第26話 決勝 1

 エクスはよくわからないまま、決勝戦が始まってしまった。


 今までの試合もほとんどが何もせず、相手が棄権していったため、勝ち進んでいた。


「よそ見をするなんて、私は眼中にないってことかしら?」


 エクスが先程までの試合のことを考えていたことで、集中できてないことを見抜かれた。そんな上の空のエクスに対してレイは少し不機嫌になっていた。

 

「い、いや!別にそんなことはないよ!」


 急に話しかけられたことでエクスは慌てながらもそう答えた。


「あっそ。それなら良いんだけど!」


 レイは話し終わると同時にエクスに向かって、炎の魔法を放った。


『おおっと!先に攻撃を仕掛けたのは、レイの方だ!しかも、エクスは躱すことができず、まともに食らってしまった!』


 そんな実況を聞きながらレイは更に不機嫌になった。


「ちっ、なんで無傷なのよ」


「不意打ち気味に攻撃する君には言われたくないね」


 もろに魔法を受けたエクスはそんな愚痴をこぼしていた。


『しかし!ここまで勝ち上がってきたエクスにはやはり効いていない様子です!』


『それにしても聖騎士と呼ばれているレイが不意打ちをするなんて聖騎士とは思えない行動ぶりですね。それと炎魔法まで使えるなんて意外です』


『それはですね。聖属性の魔法を使えることと、剣や盾なども扱えるということから聖騎士と呼ばれているだけであり、ほとんどの属性の魔法も使えるようです。その中でも炎魔法と聖魔法は特に得意とのことです』


「まじかよ」


 エクスはそんな実況を聞き、絶望したと同時に、今までの試合みたくほとんど何もせず終わらないと思い、この試合は楽しめるのではないかと感じた。


 また、考え事をしていたことを咎めるようにレイが魔法をいくつも放ってきた。


 しかし、その全てにおいてエクスは無傷であった。


「これもダメなの」


 レイはエクスに対して魔法によるダメージが全然ないことに危機感を覚え始めていた。


「ああ、もう!」


 一方でエクスはレイに近づくことすらできず少しずつイラついていた。


 レイが魔法を放って攻撃しているようにエクスもレイに攻撃をしようとしているが、身体能力が高いのか、うまいように躱されたり、魔法による牽制で攻撃をできずにいた。


 ここに来てエクスは自分が何のスキルも持っていないことを後悔した。


 そんなことでお互いに決定打がないまま試合は進んでいった。

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