第42話 レベル

 レイがギルドに入ってから、毎朝、エクスはレイと模擬戦を行っていた。


「ねぇ、エクスのスキルってどうなってるの?」


 その日もレイとの模擬戦を終えると、レイがそんなことを聞いてきた。


 今までもレイからはしつこくスキルのことは聞かれていたが、他のギルドということもあり、アシルからは「詳しく言うな」と言われていた。


「前から言ってるだろ。僕は経験値増加以外のスキルは何も持ってないよ」


 アシルから言うなと口止めされているが、そもそも言えるようなスキルなんて持っていなかったため、気にせず持ってないと伝えていた。


「そんな嘘信じるわけないでしょ?天才で聖騎士っえ呼ばれている私に圧勝してるのに、スキルを何も持ってないってありえないから」


 エクスは真実を言っているにも関わらず、レイに全く信じてもらえなかった。


「そんなこと言われても、それが事実だし」


「それならステータス見せてみなさいよ」


 ステータスと言うのはその人の持っているスキルや恩恵、レベルなどのことでそれを調べるには「鑑定」という恩恵を持った人間がそれを使い、紙などに記すことで他人に伝えることができる。また、その記した紙はその人物を評価するものでもあり、依頼などを得るために使われる。


 そのため「鑑定」を持っている人物は重宝され、大抵ギルドには1人「鑑定」持ちがいる。ちなみにアシルも「鑑定」のスキルを持っている。


「ほらよ。一応、昨日書いて貰ったステータスだ」


 エクスはそう言い、予め用意していた紙をレイに渡した。エクスはレイから毎日のようにスキルに関して聞かれていたため、わざわざ用意したのだ。


_____________

エクス

Lv5026

スキル:

なし

恩恵:

経験値増加

_____________


 と、紙にはそう簡素に書かれていた。


「はぁ?!こんなわけないでしょ!なんでスキル無しなのよ!」


「なんでって、それが事実だからだけど」


「ふん!どうせ、ギルマスに頼んで嘘を書かせているんでしょ!」


「そんなわけないだろ?それになんで同じギルドメンバーに嘘をつくんだよ?無意味だろ」


「それは……」


 エクスの言った言葉にレイは反論できず、黙ってしまった。


「って!このレベルは何よ!5000って、Aランクの人でもそうそういないのに、なんであんたがそのレベルに達しているのよ!」


 最初、レベルは気にしてなかったのか、後からおかしいことにレイは気づいた。


「勝手に上がった」


「勝手に、そう簡単に上がるわけないでしょ!それに私のレベルの約10倍ってどういうことよ」


「上がりやすいのは経験値増加があるからだろ」


「確かにそうだけど」


 エクスはもっともらしいことを言ったら、レイは腑に落ちないようだったが、納得するしかなかった。


「確かにこれだけレベルが離れてれば、私じゃ勝てないか」


 そう言ったレイはその後、ブツブツと何か言いながら考え事を始めたため、その日エクスはそれ以上レイに絡まれることがなく、ゆっくり過ごすことができた。

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