第10話 ギルド 4

「ああ、それはそんな王国最強なんて呼ばれるくらい強くなったのがその賢者様しかいないからだよ。賢者様がすごいのであって、『経験値増加』がすごいわけじゃないってこと。だから結局『経験値増加』持ちの評価は変わらず、最低のままというわけなんだ」


 エクスの質問に対してナティがそう答えた。


「なるほど」


 エクスはナティの答えを聞いて納得した。


 賢者様という個人がすごいだけで、その賢者様がたまたま『経験値増加』を持っていたということだ。


「まあ、そういうわけで『経験値増加』持ちは今でも蔑まれているんだ」


 その話を聞いてエクスは落ち込むことはなく、今までよりも前向きになっていた。


 それは、『経験値増加』を持っていたとしても、王国最強と呼ばれる可能性があるということがわかったからだ。


「おい、そんなこといつまでも話してないで、これに触れてくれ」


 そう声がした方を向くと、いつの間にかアシルが移動しており、アシルは近くの水晶玉を指差しながらそう言っていた。


「アシル、毎回思うのですが、『経験値増加』持ちのステータスを調べることって必要ですか?」


 ナティは呆れながら、アシルにそんな質問をした。


「ナティ何を言うか。必要に決まっているだろ!むしろこれが一番重要だ」


「はあ、『経験値増加』持ちなんて、ほとんどスキルを持ってないんだから調べる必要ないでしょ」


 そんなナティの言葉を無視してアシルはエクスを水晶玉のところへ導いた。そして水晶玉に触れるように促した。エクスは促されるまま、水晶玉に手を乗せた。


 しばらくエクスが水晶玉に手を乗せていると、アシルの表情が変わった。


 しかし、表情が変わったのは一瞬だったためエクスはその変化を見逃していた。


「そういえば、エクス。今日泊まるところはあるか?」


「いえ、ありません」


「それなら、ここの空き部屋を使うと良い」


「それはありがとうございます」


 エクスは泊まるところがなかったため、その提案はありがいものだった。


 その後、エクスはナティの案内で空き部屋へと行った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る