七月六日 ~#買ったよらのちゃん~

 七月六日。


 この日は本山らのが、「#買ったよらのちゃん」というハッシュタグをつぶやいた。

 使用用途は本山らのが紹介した作品について購入した際に、このハッシュタグを付けてつぶやくといったものだ。いわゆる購入報告である。

 私はこのハッシュタグがつぶやかれたときに彼女が紹介した作品をいくつか電子書籍で購入していたため、購入作品をアプリ内の本棚にまとめてスクリーンショットを撮り、その画像とハッシュタグを添えてつぶやいた。

 すると本山らのから「この本棚の作品はみんな面白いと言ってもらえるように頑張ります」というリプライが来た。このときは、そうなるといいな、程度にしか思っていなかったが、今ならば言える。彼女が紹介してくれた作品はみんな面白い。

 そして恐らくこのハッシュタグをきっかけに、本山らのというVtuberが自分の中で少しずつ、そして着実に特別な存在となっていったのかもしれない。


 ラノベを読む人間として如何なものかと思われるかもしれないが、この頃の私は面白い作品を読みたいという気持ちよりは、彼女から反応を貰いたいがために紹介作品を買っていた。ラノベを読む理由が、ラノベを読みたいから、ではないのだ。そしてその気持ちは今も少なからずある。

 ただ、この頃は本当に反応を貰うために買っていたと思う。それ故に、買うペース>読むペースになっていて、積読ばかりが加速していった。


 ところで、それと時期を同じくして私の中で新たに始めた習慣があった。

 感想ツイートだ。

 始めた理由は、ラノベ作家さんが本山らのの配信で「エゴサしている」と言っていたからとりあえずつぶやいてみるかな、ぐらいなものだった気がする。

 本を読んだ感想をちゃんと文字にしたことなんてほとんどなかったけれど、やってみるとこれが思いのほか楽しかった。

 私は本を読んでいるときは色々と考え感じるけれど、読み終えるとすぐに色々と忘れしまうので、あとで自分の感想を読み返して記憶を呼び起こすためにもこの習慣を今でも続けている。


 そして八月下旬。

 本山らのが「#買ったよらのちゃん」のハッシュタグで感想ツイートをしてもらえると励みになる、とつぶやいた。

 それを見た私は、購入報告をするときだけでなく彼女の紹介で知った作品を読んだ際にも「#買ったよらのちゃん」のハッシュタグをつけて感想をつぶやくようになった。

 このタグをつけると本山らのからいいねを貰えたり彼女自身の感想などをリプライで聞くことができたため、浅ましい理由ではあるが私はこのタグを積極的に使用していった。これが彼女がVtuber活動を行なっていく上での励みになっていたのなら幸いだ。もし、そうでなかったのなら……と考えるのは彼女の活動やライトノベルへの想いに対する侮辱だと思うので、考えるのはやめておく。


 それからしばらくの間は特筆すべきこともない日々が続いた。

 本山らのが紹介動画を投稿して、

 面白そうだとな思った作品を私が購入して、読んで、感想をつぶやいて、

 それに対して彼女から反応をもらう。

 それが私にとっての日常となった。

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