アシルの思惑
俺、アシルは今、自分の目を疑っていた。
それはエクスのステータスに関してだ。
まず、レベルだ。エクスのレベルは513とそこまでおかしいところはない。俺もレベルは3000を超えている。それに王国最強の賢者はレベル10000を超えている。それに比べればレベル513なんて大したことはない。
強いて言えば、15歳にしては高すぎるというくらいだ。
15歳でギルドに入る人間の平均レベルは50くらいだ。平均より10倍高いことになる。今年入った『経験値増加』を持った2人もレベルは100超えない程度だった。それに比べれば確かに高い。まあ『経験値増加』を持っていれば考えられる範囲ではある。
しかし、そんなレベルのことなんて今どうでも良い。それよりも信じられないことがあった。
恩恵の『経験値増加』を除けば、スキル、恩恵を一切持っていないということだ。
いくらなんでもこれはありえないことだった。『経験値増加』を持っていてスキルを習得し辛くなっているとはいえ、レベルが500を超えてもスキル、恩恵を持っていないことはありえなかった。今年入った2人でさえ、レベル100を超えるまでにはスキルを最低1つは持っていた。そのことを考えてもエクスがスキル、恩恵共に1つも持っていないことはおかしかった。
おかしいだけで何の問題も無いんだけど。
むしろ、俺はそのスキル、恩恵を1つも持っていないエクスに期待をした。
そもそも俺が『経験値増加』持ちの人を優遇しているのは、生まれ持った恩恵のせいでその人の人生が狂ってしまうのは可哀想——という建前の元、実際は自分の師である賢者の言葉を信じているためだ。
それは「個人の強さにおいてスキルや恩恵は補助的なモノでレベルが全てを決める」というものだ。
俺も賢者以外の者がこんなことを言っても信じなかっただろう。それに一般人は誰もこのことを信じてはいない。誰もが賢者様が天才だからと特別だからと口を揃えてそう言う。でも、近くで見てきた俺だからこそその言葉は信じることができた。
賢者がレベルが全てということに気づいたのは最近のことで、気づくのが遅かったと後悔していた。
だからこそ俺は『経験値増加』持ちを優遇し、育てることを決めたのだ。
しかし、そのことを信じる者は結局誰もいないのが現実だ。
でもエクスがいれば、その考えも変わるはずだ。
何のスキル、恩恵も持たないエクスがレベルだけで他を圧倒すれば、賢者の言葉も信用されるというものだ。圧倒できればの話だけど。
それにもし賢者の言葉が真実でレベルを上げたエクスがものすごい力を発揮すれば、うちのチームがあの大会で優勝することも夢ではなくなる。そうすれば、こんな貧乏な生活からも脱却できる。
そんなことを考えていたら、つい顔がニヤけてしまった。
「キモいですよ、アシル」
ちょうど帰ってきたナティにその顔が見られてしまい、そんな言葉を言われてしまった。
ただ、気になることもあった。それは賢者の言葉通りレベルが高いだけのやつは強いかもしれないが、欠点もあるということだった。
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