五月六日 〜最後の思い出〜

 五月六日。

 午後七時。


 サイン入りブロマイドが貰えたことを本山らのにTwitterで報告すると、リプライが来た。今日一日バーチャル売り子として対応していた彼女は私よりも疲れているはずなのに、それでも返事をくれたことが嬉しくなる。

 彼女の話によると、どうやらサイン入りのブロマイドは数枚ほど混ぜられていたようだ。

 改めてそれを運良く手に入れられたことを喜び、彼女にお礼を言う。

 それに対してさらにリプライが送られてきた。そして私はその内容を見て泣いてしまった。


 私はこの日まで半月ほどかけて『一年間の思い出』を書いて、何度も読み返してはまた書き直し、その度に自分の行いを悔いて反省して、心の中で何度も本山らのに謝罪してきた。だから彼女とTwitterでお話をさせてもらいながらも、若干の後ろめたさが残っていた。

 だが彼女がくれた一言は、そういった悩みや後悔などをぴょんっと飛び越えてきて、私の心に届いた。言うなればそれは、心に直接届く一言だった。

 そのリプライを何度も読んで、らの担でよかった、彼女を応援しててよかった、と心の底から感じていると、自然と涙が流れてきた。


 こんな話は本山らのに許してもらえたなどという私の勝手な思い込みだし、運良くサイン入りブロマイドが貰えたから話すきっかけができたというただの自慢話に過ぎない。だが、私にとっては大切な思い出なのだ。

 だからブロマイドを貰ったと報告をして終わりではなく、ここまで書いて私の『五月六日』は完成となる。


 これが、本山らのの活動一年目における、私の中の最後の思い出だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る