第19話 大会準備 2

 エクスはエーシェの言葉を聞いて少し出ることを躊躇った。かませ犬にされるのは確かに嫌だとエクスは思った。


 そう思う一方で、エクスは自分の力がどこまで通じるのか知りたかった。


「別に無理に出場を強要するつもりはないよ。出場することには意味なんてないし。勝ち進んで、より多く自分の力をアピールすることの方が重要だからね」


「そういうこと。それに『経験値増加』を持つ私たちにはアピールすることなんてほとんどないのよ。だから出たからには勝ち進んで強さをアピールするしかないのよ」


 エーシェはアシルの言葉を肯定するようにそう言った。


「それでも僕は出てみたいな」


「おお!本当か!それじゃあ早速登録——」


「アシル、待ってください」


「ん?どうしたナティ?」


「どうしたじゃ、ありません。エクスにまだ何も説明をしてないじゃないですか。ちゃんと概要とか説明してください。それと、他に出たい人はいますか?」


 ナティのその問いに答える人は誰もおらず、決闘大会に出るのはエクスだけとなった。


「他にいないようですので、エクス以外はいつも通りに過ごしていてください」


 全員が出て行った後、話が始まった。


「それでは説明を始めますね。もしも、説明を聞いて出るのを辞めたいと思えば辞めても構いませんので」


「ナティ、なんてことを言うんだ!」


「決闘大会というのは同ランク帯同士による能力のアピールの場であります」


 ナティはアシルを完全に無視して話を進めた。


「アピールの仕方は人によって変わります。勝つこと、つまりは強さをアピールするのが目的の人もいれば、自分の能力、例えば防御力であったり、自分の作った武器であったり、アピールすることは様々です。そのため勝つから良いことではありません。それでもエクスは勝つことがメインになるとは思いますが」


「なるほど」


「ルールですが、基本的に1対1の対決となります。決着の方法はどちらかが戦闘不能となる、負けを認める、ステージから場外に出ると負けになります。DランクならD1〜D5までが対象で、トーナメントで試合は進んでいきます。概要は以上となりますが、何か聞きたいことはありますか?」


「それじゃあ、どうして今年は出場することを言ったりしたんですか?昨年はしてなかったような気がするんですけど」


 昨年は何も言ってなかったのに、今年はいきなり大会に出場すると言ってきた。そのことにエクスは不審に思った。


「それは今年は優勝できると思ったからだ」


 アシルがエクスの問いにそう答えた。


「優勝?」


 エクスは今まで勝つことにはあまり意味がないと言われていたのに、いきなり優勝できると言われても理解が追いつかなかった。


「そうだ。優勝すれば、優勝賞金が貰えるからな!それが貰えれば、贅沢な生活ができるようになるからな!」


「ああ」


 エクスは急に大会出場する理由がわかり、納得した。でも優勝できる自信はなかった。








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