30.死

踵を返しても死はまぬかれない

向かう先にはどうしたって死が待っている

もううんざりだと回れ右をしても死はやっぱりそこにいる


回避しようのない絶対から逃れられずにいると 天上を裂き伸びてきた手がまっすぐ私を掴んだ

そのまま引き上げられるかと思いきや 手は私をその場で握り潰し 血と肉の塊に変えた

そうなってしまっては もう考えることも出来ないから とどのつまり私は楽になった


弛まぬ努力も水の泡

地位も名誉も泥の中


死の鉄槌が下され 塊から命からがら這い出た魂は 天上へと上がる中途 まぬかれなかった死とすれ違う

小さな驚きと共に振り返ったそこにはもう死はおらず・・・

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る