第24話 1回戦 3

 エクスはシルト・フルーフの方へ近づいていき、何も考えず、ただ殴ってみることにした。


 それは何もしないで負けを認めるくらいなら、最後まで粘って負けたいのだ。殴ることにしたのはそれくらいしかエクスにできることがなかったためだ。


 エクスは6割前後の力で軽くその障壁を殴った。6割というのはなんとなくだ。アシルやナティからは全力は出すなと言われていたから弱めに攻撃をした。その結果次第で徐々に力を強めていこうと考えていた。


 しかし、障壁を殴るとエクスが予想しなかったことが起きた。


 シルト・フルーフの作った障壁は形を保ったまま、シルトごと場外へと飛んでいった。


 エクスは、障壁が割れないか割れるかそんなことを考えて殴ったため、割れなかったことは想定内であった。しかし、そのまま場外へと飛んで行くことは予想していなかった。


 そのためエクスは口が空いた状態で固まってしまった。


「「「………」」」


 しかし、それはエクスだけではなかった。実況を含め、この場にいた全員が予想してなかった事態であり、場は静まりかえった。


「な、なんということだぁ!優勝候補の1人であるシルト・フルーフを破ったのはあのエレメシアスに所属しているエクスだぁ!」


 いち早く正気に戻ったのは実況の男であった。その実況に続くように観客の方からはいろんな言葉が飛び交っていた。しかし、そのほとんどはブーイングであった。それはおそらく賭けをしていた者たちによるものだ。中にはお礼を言っている者のいたが、それはブーイングにかき消されてしまっていた。


 そんな中、未だに正気に戻れていない者が2人いた。それは、さっきまで戦っていたシルトとエクスであった。


 シルトは自分が負けたことに理解が追いつかず、エクスは何で自分だけがステージに残っているのかわからず、2人のその場から動けずにいた。


 そんな2人を現実に呼び戻したのは、係員による誘導であった。係員により2人は退場させられるのであった。


 それでもエクスは喜ぶことはできず、ずっと結果に戸惑っていた。

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