第2話
その朝に起こった通り魔事件の被害者は中沢清美34歳。都内の会社に勤める既婚者だった。午前8時20分、自宅マンションから歩いてすぐのバス停で刺された。救急搬送されたが、刺し傷の深さ10センチで、急所を外れているので、生命の危険は無いとのこと。病院には機動捜査隊がすでに現着しており、医師の了承を得られればすぐに聴取を始められるとのこと。現場では鑑識が終わり、目撃者の聴取が機動捜査隊によって終わり、所轄に引き継ぎ、現場付近での捜査を実行中との刑事課の課長から報告があった。
所轄の西世田谷警察署の新井署長は、刑事課長に対し速やかな犯人特定と検挙を指示していた。
小山田刑事も、署に着くなりいきなりの出動になり、朝のお茶も飲まないでクルマに乗ったので、余計に機嫌が悪かった。
現場では規制線が張られ、機動捜査隊の隊員が小山田たちを待ち受けていた。機動捜査隊は、都内を24時間つねに循環して、事件発生の一報を受けたらいち早く現場に到着して初動捜査を展開し、所轄が来て引き継がれるまで捜査を行う任務だ。
「バスの乗客や運転手への聴取は終わっていますが、誰も刺されたときの瞬間は目撃した人はいないです。まる害は刺されたことに気づかず、後ろにいた人に血が出ていることを指摘され、実際自分の背中から血が流れているところを確認すると気を失い、病院に着いてやっと意識が戻ったということであります。また、その他の目撃者はいまのところいないようです」という報告を受けて小山田たち所轄の刑事課の刑事たちは機動捜査隊にお礼を言って、敬礼で彼らを送った。
「じゃあ、他の目撃者と、凶器の発見を急ごう」小山田は若い刑事たちにはっぱをかけた。
刑事たちのうち、2名が目撃者探し、2名は周辺の捜索を担当し、小山田と女性刑事の小池麻理がバスの乗客と運転者に再度聴取を開始した。
結果的には、バスの乗客も運転手も目撃はしていなかった。血が出ているところを目撃した客も、刺された後に被害者の後ろに並んでいたので、刺されているところはもちろん、刺された女性以外にその場から立ち去った人物も目撃していないと証言した。
周辺の捜索はその後地域課の警察官を入れて20名で行ったが、凶器の発見には至っていない。
目撃者も周辺地域からは出てこなかった。そうなると、後は周辺の防犯カメラを片っ端からチェックする以外にはない。不幸にも、バス停が移りこむ場所には防犯カメラはなかった。
周辺地域の防犯カメラは、コンビニや雑居ビル、駐車場などのものがあったが、犯行時間帯は通勤時間帯でもあったので、多くの人が写っており、そのなかでも明らかに挙動不審と認められる人物はいなかった。
このヤマは長引きそうだと小山田が観念したがそんな思いも静まらぬうち、事件発生3日目に新たな事件が起こった。
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