　十二月十二日。

　この日は本山らのが他のVtuberの方とオセロで勝負をするというコラボ配信が行われる日だった。

　私は仕事で残業をしていたために配信開始時刻には間に合わなかったが、なんとか途中から試合を見ることができた。

　YouTubeの配信ページを開き、まだ試合が続いていることを確認すると「おっすーです」とコメントする。

　この「おっすー」というのはコラボしている相手の定番挨拶（？）で、彼女のリスナーも配信が始まるとこの挨拶をする人が多い。（一時期、私一人だけ別の挨拶をしていたこともあったが、それは置いておく）

　いつも通りならコラボ相手である彼女から「おっすー」と返ってくるか、コラボ中だからコメントを返せないものだと思っていたのだが。

「キムさんおっすー」

　配信画面からは本山らのの挨拶が返ってきた。

　どうやらコラボ相手がオセロの盤面に悩んでいたらしく、私のコメントに気づいた本山らのが代わりに、と挨拶をしてくれたらしい。

　何気ない挨拶だったが、彼女の声で名前を呼ばれたのは初めてだった。

　たったそれだけなのだが。

　たったそれだけのことが、私はとても嬉しくて忘れられずにいる。

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