第41話 レイ襲来 7

 エクスは驚いたが、アシルもナティもそれは予想していたのか、あまり驚いてはいなかった。


「意外と来るのが早かったな。もう少し遅くなると思ってたんだけどな」


 アシルは、レイが来ることがわかっていたのか、そんなことを言った。


「え?なんでレイが来るってわかったんですか?!」


「なんでって、エクス、お前街での噂知らないのか?」


「うわさ?」


「はぁぁぁ。お前が周りに興味ないことは知っていたが、ここまでとはな」


 アシルはエクスの無知に呆れて、ため息をついた。


「別に噂を知らなくても、レイの行動を見てれば、こうなることくらいわかるだろ」


「うーん…………なんで?」


 エクスは少しだけレイの行動を振り返ったが、思い当たる節はなく、理由がわからなかった。


「エクス、お前って変なところで馬鹿だよな」


「馬鹿って!そんなこと言われる程、馬鹿じゃないですよ!」


「じゃあ聞くが、毎日依頼もこなさず、お金を浪費するメンバーがいたら、どうなると思う?」


 アシルはエクスの文句を無視して、そんな質問をした。


「どうするって、それはクビに——あっ!レイ、もしかしてギルド、クビになったのか?!」


 エクスはようやくレイの置かれている状況を理解し、小馬鹿にするようにそう聞いた。


「いてっ」


 しかし、そんな小馬鹿にしたことをエクスはアシルに咎められ、頭を軽く小突かれてしまった。


「馬鹿、そんなことを聞くんじゃない」


「はい、すみません」


 エクスは素直に反省し、謝罪した。


「でも、なんでこのギルドなんだ?他にもギルドはあるし、ここよりも良いと思うけど」


「いや、もう他のところへは行ってるだろ。そしてそのギルド全部で入ることを拒否されたんだろうよ」


 アシルは断定してそう言い切った。


「え?そうなの?」


 エクスはそう聞きながら、レイの方を見た。レイは今にも泣き出しそうな顔をしており、アシルの言ったことが図星であることがわかった。


「まあ、街でレイが働かなくなったっていう噂が広がれば、まあ、受け入れてくれるギルドなんてないだろうからな」


 レイに代わってアシルがそう答えた。


「確かに」


 エクスはアシルの言葉を聞いてここに来た理由を納得した。レイはそれを否定しようともしなかった。


「まあ、ここには来たくなかったと思うから、もう少し来るのは遅くなると思っていたけど、思いのほか行動が早かったな」


「なるほど」


 エクスはこれで始めにアシルが言っていたことを理解した。


「それで、レイをこのギルドに迎い入れようと思ってるけど、どう思う?」


 アシルは最初からレイをギルドに入れるつもりだったのか、いきなりそう言った。


「ほ、ほんとですか!?」


 今まで泣き出そうで俯いていたレイだったが、ギルドに入れるとわかると顔を上げ、嬉しそうにそう聞いてきた。


「ああ、もうエクスを使ってのお金稼ぎはできなくなるけど、それよりもレイに入ってくる依頼が増えるだけでもこのギルドにはメリットになるからね」


「あ、ありがとうございます!」


 こうしてレイが新しくギルドに入ることになった。

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