第58話 魔物の活性化 3

「なんか変じゃない?」


 しばらく倒しながら進んでいるとレイがそんなことを言い出した。


「変って何が?」


 エクスは特におかしく感じることがなく、レイにそう聞き返した。


「何って、普段より魔物固くない?」


「いや?」


 エクスは普段も今もほぼ一撃で魔物を倒しているため、違いがわからなかった。


 でも確かにレイの戦闘の様子を思い出すと普段より苦戦しているようだった。誤差と言われてしまえば、そう思うような差ではあった。


「確かにエクスとっては普段と変わらないかもしれないけど」


 レイはエクスが普段の依頼から、魔物討伐に関しては余裕があることを知っていたため、まだ余裕があることを理解した。


 エクスは今のランクの魔物では苦戦することがなく、ほぼ一撃だったため、少し魔物が強くなったところで差などわからなかった。


「変なのって魔物が強くなったくらいか?」


「そう!魔物の量も多くなっているのよ」


 エクスは確かに普段より多くの魔物を倒していた。


「でもそれって、本当なのか?」


 エクスは普段、今回みたいに手当たり次第魔物を倒さず、逃げたりするのが基本だったので、量に関しても本当に多くなっているかはわからなかった。でも普段より魔物に多く遭遇しているもの事実ではあった。


「本当だよ!」


 レイはエクスが全く信じてないことに怒り、そう強く言った。


「でもそれなら、早く帰った方が良いな」


「なんでよ」


 エクスはこの事態に少し冷静になって、すぐに帰ることを提案した。レイはエクスへの対抗意識もあり、エクスよりも成果を上げられていない状態で帰るのは抵抗があり、帰りたくないことを暗に伝えた。


「なんでって、そんな魔物が強くなっているなら、ランクの高い魔物に遭遇したら対処できなくなるだろ。それこそ集団に囲まれたらどうしようもなくなるし」


 エクスは様々な依頼で多くの魔物を倒してきたためこの辺りに出現する魔物はある程度把握していた。そのため少しくらい強くなっても対処はできると思っていた。しかし、エクスは前のこともあり、自分がなんとかできても周りまで気を配ることはできないことはわかっていたため、前みたいに他の人を危険に晒すことは出来なかった。


「うぐ、でも——」


 レイはエクスに負けたままなのが嫌でそれから粘ったが、最後は渋々エクスの言葉を受け入れ、依頼だけすぐに達成させて帰ることにした。

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