第4話 スキルと恩恵 1

 エシルに誇れる兄であるために僕は、あれから死に物狂いで身体を鍛えた。


 鍛え続けていたら、10歳になっていた。


 この年になって僕はまた魔法が使いたくなっていた。前はたった1月で諦めてしまっていたが、今度はできるまで努力を続けることにした。


 とはいえ、一人で努力しても進歩は遅いことはわかっていた。かと言って、エシルに聞くことはできない。そこで、またしてもパパに聞くことにした。


「パパ、僕も魔法を使えるようになりたい!」


「ああ、良いぞ」


「やったぁ!」


「だけど、今まで以上に厳しくするぞ?」


「うん!僕、頑張るよ!」


 僕はエシルに負けることに比べたら、これくらいのことは耐えることができた。


「一応言っておくが、おまえはもしかしたらどんなに努力しても魔法は使えないかもしれないぞ?」


「え?」


 僕はあまりにも予想外のことに理解が追いつかなかった。


「前に教会に行ったのは覚えているか?」


「うん」


「そこで『経験値増加』を持っているって言われただろ?」


「う、うん」


 僕は少し曖昧になっていたが一応覚えていた。


「その『経験値増加』っいう恩恵は取得経験値を増やすかわりにスキルが習得しにくくなるってものなんだけど、そのスキルが習得しにくくなるっていうのが原因だ」


「ん?どういうこと?」


 スキルと魔法に関係があるように思えなかった僕はそれを理解することができなかった。


「簡単に言えば、魔法を使うにはスキルとして習得しておく必要があるから『経験値増加』を持っているエクスは魔法自体が使えないかもしれないってこと」


「うーん?」


 僕はやはり少し理解できなかった。


「そうだな……あっ!これを見てくれ!」


 パパはそう言うと、手のひらの上に火の玉を作り出して僕に見せてきた。


「?」


 僕はその意図が理解できなかった。


「つまりこうやって魔法を使えるようになると同時にスキルとしても習得するんだ。だからスキルを習得しにくいエクスは、魔法が使えないかもしれないってことだ」


「な、なるほど?」


 いまいち理解はできなかったが、『経験値増加』の恩恵を持った僕は魔法が使えないかもしれないということだけは理解できた。

 

 その事実だけで僕は凹んだ。


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