもと』』』』』

『あ、どっした』

『『『『『やっまーもと』』』』』

『もいっちょ』

「完全に……バレちゃってる……」


 そして組員のテンションが下心満載でオカシイ。

 さらに月城さんは……この世の終わりを感じたような慄いた表情で、ワナワナ身体を震わせていた。

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