第23話 1回戦 2

開始の合図があったが、エクスもシルトも動くことはなかった。


 いや、正確にはシルトは行動していた。


「おお、いきなりシルト・フルーフのスキルが決まりました!」


 そんな実況を聞きながら、エクスは自分や周りに異変がないことに疑問を持った。スキルと言うからには何かしらの変化があっても良いはずだが、何の変化もなかった。


「スキルを使ったようには見えなかったのですが、何をしたのでしょうか?」


 実況の1人もエクス同様、状況が飲み込めていないようだった。


「はい、シルト・フルーフが使ったスキルは2つです。1つは障壁と呼ばれるスキルです。シルト・フルーフの身体をよく見てみてください」


「うーん?…あ!何か、薄くシルト・フルーフの周りを覆っているように見えます!」


「それが障壁と呼ばれるスキルです」


「なるほど」


「それで、もう1つは呪いと呼ばれるスキルです」


「呪いですか?何か怖いですね」


「ええ、ですが、これが決まってしまってはシルト・フルーフの勝ちはほぼ確実でしょう。自分は障壁の中で安全を確保しつつ、呪いで相手を弱らせるという単純な戦術です」


「それは、恐ろしいですね。でも、障壁なら、破壊することもできるのではないですか?」


「そうですね。ですが、シルト・フルーフは障壁をかなり鍛えており、その強度はBランク程度と言われている程です」


「なるほど。それではこのDランク帯でシルト・フルーフの障壁を破れる人はほぼいないでしょう」


 エクスは実況を聞きながら、どう突破するか考えていた。そんなことを考えているとシルト・フルーフに話しかけられた。


「そういうわけなので、あなたに勝ち目はありませんよ。早く棄権した方が身のためです」


 そう言われたが、エクスは棄権する気などなかった。このまま何もしないで負けるなんてエクスには考えられなかった。それに負けるなら、最後まで戦い抜いて負けたかった。


 とはいえ、何か策があるわけでもなかったので、とりあえず攻撃をしてみることにした。


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