テストテストテスト40
長かった。長すぎた。
とにもかくにも10月と11月……あまりに長すぎたと思わない?
(だって考えても見なさいよぉ。10月についてっていつからだ? 謹慎? ちゃう。桐京校文化祭? ちゃうちゃう。三縞校文化祭? ちゃうちゃうちゃう)
「あ、看護学校文化祭に入ったか入ってないかってとこかもしれない」
白目剥きそうだ。
立った一月だというのに、なんか体感的に、物語で言えば150話位消費しているような。その為に半年だの1年だのかけてる気がする。
うん、気のせいだよねきっと。
「頼む。サクサクっと、せめて11月後半だけは」
所詮は刀坂ヤマトが主人公の物語にひっそり生きてるモブの俺だから。
そんな俺の学園生活をクローズアップとしてお話を書いている奴がいたとして、今のセリフ聞いてどう思うだろう?
「バカ野郎! 異動でこれまでと全く関係のない仕事に就いてそれどころじゃないんだからね」と憤慨してるだろうか。
なんなら、「シリーズ前作がエタったにもかかわらず、付いてきてくれた読み手の方に、一応の完結を見せる義務が筆折る前にあると思っただけなんだから!」と思っているからなのかもしれない。
……だとしたら亀展開に冗長文章、成長が全く見られない。
「それじゃ次の議題、山本さんお願いできますか?」
「うぃぃぃぃ……」
妙な気苦労に囚われる。席次の前部、黒板付近に立った《委員長》から名前を呼ばれた時、なぁんかグロッキーに囚われた。
「えっとぉ。駆け抜けるようで悪いが、イベントは今週末、来週末と立て続けに開催だ」
「はぁ、長かったねぇ」
「ん、誰かさんのせい。謹慎入ったせいで、まだやっていないのはウチのクラスだけ」
「わかったわかった。悪かったって」
ここしばらくゴタ続きだったが、11月後半は楽しいこと目白押しだと信じたい。
いや、ふと目を落とす学生証件スケジュール手帳にも、楽しいイベントの記載しかない。
(楽しいイベントね? ま、問題ばっかの文化祭だって本来は楽しいイベントだったから、安心はできないのかな?)
「二週間越しの打ち上げパーチー! ガッツリ楽しもうじゃねぇか! まずはボウリング、飯食ってからの、カラオケってなぁ!?」
なぜだか俺が打ち上げ感じになってますのん。
俺のせいで三年三組だけ打ち上げが出来ていない責任を取らされていた。
「高校生の打ち上げって言ったら、もはやワンパターンだよねっ」
「1,2年生の時の打ち上げも同じコースだと記憶しているが」
「仕方ないですよ正太郎さん。山本さんも頑張ったんですし」
「んむぅ、突拍子もない山本の事だから、もっと常識を超越した突拍子もないの期待してた」
「まぁこればかりは仕方ない。酒を飲む訳もいかないだろう。俺たち士官候補生は、常識範疇と法に縁強くしなくてはな」
(好き放題言ってら)
「食事と言ったか? もしやとは思うが……スタヴィングジャガーではあるまいな?」
「……気付いちゃった?」
「貴様、まさかかのチェーン展開企業の回し者ではあるまいな。客を何人連れて行けば、
「んなわけあるかい!? せいぜいクーポン貰えるのが関の山だっての!?」
「フン、浅すぎる」
(そりゃあ、『士官学校卒業後入社試験を受けてみない?』とは店長さんに言われてるけど)
謹慎で俺がいない間に欠席裁判。おちゃらけた俺には《宴会部長》のポストがちょうどいいらしい。
ざっけんなっ!? 《宴会部長》っつーのは、普段仕事がまるでできない奴でパーティ手配だけが異常に上手い奴を馬鹿にした揶揄やんけ!?
……無力無能で絶望的に魔装士官訓練生としてダメダメな俺にピッタリやないか~い!
全力で取り組む所存。
「山本っ」
「お、如何なされた《ヒロイン》?」
やいのやいの楽しい話に盛り上がっているさなか、おずおずと聞いてきたのが我らが《主人公》一の恋人候補(いや、主人公ってのは軒並み鈍感だから断言できんが)。
「る、ルーリィは来れるの? それにシャリエール教官も。最近、忙しいみたいだけど」
(……そこ、ツッコんできたかよ)
言われて、ゴクッと唾を飲み込んでしまう。
答えるよりも前にチラッと目を向けたのは、俺が先ほどまで座っていた座席位置の隣。
「うん、大丈夫よ。ルーリィも来る。スケジュールは前もって貰ってるから」
「そう? ならよかった。あ、じゃあ打ち上げについて、私もできうる限り手伝わせて?」
「手伝うって?」
「ボウリングは大会形式にしましょ? 景品は《石楠》で
「マジ? いいの? お嬢さ……」
「言ったんですけど。その呼び方嫌いだって」
「悪い悪い」
(いや……)
問われ一瞬息が詰まった。
手伝ってくれると言ってくれた《ヒロイン》。折角の申し出なら、甘えない手はないかもしんない。
「灯里、最近一体どうしたんだ?」
「どうしたって何が?」
「少し……
「何を怒っているのヤマト? 山本には
「それは……」
「これは、私たちの為に必要なことなのよ?」
「そう……かもしれないけど」
(……ん?)
「どうした、お前ら二人? なんか……揉めてる?」
「ううん、何でもないわ。気にしないで山本」
最近気掛かりな点が二つある。
まずは一つ。俺の隣にルーリィとシャリエールがいない時が増えたこと。
そして《主人公》と《ヒロイン》の関係がギクシャクしているように見える事。
「えっと《主人公》、大丈夫なのか
「あ、ああ。気にしないでくれ」
カラビエリさんと会ってから誘拐時の記憶がトンと抜けた俺だけんども、もしかしてその時に起きた出来事は、なにか二人の関係に影響を及ぼすようなことがあったのだろうか。
◇
『えっと……論外です』
「だよねぇどうも。俺もいざここに来て同じこと思って打ちのめされてる」
クラス盛り上がった文化祭打ち上げはあくまで今週末。そして俺には今日、別で予定が入っていた。
『鬼の居ぬ間に洗濯ということですか?』
「チョイ待ち。誤解がある。恐妻家かよ。
場所は例によって組事務所のスターヴィングジャガーである。
『それもそれで正直受け入れがたいものがあります。貴方が、私に対して惚気ですか?』
「あーうん。多分俺がここにいる事自体が良くない。ゴメン、帰るよ」
一人抜けたところで構わない。それだけ賑わいを見せる店内で、隣に座る娘からのジトっと見られたから、そーっと立ち上がって……
「待って下さい」
ジャケットの肘あたりをむんずと掴まれる。引きずり降ろされるように、ソファ席座り直す事相成った。
「あまり気になさらず。単純に、私を振った貴方とどう接したほうがいいか分からないだけですから」
「えっと、俺が悪いのか?」
「どう思いますか?」
「……俺が悪いと言うことで」
多分、俺は悪くない。ただ居辛い感半端無いのはホント。
「念の為、俺の事で競技会協力に影響あったりする?」
「言ったはずです。仕事とプライベートには区別が付けられます」
(そうは見えないんだが)
『何やってるんですか組長さん♡!』
『おう、だったら小生を選ぶんだな看護学士長ちゃん!』
『「……ハァ」』
そんな俺たちのやり取りを見て、空気読めない呼びかけがぶつかる。
俺が以前振っちゃった逆地堂看護学士長と一緒にいる理由がここにあった。
『ハイハイ! 第三魔装士官学院3年2組
(な、ナンダナ……)
『同じく3年2組はインペリアルガード序列4位!
(タイ……)
『3年2組!
(モ、モンヨ……)
『所属クラスは右に同じ! 序列2位は
(デ、デフ……何故……フクラハギと言ってやらない)
「そしてっ! 精鋭揃いのインペリアルガード! 取りまとめるはこのオイ! 精鋭中の精鋭!」
(テ……テメーもか)
「約束された名家は次期当主の地位! インペリアルガードは近衛騎士長! 序列1位は水瀬冬弥でガンス!」
(ガンスッ!)
「得意分野は大臀筋!」
(しかもそれ、ただのケツじゃねぇか!)
周囲に見せつけるように、アピールポイントの筋肉部位を指さし名乗るのは5人だ。
ていうかなんだよ。全員が全員、テメーら如きの顔で? そのゴリラ筋肉で?
イケメンしか許されなさそうな名前しやがって。
「以上、全隊員点呼! アインス!」
「ツヴァイド」
「ドライ」
「フィーア!」
「フュンフ!」
(うわぁ……)
序列1位から5位まで点呼はなった……が、ソレでは締まらないらしい。
マッチョーズ5人が、感情ものすごく込めた目で見てきやがる。
「気合を入れ直して……アインス!」
「ツヴァイド」
「ドライ」
「フィーア!」
「フュンフ!」
「へ……へっくす……」
厳密に言うと、序列は、6位まであるからだ。
「以上、6人合わせて最強部隊! 我ら……」
「「「「「ルナカステルム・インペ……」」」」」
6人そろったことで、奴らは口上を終焉に到らせようとする。その終焉が、とかく嫌だった。
「「「「「ヘックスゥ! ポーズっ!?」」」」」
またもや何か責めるような眼差しが集まる。
「「「「「全員最初っから!」」」」」
「……チッ」
これは、どうにも逃れることができなさそうだから思わず舌打ちが出ちまった。
「アインス!」
「ツヴァイド」
「ドライ」
「フィーア!」
「フュンフ!」
「……ヘックス……」
(ええい、ままよ)
「「「「「「以上、6人合わせて最強部隊! 我らは
全員集まって口上述べるとき、特戦隊や美少女魔法戦士たちの集合宜しくポーズを取らなければならないんだ。
『フン決まったガンス』
『この名乗りに堕ちない女の子はいないデフ』
『これで今日の我らの勝利は約束されたもん』
『さぁ、何人お持ち帰りできるタイ?』
『今なら大サービス。こっちの連絡先あげホーダイナンダな!?』
(や、やめてぇおまいら…)」
そうして、変身ポーズだが登場ポーズだかを取った5人の満ち足りた表情と、俺のこの、大切な何かを失った感覚ね。
思わず両手で顔面を覆ってしまう。
『……組長さん……』
「言わないで、看護学士長さん……」
『……恥ずかしくないんですか? 人として』
「言わないでっ!?」
本気でドン引きな看護学士長の声色よ。チラッと付近を見てみると、多くの看護学生も顔面引きつっておられますん。
(改めて心に誓った! 俺呼ばない! そんな一人一色。恋愛乙女ゲームの攻略対象イケメンを想起させるような名前、絶対に呼ばない!)
一応「よろしくお願いしま……す」とは帰してくれたが、声は震えていた。
穴があったら入りたい。
『いやいや、ホンッマにっ……看護学生さんには感謝やで!』
『看護学校のバックアップがあったからこそ、俺たちも安心して全力張れたってもんでさぁ!』
『
『競技会でも俺たち助けてもらうんだべ? ヤベェべ? 三縞校文化祭からずっと助けてもらってばっかじゃん?』
『恩返し。この合同打ち上げパーティという短い時間でなにが出来るか分かりませんが、礼は尽くさなければなりませんね?』
ちな、遠くの方からもよく知った声が聞こえてくるのだが……
『《山本組》全隊、良いですか? 僕らから、精いっぱいのおもてなしを。逆地堂看護学校皆さん、今日はよろしくお願いします』
『『『『『よろしくおざぁぁぁぁす!』』』』』
『『『『『こちらこそお願いしまぁす♡』』』』』
(知らなかったよ《
反応が180度違うというね。
「俺、《
「移ろわない」
「痛え!」
何となく後輩の輪に入ろうとしたところだ、椅子から腰を浮かした俺は、思いっきり耳を引っ張られ、再び座り込んでしまう。
「貴方は今日、ずっと私の傍に居なさい」
「……ハイ……」
まさかの人物がここにいる。
本来彼女は、この会には関りのない人物のはずなのに。
「いい? ハメを外しすぎないこと。私の目の黒いうちは、ルーリィを裏切ることはさせないんだんから」
「わぁってるから、耳ぃ引っ張んなよ《ヒロイン》」
「わかってるですって? 信用できないから言っているのだけれど。ルーリィの不在中に、看護学校との合コン。しかもこんな大規模で執り行うんですもの!」
「それは看護学校の文化祭が終った時点で決まってたっつーの!?」
本日のイベント。
逆地堂看護学校と第三魔装士官学院三縞校、両校文化祭の慰労と頑張りを称えあう合同打ち上げ……と言う名の合コン。
合コンという名言は裂けたものの、看護学士長さんと《山本組》組長の俺が「お疲れ様会はやりましょうね」と取り付けたものだった。
(まさか、開催する前に告白されるとは思わなかったっての。やりづら!)
三縞校で言えば、元は《山本組》だけだったのに、そこに噂を聞きつけた3年2組男子が飛び込み参加。まさか《インペリアルガード》まで参加に至った。
(……ガンスに至っては絶対チクる。神楽に、そしてショートカット風紀委員長に絶対告げ口してやる)
「その娘についても私にとって不愉快なのですが。ルーリィ・セラス・トリスクトさんを理由に振った私の前で、別の女の子。綺麗ですね? イチャつくなんて」
「いやいや、クラスメイト! ただの、クラスメイト!?」
「そうよ~ただのクラスメイトよ~? 私、ルーリィの親友なの~」
「……親友……ですか?」
あれ? 11月は……楽しいイベント目白押し……だったよね?
「ホラ、変な間違いを山本が犯しでもしたら大変じゃない?」
「……間違い?」
「もし……何かの間違いがあったりして、いえ、間違いが無くても『組長さんが好きです♡』なぁんて娘が現れてしまったら」
「………………………………………………………………………………へぇ?」
ゾクリとしたものが体中を走りましたでやんすよ?
そんな、トップスタァにのみ許された長い間なんて使っちゃってさ?
アカン。
会は始まったばかりだってのに、僕、お腹いたひ。全力ダッシュでお家帰るぅ。
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