出会い 3
昨日と同じ時間、同じ場所。
午後十時半、シエスタデルマミアーナ。
利用時間は一時間半。三十分追加されてもギリギリ電車がある頃だ。
もし間に合わなそうだったら事務所に連絡して迎えを呼ぶかタクシーを利用する。
昨日来たばかりだから不安なくマンションに行くことができた。
この時間にチャイムを押すのは緊張する。
今回は昨日来たから間違いないが、もし違う家を鳴らしてしまったらとドキドキする。
「こんばんは、リリィ―ズのカナエです! リピートありがとうございます!」
国木田さんの格好は昨日と違い眼鏡は無く、ボーイッシュな服装だった。
「国木田アユムです……すみません……昨日今日で……」
「むしろ大歓迎です!」
国木田さんの部屋に入ると昨日とは別の部屋のようにモノが置かれていた。
主に本棚だ。
本棚から本が溢れだして、ベッド周りにも本が積み重なっていた。
壁にはリアルに描かれたキャラクターの絵が入った額縁が飾られていた。
ここは本当に昨日来た場所なのだろうかと戸惑った。
「えっと……通販で頼んだモノと実家から頼んだモノが同時に来てしまい……」
それでも一日でやるには重労働だろう。
その作業をやった日に私は指名してもらったのは申しわけない気がした。
『部屋にモノが来たので手伝ってほしい』と呼ばれた方が役に立ったのではという気がするがそんなサービスは残念ながらやっていない。
昨日と同じようにまた一緒にシャワーを浴びた。
今日も恥ずかしそうではあったが、慣れてくれたらしい。
本が溢れた部屋だから身体はいつもより念入りに拭いた。
ベッド周りにある本は私には縁がなさそうな学問の本やライトノベル、私も知ってるタイトルの作者とジャンルの幅が広い。
思考を切り替えて目の前のことに集中を移す。
すると国木田さんが私より先にキスをしてきた。
「今日は、アタシが貴女を抱きたい」
その言葉に私はドキりとした。
いつも抱く側だったから自分が抱かれるという経験は全く無い。
『この人、今日が初めてだな』と思ってきていたがそれはあくまで抱く側の言葉で自分がいざその立場になると怖さと恥ずかしさと性的快感により好奇心が混ざり合う。
「わ、わかりました……」
声が震えているのが伝わっていないだろうか。
それは国木田さんに不安を与えてしまうことになる。
お金をいただく立場でそれはあってはならないことだ。
指をゆっくりと絡めて来る。
とても繊細なその行為に自分の指も勝手に動く。
時間をかけたキスは長く私のお互いを探るかのようなものだった。
彼女の口が離れると今度は頬に、額に、瞼にキスをした。
私はそれを受け入れる。
全てを受け入れる。
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