美少女お七に心狂わされるオッサンに心狂わされる、「新時代」の時代小説。

美しい町娘お七。
薄幸の美少年佐兵衛。
やくざ者の悪いオッサン吉三郎。
主人公と言える立場のキャラクターはこの三人ですが、一番容赦無く私の情緒をメチャクチャにしてきたのが吉三郎のオッサンです。
吉三郎の行動は、冷静に見ればちっとも筋が通っておらず、「何やってんだこのオッサン」と思わせるほどに一貫性がありません。なのに、時代背景も含めて丁寧に辿られる彼の心情・状況を追っていくと、『そうならざるをえなかった』ことが痛いほどよくわかる。いつのまにか彼を気にかけ、応援してしまっていることうけあいです。
その意地の悪さや天邪鬼さに本気で腹が立った次のシーンで、一転、心底このオッサンが愛おしくなっています。本当なんです。信じてください。
そして、だからこそ彼に幸せになって欲しくて、冷静に見ればちっとも筋が通っていない彼の行動に「何やってんだこのオッサン」と本気でやきもきします。無限ループです。気がついたらオッサンのことしか考えられなくなっているのです。

ままならない時代に生まれ育ち、歯噛みするほど不器用で狂おしい彼の、どうしようもない「恋」のゆくえに、どうぞ皆様も頭を抱えてください。