テストテストテスト久しぶりに13

「どこに行くつもりよ貴方!」


 無理やり腕引っ張ってクセ、うろうろしちゃいましてね。

 耐えかねたんだろうね。エメロードが口を開いちゃった。


「知・ら~ね♪」

「ま、まさかあてもないのに。この私を連れ出したの?」


 呆れた顔していたエメロードに、開き直ってガハハと笑ってやった。


「この学院祭に遊びに来たのは、お前とリィンに会うためだ。お前がもしリィンとあの教室にいたら、面倒事はなかったのに」

「なら、もう私に会えた。目的は達したじゃない!」

「あ~五月蠅いよお前」

「なっ!」


 不躾。そんなことわかってる。

 でもね、今は何を言っても自分のわがままを通したかった。


「お前のクラスの出し物以外、当初眼中になかったから。いざ回るとなったら、他にどんな出し物があるのか。俺が知るわけがないでしょ。案内ヨロっ♪」

「む、無理やり連れだして、私に案内しろって?」

「文化祭に興味はねぇ。他の出し物も知らね。別にいい。なら学校のいろんな場所を案内してくれ」

「強引……」

「いーじゃんいーじゃん」


 諦めたような、疲れたため息をこぼしてきやがりました。


『ね、ちょっとあれ見て。確か今年編入してきた子じゃない?』

『三校生と歩いて……って、え? あれ組長じゃない? いつもすましてるくせに、そういうこと? 興味ない風装って……それちょっとズルくない?』

『イケメンに限る……じゃなくて美少女に限るって? あの容姿は反則だって!』


 もはや俺は、三縞校の人間としては見てもらえない。

 組長……らしい。

 開会式でスピーチしたこともあって、周囲から視線が集まっちまう。


(はじゅかち……)


「まったく。やめなさいよ。下衆の勘繰り」


 女生徒たちが何か言っている。

 エメロードは眉をひそめて呻いた。

 心なしか、掌で顔を隠しているように見えるが、気のせいだと信じたい。


「どーちーらーにーしーよーうーかーな♪」

「って、山本一徹。また勝手にっ!」

「かーみーさーまーのーいーうーとーおーり♪」


 俺も俺でこの後打ち合わせを控えている身。

 いつまでも足踏みは出来ない。

 エメロードは乗り気じゃない。なら俺が決めるしかない。

 開いたパンフレットに指をさす。

 歌いながら、各クラスの出し物名称をなぞった。


「占いの館か」

「どうするつもり? そこ恋愛占い。そういうのはルーリィ様とにしなさい」

「トリスクトさんは文化祭の準備中。別の仕事で士官学院にいるんだ」

「いないからって別の女の子とだなんて。そういうの浮気っていうのよ?」

「小隊長と小隊員のコミュニケーションだ。それに、そういう方面で本当に気になった相手がいたら……」

「いたら?」

「連れ行こうなんて思わない。『相性最悪です』なんてメンタルクラッシュ。俺だったら立ち直れない。怖いじゃん?」

「グッ! ど……どうでもいい私だから、一緒に行こうと思ってる? 貴方、面白いことを言ってくれる。随分サラッと・・・・・・フッてくれるじゃない・・・・・・・・・・

「アッハハッ!」

「失礼なことを言ってくれた貴方が、笑ってごまかさない」


 運任せだったが、悪くないかもしれない。

 口角両端が、ちゃんと吊り上がってる。

 ちょ~っとピクピクと痙攣している。

 

「冗~談だって。あまり何でも斜に構えんな。今回の場合、単純に人間関係占いってことで」

「本当に軽い」


(目じりの方も……というか、視線が怖過ぎ……)


「って……」

「そういえば。まだ貴方が私たちの世界に来る前・・・・・・・・・・……」

「はっ?」

「日本名立大在学時代。当時付き合っていたカノジョを放って、合コンに行った」

「あ、あの……話が読めない」

「お持ち帰りが発覚して、別れたって昔話……」

「っていうかその大学名、どっかで聞いたような……」

「殺すからっ!」

「んがぁっ!」


(こ、こいつ面倒くせっ!)


 連れ出したまではいい。

 一番最初に訪れようとする場所を決めるのに、これだけ時間がかかる。

 なにやらブツブツ呟いたと思ったら、いきなり声を張り上げた。


「ルーリィ様をないがしろにしたら殺すからっ! 諦めた私への・・・・・・侮辱も同じ・・・・・なんだから!」


(何言ってんのかわかんねぇしっ!)


『はいは~い。デート中の喧嘩ですかぁ?』

『空気が悪くなったら少し間を開けるといいですよっ♪ というわけで、三校男子のお兄さん。私たちとぉ……♡』

「ヒィッ!」


 しかも、その瞬間。あまりにいいタイミング。

 看護学校生が、俺らの間に割って入ろうとして来やがった。

 ずっと見られてたってことだ。怖い。


「とりあえず戦略的撤退だ。四の五の言わずに行くぞエメロード!」

「あっ! ちょっとまた腕を……」


 ったく。なんて場所だこの文化祭。

 落ち着いて話も出来やしない。



『お二人の相性……残念ながら最低最悪です』

「え゛っ! え゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛ぇ゛っ! そこまで言っちゃうっ!?」

『ごめんなさい。その様に出ています』


 言い争いに群がってきた女子たちから逃げ、件の占いを出し物とするクラスにやってきた。

 受けたのは、いわゆるカードを使ったカップル占い。

 精神ダメージ、効果は抜群。


(結構遠慮なく来やがるな)


 隣に座っていたエメロードなんて。

 はじめ足を組み腕を組み。やる気なさそうにそっぽを向いていた。


すれ違い・・・・の相が出ています。歩み寄ろうとして・・・・・・・・分かり合えない未来・・・・・・・・・が』


 言葉を耳にした途端、スッと占い師に扮した女生徒に顔を向けた。


『男性側、女性側で、大きな違いがあるのでは? なかなか理解がしがたい・・・・・・・・・・・

「へぇ?」


 女生徒は言葉を続ける。

 エメロードは少し興味が惹かれたようで、少し身を乗り出した。


(なんでそこで興味湧いちゃうの。コイツ、本格的に俺の事嫌いなんじゃねぇの?)


『いまはその、お互い分かり合っているのだと思います。それゆえの関係』


(わかり合えている感は、サラサラないんだが)


『でも近い将来、どちらか一方がお相手・・・・・・・・・・についていけなくなっ・・・・・・・・・・てしまう・・・・


 女の子なら占いに馴染みもあるのだろうが。


「そ、そんな未来が?」

『もしかしたらお兄さんに原因が』

「お、俺ぇ?」


 馴染みのない男子にとっては、放たれる言葉一つ一つが衝撃的。


『組長さん、三校生じゃないですか』


(俺、この学校でのあだ名、完全に決まっちゃったね)


『数年前から頻発する異世界転召脅威。危険と隣り合わせの魔装士官という概念、職業が生まれた。正規士官にいつかなって、予想しえない状況に陥ることも』

「そりゃ……」

『女の子には、それは不安』

「ふぐぅ……」

『もしかしたらカノジョさんでは、ついていけなくなってしまうかも』


(ついていけない。いまのところそんな感じはないが)


「そ、そうなのか?」

『私に聞かないでよ』

 

 看護学校生ながら、肉体を酷使する隊員として、ともに訓練するような奴。

 ある程度、魔装士官とも付き合いはある。

 エメロードは頭がいい。

 今後どうなっていくか、予想も適応も出来そうなものだが。


(ってか、そもそもコイツ、俺なんかよりはるかに強い。遥かどころか、俺なんて足元にも及ばねぇ)


 ついていけなくなるなんて、考えられない。


「実際のところ、エメロードがついていけないんじゃなくて、俺がお前についていけないんじゃ」

「……は(怒)?」

「何でもない。多分、空耳だよ」


(いや、現実味を帯びない未来リスクが、占いによって示されたってことも。そもそもそれが占いってやつじゃない)


『あ、これ……』

「ど、どうしたんだ?」

『組長さんの過酷な運命に耐え、添え遂げうる可能性のある運命の女性。その影をこのカードから感じました』

「なん……だと?」


 元は小隊員としての人間関係を占ってもらうつもりだった。

 知らないわけじゃないが、占い師に扮した女生徒は恋愛占いをやっている。

 それを思うと、エメロードでないことは別に問題じゃない。

 俺には付き合い方を真剣に考えなきゃいけない相手がいる。


(運命の女の子。やっぱり彼女……なのか?)


「も、もしかして……イニシャルがルーリィRトリスクトTとか?」

『違います』


 思わず飛び上がりそうになった。


(え、違うのっ!?) 


 当然だ。仮にも婚約者。

 俺のことをいつも凄く心配してくれる。

 最近はまんざらでもないというか。いやいやいや、むしろ俺には勿体なさすぎるくらいの高嶺の花というか。


(まさか。ならあの時のキスが運命を決めて……)


「わかった。シャリエールオーフランベルジュ?」

『あ、組長さんとの相性は良くないと出ています』

「そんな!」


(キスまでしたんだぞ! キスまで!)


 どんな俺でも抱きしめ、受け止めてくれる。

 普段鬱陶しいとか思ってる癖して、優しさに甘えられることがすごく心強かった。


(それでなお相性は、良くないってのか?)


 トリスクトさんではない。

 シャリエールでもないという。


(って言うか、その前に俺どうすんだ?)


 彼女たちの姿が、頭に浮かんだのが良くない。


(一人に決まるのかっ! 一人に決めるのか!? そもそも……あんな高嶺の花たちから一人選ぶことが許され・・・・・・・・・・るだけの甲斐性っつー・・・・・・・・・・か。んな凄い存在か俺は・・・・・・・・・・・!)


 自分から相性を知る為、わざわざイニシャルを持ち出したことは最悪の手だ。

 

ナルナイNストレーナスS……」

『組長さん自身で、本当にそう思っていますか?』


 俺自身ですら、自分を信じられないときがあった。

 でも変わらず、ナルナイは「兄さま」と慕ってくれた。どれだけ嬉しかったか。

 16歳にして、相当な世間知らず。目の離せない女の子。


(もう少し成長したら……とか思わなかったこともないんだけど)

 

 学生占い師が斬って捨てる。黙るしかなかった。


「ま、まさかアルシオーネグレンバルドだってんじゃ……」

「組長さん、声が震えてます(汗)。そんな娘が運命の相手で大丈夫なんですか?」


 好意とはきっと少し違うが、懐いてくれる娘に心当たりはあった。

 「師匠」と呼ぶアイツは、俺の弟子らしい。

 仲のいい後輩として見るようにしていた。

 妹分みたいなものとはいえ、リィンに対する役割があるから、兄貴面はしてこなかった。


(いや、アイツが俺の運命の人なら、それはそれで大問題だな)


リィンLティーチシーフTは……」

『別のお相手の影が見えます』

「嘘だろっ! お兄ちゃんは認めないっ! 認めないぞ!」


 トリスクトさんでなく、リィンが運命の相手だったらそれもまた問題だ。

 かねてよりトリスクトさんの姉妹分だったリィン。

 婚約をキッカケに、俺の妹分になったらしい。

 そういう背景がある。

 

(義理だろうが兄になった以上、生半可な男に可愛い妹を渡すつもりはない)


 余談だが兄を務める上で、《誰かの記憶》に登場した、あの器のデカい兄貴さんみたいな男を目標にしてたりする。 


(リィンに近づく男どもすべて……駆逐する!)


『ちょっと待って。一体何人女の影出てくるの組長さん! どれだけモテるの三校男子!?』


(ぜ、全員が違う……だと?)


 個人的に、トリスクトさんとシャリエールの二人が違うと言われ、すっげぇ衝撃。

 二人には、別の男性がいるってのは知っていたけど。

 少なくともトリスクトさんとは婚約関係。ってことは俺を評価してくれたはず。


(まさか将来、トリスクトさんはいなくなって……いやいや。露天風呂で何を感じた。俺が彼女を、彼女たちを疑ってどうする)


「うぉぉぉぉああああああ!」

「ちょっと五月蠅い。山本一徹」


(他、知ってそうな女性なんて……あ、まさか。いやいや。でも試しに)


「……トモカさん?」


 旦那さんがいて、お子さんがお腹にいる。

 あっちゃならないこと承知で、ワンチャン(ワンチャンス)聞いてみた。


「なんでそうなるのよ貴方は」


 エメロードは疲れたため息。

 痛々しげな表情で、頭に手をやっていた。


『この教室内にいるんですっ! このクラスの誰か、運命の女性が!』


 静かな口調で話していた女子は、急に苛立たし気、ぶっきらぼうに口を開いた。


『この後、組長さんだけバックヤードに招待します。いろんな娘とお話して……』


 立ち上がり、カードを並べたテーブルに両手をついて身を乗り出す。

 興奮気味。ちょっと圧倒された。


「ここまでね」


 占い少女に反応したのはエメロード。

 一つ。新しい表情を俺は目の当たりにした。

 イジメっ子が浮かべるような、凄みある笑顔。

 

「ショーとしては面白かった。目を見張る部分もあって、サプライズも楽しめたし」

「エメロード?」

「すれ違いの相。歩み寄ろうとして分かり合えない未来。相手についていけないかもしれない将来。確かにそれは十八歳の一徹に、のちに起こたこと・・・・・・・・

「え?」

「でも……いまや昔の出来事・・・・・・・・

「は?」


 なんだろう。占い少女が静かに言葉を紡ぐ雰囲気、神秘ささえ感じてた。

 こうして口ずさむエメロードのそれは、さらに凌駕した。


「適当言った割にいろいろ当たってて、驚いちゃった。思惑があるのでしょうけど」

『うっ……』


 占い少女、息を飲んで悔しげ顔をしていた。

 

「じゃ、ここでの用は済んだ。行きましょう山本一徹」


 なんて考えて、状況の流れを見守っていた時だった。


「って、え゛っ! おまっ!」


 突然、隣に座るエメロードが、俺の肩に体を預けたのだ。

 腕に両腕を回し抱き着いてきた。

 心拍は跳ね上がった。

 目の前で俺たちが密着したのを目に、占い少女は唖然としていた。


「そうそう、一つ忠告」


 そのまま俺は、エメロードに引っ張られるように立ち上がる。

 腕を引かれるまま、占い所の雰囲気作る暗幕を出ようとしたところ。


「運命というのは、個々人にかかるものじゃない」


 立ち止まったエメロードは振り返った。


「過去からこれまで立ちふさがった数々の選択。選ぶ中、法則と傾向がある程度定まってくる。その先にあるのは、考えられるであろう数多可能性。でもね……」


 ぎゅぅっと、抱き着かれた腕に力が加わった。


「それら可能性は、その時の選択者の力量や状況で、二つにも三つにも増える。選択肢を選ばざるを得ないか。それとも、別の選択肢に手を伸ばしうるか」


(何を言ってるのか訳ワカメ)


 立場逆転というか。


「未来の私たちの関係は、良くないと言ったわね。私の話を考えるなら、未来を不安するより大切なことがある」


 もはやエメロードの方が占い師じゃないかと思うくらい、出てくる話は意味不明。


「いつか来る選択肢を多く選べるように、これまでの過去を反省すること。いつ選択を迫られてもいいよう、いまを大切にして努力すること。だからね?」


(俺の頭じゃ、理解するのに足りませんねこれ)


「貴女が未来のため、彼に新たな女の子を探すよう仕向けるなら……」

『なっ!』

「んなぁぁぁぁぁっ!?」

「私は、いまの彼との・・・・・・時間を全力で楽しむ・・・・・・・・・


 う、腕じゃない。

 横から俺の胴体に、思いっきり……しかも抱きしめてきやがった。

 皮肉屋ながら、滅茶苦茶ふつくしーエメロードがです。


(ちょっ! これって!)


 頭が……真っ白になりました件につきやがりまして。


「今度こそ行くわ。山本一徹」


 もはや、力なくついていくしかできなくなっていた。


『ひ、冷やかしはお断りっ!』

『見せつけてっ! リア充は爆ぜなさいっ!』

『なんかウチ、負けた気がする。わぁぁぁん!』

『大丈夫、アンタの占い演技は一級品。次、頑張ってこっ!』 


 引っ張られていくうちに、俺の背中、占いをやっていた教室から檄が飛んだ。

 声も色々、占い少女の後ろで控えていた娘たちのものだろうか。


「困ってる?」

「驚いてるんだよ!」


 正直そんなことより、エメロードに抱き着かれ、手を引かれるこの状況に心が浮ついてしまってならなかった。



「……徹?」

「ほげぇ~」

「山本一徹!」

「がっ!」


 目の前での指パッチン。ひときわ大きな声。

 ハッと意識を取り戻した。


「なに自分の世界に行ってるの」

「しょうがないだろ。いきなり抱き着かれると思わなかったんだ」

「免疫ないわけじゃないでしょ? フランベルジュにストレーナス」

「おま……」

「ルーリィ様を差し置くほど頻繁で。少し心配になる」


 意識はある。

 が、抱き着かれ、緊張で正気はぶっ飛んでた。


「なに?」

「い、いや……」


 我を取り戻し、改めてエメロードを正面に控える。

 周りを見ると、結構な時間、俺は腕を引かれていたらしい。


「フフ。顔が真っ赤になってる」

「るせぇ! 別に特別な意味なんてないんだからね。あくまでも生理現象に過ぎないんだから」

「そう? 私にとっては特別なの・・・・・・・・・・だけど・・・

「なっ!」

「冗談よ冗談。貴方を試しただけ」


 気恥ずかしさが沸き起こった。


「貴方にはルーリィ様がいる。でも他の娘に揺れやすい。知っておきたくて」

「何を……」

「どの程度揺さぶれば、コロっと行けるのか・・・・・・・・・

「なんだとぅ!?」

「う・そ。裏切りになるじゃない。ただ、一歩手前まで知っておけば、他の娘からの貴方へのアプローチが、どの程度まで許容できるかわかる」


(こいつは……マジで掴みどころがねぇ)


 本当に、《女心と秋の空》キャラだと思う。


「わっかんねぇ。占い女子じゃないけど。時々お前、難しすぎんの。考えや話に時々追いつけない」

「さっきの? 楽しめたのは事実。貴方なんて占い女生徒の一言一句を真に受けて、顔なんてコロコロ変えて」

「いきなり『相性最悪です』なんて言われたらだなぁ」

「それはそうでしょ?」


 おいエメロードさん。恋愛占いか小隊員関係占いかは別として、速攻同意しないでいただきたい。


(もちっと俺の受けるショック、考えてくれぇ)


「あの占い、別れさせるためなんだから」


 なんぞ、よくわからない話を切り出された。

 

「は?」


 エメロードは俺の反応に、呆れたようなため息。


「気付いてるでしょ? この学校では三縞校の男子がモテる。占いの娘は、私たちのことをカップルとでも思ったのね」

「はぁ」

魔装士官優良物件候補と付き合ってる私が面白くない。だから引きはがし、あの娘自身か、後ろに控えている女子たちで、貴方にコンタクトを取ろうとした」

「ま、マジか……」


(俺とエメロード間での付け入る隙を、彼女たちは作ろうと? 女子って……本格的に怖)


 良くありますね。子供たちの、将来なりたい職業ランキング。

 いつか魔装士官は、「女子を信じられない職業」ランキングで一位になるような。


「だから嘘をついた。テーブルで明かされたカード占いの結果、本当は……相性最高だった・・・・・・・

「スマン。なんか言った?」

「……それで次は?」


(言い直してくれないのか)


「まさか、この私を連れ出したくせに、エセ占いで終わりじゃないでしょうね」

「そ、そうだなぁ」


 本当によくわからない奴。

 占いについて皮肉っぽく笑っていた。

 次に回る出し物を決める段になって、シレッとした顔に変わってた。


「と言っても、時間的に次の場所がラストかね」

「確か市内のお店と打ち合わせする約束があるのよね? 連れ出した側の貴方の方から打ち切るとか、非常識」

「根に持つな」


(ったくコイツは)


 不機嫌顔に戻り、ジトっと痛々しい視線を向けるエメロードに背を向け、パンフレットを開いてみた。 


パビリオン展示会。セミナー、発表会。この辺りは、看護学生への内部向けみたいだし」


 出店は色々ある。

 しかしリィンのクラスでたらふくとったお茶やお菓子で、結構お腹はパンパンだ。


「エメロードの方で行きたいところはないのか?」

「貴方、本当に身勝手。でもそうね。占いは貴方のチョイスだったし。それなら一度、行ってみたいところがあったの」


(うわぁ……)


 そういうわけでエメロードにお伺いしてみた。

 開いたパンフレットも見ずに口を開く彼女は、今度は悪辣な笑顔を見せていた。


(嫌な予感しかしない)

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