持っていてはいけない恩恵『経験値増加』を持った男

1年後

　エクスが入ってからもうすぐ1年が経とうとしていた。エクスは真面目に任務に取り組むなど、ギルドにとって良いことであった。ただ「経験値増加」を持っているせいでランクは全く上がっていなかった。

　そんなことよりも俺、アシルには悩み事があった。

　エクスのレベルがおかしいということだ。

　現在エクスのレベルは3000を超えている。たった360日程度で2500レベル上げたことになる。いくらなんでもありえなかった。

　この俺でさえ20年はかかってようやくレベルが3000を超えたというのに、エクスはそれをたった1年で上げてしまったのだ。

　それにこのままのペースで行けば3年後にはレベルが1万を超え、現在最もレベルの高い賢者様を超えることになる。その賢者様は人生をかけてようやく1万を超えたというのに、たった4年でそれを超えてしまう。

　レベルがおかしいのもそうだが、それ以上にありえないことがあった。

　それは未だにスキル、恩恵が「経験値増加」を除いて一切ないということだ。流石に2500もレベルが上がってスキル、恩恵を1つも習得できなかったのはありえなかった。エクスはそのことを残念がっていたが、俺は全くそんなことはないと思っていた。

　それはレベルが俺と同じくらいあるってことだ。

　つまりレベルだけを見ればAランクと同じということだ。

　ただスキルや恩恵、更には戦闘経験がないため、俺たちと模擬戦をしても俺たちが圧勝してしまう。

　しかし、同じDランクのシデンスやマリアとの模擬戦ではエクスが圧勝していた。しかも驚いたことにシデンスやマリアの攻撃はエクスには全く通っていなかったようで、どんなに攻撃を受けても無傷であった。これは俺たちも同じでシデンス、マリア、エーシェやルクセンの攻撃は俺たちが受けても無傷であった。

　しかし、エクスの攻撃はそうはならなかった。

　俺たちがエクスの攻撃を受ける無傷といかなかった。下手をすれば骨折するくらいであった。ただ、それも当たればの話であり、エクスが俺たちに攻撃を当てたのは俺たちが油断していた最初だけで、それ以降は当たることはなかった。その当たった１回目も骨折することはなかった。

　そのこともあり、エクスにはシデンス、マリア、エーシェ、ルクセンと模擬戦をするときは手加減をするように言っていた。

　エクスの成長には良いこともあった。

　それは他のメンバーへの良い刺激となっていることだ。特にシデンスとマリアはエクスの先輩ということもあって負けられないと思っているのか、最近ではレベルを上げることに力を入れていた。それはエーシェやルクセンも同じであった。

　そんなエクスの成長のおかげで少し先に行われる大会が楽しみだ。