出会い 2
私がこの仕事をやるようになったのはただ単に女の子が好きという動機だ。
さらに、不純なことを言えば、お金が貰えて女の子とエッチできるなんて最高過ぎると思ったからだ。
最初は女同士とはいえ、知らない人とすることに緊張して怖かったけど、利用してくれる女の子たちはみんな優しかったし、終った後にはお礼を言ってくれる子もいた。
私はこの仕事が好きになった。
でも、また会ってくれる子はいなかった。
値段は高いし、一回で満足する子のが多いみたい。
まあ、私に「また会いたい」って思わせることができないだけか。
利用する人は全員が全員同性愛者というわけではなかった。
興味本位の人もいたけど夢中になってくれた。
国木田アユムさんか……。
何度か好きになりそうになった女の子はいたし、女の子が私のことを好きになることだってあった。
別れ際、かなり引っ付かれて大変だったっけ。
でも、また利用してくれることはなかったな。
だから、こういったことにはなれている。
なれているはずなのだ。
それなのに、なぜ国木田さんのことが気になるのだろう。
仕事して昨日今日のことだ。まだ、余韻が残っているからかもしれない。
私は自分にそう言い聞かせた。
――わかった。また、指名する
それに、どうせ口だけだ。
一日経てば恋の魔法はとける。
そう考えていると電話が鳴り出した。
友達も家族もいない私にかかってくるのは決まっている。
『金田さん? 今日仕事入れます?』
男の声が電話から聴こえてくる。
こういう仕事は女の子の安全のため男性が管理や送り迎えを担当しているそうだ。
「はい。大丈夫ですよ。時間と場所は?」
『昨日と同じ。ちなみにお客さんも同じ人』
「同じ人……。国木田さんですか? まさか昨日今日で?」
『初めてのリピーターじゃん。よかったね』
「はあ」
『じゃあ、場所は覚えているね? わかんなくなったら電話してね。それじゃ』
仕事の電話はいつも簡潔だ。
だけど、このドライさが私には楽だった。
無理して会話をする必要もない。
仲良くする必要もない。
携帯で時間を確認するとまだまだ仕事まで時間がある。
「時間まで寝るとしますかね……」
誰もいない部屋でひとり呟いた。
私が女の子を好きであることに理由はない。
好きだから好きで先天性とか後天性とか考えたこともない。
でも悩んだことはあった。
成長するにつれ周りの子たちが男の子に興味を持つようになっていく。
みんな好きなアイドルを必ず持っていて私も合わせて、好きなふりをした。
正直、男のアイドルに興味は持てなかった。
同じ悩みを持っている登場人物が出てくる小説や漫画を読んだ。
昔は私にも友達がいたけど、この悩みを共有できる友達はいなかった。
だから、私にとって同じ悩みを抱える小説や漫画が友達だった。
大人になり、人との関わりを自然と持たなくなると案外悩まなくなった。
否定する人や、からかう人がいないからだろう。
一人だから部屋も最低限の家に住めば良い。
だから今はこの仕事以外やっていない。
時計を見ると仕事の時間二時間前だった。
「あー……ちょっと寝すぎた……」
シャワーを浴び、髪を乾かし、服を着替え化粧をし、電車に乗るのを考えるとあまり余裕がない。
駅に行くのに十分。電車で二十五分。
私は急いでシャワーを浴びた。
またシャワーを浴びることになるが清潔感は常に持っていたい。
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