大会編

第18話 大会準備 1

「今年は大会に出ようと思う!」


 アシルのそんな一言でその場の空気感が変わった。


「私は出ないわよ」


「右に同じく」


「俺も出ないかな」


「……」


 マリアは無言で頷いて肯定していた。


 ほぼ全員が大会に出ることを拒否している中、エクスだけはその大会がどんなものかわからず、首を傾げていた。


「えっと、その大会って何?」


 その一言でアシルの表情が変わった。


「お前、大会は昨年もやってただろ?」


「?」


 そう言われたが、エクスには何のことかさっぱりわからなかった。


「そういえば、エクスだけ昨年は中心の方へ行ってませんでしたね」


 ナティの補足でアシルはようやくエクスが全く知らないということを理解した。


「そういえば、ここは街の外れで屋台なんかも来てなかったし、人もこんなところへは来なかったな」


 ナティの言葉で勝手に理解して、エクスの方へは何の説明もなく、エクスは困惑していた。


「それで結局その大会って何なんですか?」


「ああ、すまん、すまん。えーっと、その大会の正式名称は「英雄祭」簡単に言えば、昔の英雄を讃えるための祭りだ。そのため、街の至る所で屋台が出てたり、イベントが行われたりしているんだ」


「へぇ」


 妹より強くなるということ意外にほとんど興味を持たなかったため、エクスはそういうことに疎くなっていた。


「その中でも一番盛り上がるのが決闘大会だ」


「決闘?」


 エクスはその言葉を聞いて物騒な印象を持った。


「決闘って言っても実際には自分の能力をアピールする場で、年に一度の個人の依頼を獲得する場でもあるんだれ


「個人の依頼?」

 

 エクスはよくわからなかった単語を聞き返した。


「そうだ。言い換えれば、指名依頼なんて呼ばれ方もしている」


 そう聞き、出ること自体がメリットのようなものなのに、どうして他の人がここまで拒否する理由がわからなかった。


「出ることが良いことだと思うんだけど、どうして嫌なの?」


 エクスはそう皆に聞いた。


「そうなんだよ!良いことしかないんだよ!」


 アシルも力強くそう言った。


「なんでって、あんな晒し者にされるような場に出たいなんて思わないわよ!」


 それに反論するようにエーシェはそう言った。


「晒し者?」


「エクス、わからないの?『経験値増加』持ちの私たちなんか他人のかませ犬でしかないのよ!そんな大会なんて出たくないわよ。出たいならエクス1人で出れば良いんじゃない?」


 その言葉に賛同するようにルクセン、シデンス、マリアが首を縦に振った。

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