第9話 ギルド 3
「はあ、ギルド長、また『経験値増加』を持った人を入れるんですか?」
「またとはなんだよ」
「もうすでに今年は2人も『経験値増加』持ちが入って、彼で3人目ですよ?!滅多に『経験値増加』持ちなんて現れないのに!」
「いやぁ、人が増えることは良いことじゃないか」
「よくありません!」
「そんなこと言うけど、ナティだって『経験値増加』持ちを入れることを賛成してたじゃん」
「確かにしてたけど、まさかアシルが『経験値増加』を持っている人しか入れないとは思ってなかったよ!そのせいで誰も入らなくなったんだよ!」
最初に話しかけてきた男、ナティとエクスを歓迎した男、アシルがそう言い争いを始めた。
エクスは自分のせいで言い争いが起きたと思い、それを怯えながら聞いていた。
「違うだろ。そのせいで誰も入らなくなった、じゃなくて、元々入らなかったのが『経験値増加』を持ちを入れたため尚更入らなくなった、だ」
「余計悪いじゃないか!」
「いや、『経験値増加』持ちが入っている分、人は増えてるよ」
「うっ、確かに」
アシルは自身満々に言ってナティを言いくるめているが、エクスにはアシルが悪いように感じた。確かに人を集めるにはあぶれている『経験値増加』持ちを入れることは理にかなっている。しかし、『経験値増加』持ちを集めてもあまり利点があるようには思えなかった。
「でも、なんで『経験値増加』持ちを積極的に入れているんですか?」
エクスは今までの会話を聞いた中で気になったことを聞くために口を挟んだ。
「おお!よく聞いてくれた!その理由は賢者様だ!」
「だからそれは賢者様だからであって他の人にも通じるわけじゃないからな!」
アシルはその質問を待っていたような口ぶりでそう言ったが、その理由に対してナティは納得がいっていないようだった。
「賢者様?」
エクスはここで初めて聞いた賢者様が何か分からずそう聞き返した。
「なっ!おまえ賢者様を知らないのか?!」
「は、はい、わかりません」
エクスはアシルの語調の勢いにやられて言葉に詰まってしまった。
「賢者様はこの王国最強の人物なんだ!そして『経験値増加』を持っていて唯一認められた人物なんだ!」
その言葉を聞いてエクスは『経験値増加』を持った人が王国最強なんて呼ばれていることに驚いた。
「それなのになんで『経験値増加』持ちは嫌われているんですか?」
それはエクスに限らず当然の疑問である。『経験値増加』を持った人物が最強なんて呼ばれているなら、同じく『経験値増加』を持った人物が蔑まれている状況はおかしいと言えた。
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